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日々読み #5

11/27 晴れ

最近撮った写真を見返していた。スマホも一眼レフもフィルムカメラも妻の写真ばかりだった。
僕はこの先も妻の写真を撮り続けていきたい。それはバエだったり、モエだったり、バズでもない感覚で。
知り合いの大半は子供が生まれたら子供写真ばっかりで妻や2人での写真はめっきり撮らなくなると言っていた。本人たちもそれでいいと思っているのかもしれない。どんどんと大きくなっていく子供の姿を撮るのは楽しいし、大切だけれど、ずっとお世話になる妻の姿も同じくらいに大切で、かけがえのないものだろう。人は常に近くにあるもの、あって当然のものほど軽視するようなところがある。居て当たり前、この先も妻が居続けてくれるとどこかで信じきっているのだろうけど、そんな保証はどこにもない。そのことを忘れないために僕はこの先も撮り続けよう。喧嘩をした時も、楽しい時も、悲しい時も。


11/28 くもり

誕生日どう祝おうか、妻が好きなものはあれとこれで。苦手なものはあれだからよしておこう。こうして、ああしてと準備する。今その最中だ。この時間もまた祝う側の幸せだったりなのだ。妻は今年の誕生日は忙しいから軽くでいいよと言っていた。それでも好きなもの、好きそうなものを前に、ささやかながらも喜んでほしい。今年の誕生日は手巻き寿司、そしてケーキは洋梨のショートケーキにしよう。洋梨は秋の暮れとクリスマスとの間のほんの数週間しかない、その季節に実るという。
この時期に実る果実とともにこの季節を、誕生を、この年まで無事に生きてきたこと、出会えたことを祝おう。祝いたいことを考え出したらキリがないからもういっそ、いっしょくたでもいい。早く誕生日にならないかな。


11/29 くもりのち雨

今日は朝もったりした空気だった。ここ数日の朝はきりりと冷えた空気だったがいっぺんしている。
天気予報はあまり見ないからよくわからないけど、温帯低気圧的なやつがきてるのかもしれないな。
昼までは雨は降らずに持ち堪えていたが、夕方から強い雨がコンクリートを、車の屋根を叩く。
その様子を車内から見ている。
手元にある一眼レフで車内を撮ってみたら普段とは違う見え方に驚く。カメラを通して見つめる世界は今まで当たり前のように感じていた世界を、違う世界に変えてくれる。


11/30 晴れ

妻の家族とごはんをたべた。妻がひさしぶりに会うお父さんや弟と話している姿を見て、とても幸せな気持ちになった。小さな頃から少しずつ積み重ねた時間だけが生む切っても切れないような繋がりみたいなものを感じた。大人になってなかなか実家に帰れなかったり、感染症などの影響で少し期間が空いたとしても家族はすぐに家族に戻ることができるのだろう。その空間に僕も一緒にいれてよかった。そのことに気づけたのもよかった。


12/1 くもり

この街に住みはじめてから得た尊いものの一つにご近所さんたちとの交流がある。今日はご近所さんとのご飯会。一家族一品を持ち寄り、大きなテーブルを囲んでみんなでいただく。分断されつつあったつながり。オンラインではなく、オフラインのつながりを取り戻していくような豊かな時間。
ご近所さん繋がりで生まれる新たなつながり。地域に根を下ろして実感する充実感みたいなもの。都内ではなかなかできないつながり方ができている今の方が豊かさを感じる。


12/2 晴れ

これまで人が人をお祝いするということをあまり意識して考えたことがなかったけれど、この「祝う」という行為は人間にしか見られない、特異的な行動だ。その人の誕生した事実を家族や友人などのヒトが共有して集い、祝う。
人間ならではの営みなのだ。
人間だけが持ち合わせた他者へのまなざし。
人にとって祝うことは本当に幸せで豊かな時間の一つなんだなあ。
これからも人間らしい「祝い」の場や時間は大切にしていきたい。


12/3 晴れ

昨日はそこまで忙しくなかったのもあって、仕事を早退させてもらい、妻の誕生日を祝うための買い出しをした。妻には早退したことは秘密にしたまま、妻の大好物の手巻き寿司の具材を、妻の喜びそうなケーキを、
妻のイメージに合うような花束を選んだ。
祝うための準備の時間は妻と私が大切にしてきた時間を振り返り、実感する時間でもあった。
普段の買い出しとは違った充実感があった。
お金をかけたからといっても喜んでもらえるとは限らない。普段から妻を見ているか、知ろうとしているか、それがちゃんと出てしまうからこわい一面もある。
ちゃんと喜んでもらえただろうか。
明日は妻へのアクセサリーを選びに出かける。


12/4 晴れ

今日は妻へのプレゼントとしてピアスをあげた。一緒に選びに行って、あれこれ見比べながら選んだ。あれだけたくさんあって、あれだけ多くのお店もあって、あらゆる価格帯のお店を見たけれど、候補となったのは数個だけだった。候補にあがらなかった他のピアスはなんだか明確に「違う」。
なんか違うが明確にわかる、あの感じが今日はなんだかおもしろかった。最終的に選ばれたピアスは気取ることもしないし、過度に煌びやかでもない、それでもたしかな品と洗練さがよく表れていて、妻によく似合った。
そのピアスをつけた妻は普段より少しだけ大人の女性に見えた。

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