見出し画像

日々読み #32

6/5晴れ

妻が妊娠した。数日前から体調がすぐれないとこぼしていたけれど、まさか妊娠だとは思わなかった。
妻から知らせを受けた時、驚きの方が大きかった。少し遅れて、自分の子を授かれたという嬉しさが追いかけてきた。
早く誰かに言わなきゃ自分だけでは持ちきれなくなってしまいそうなほど嬉しかった。でも同時に両手を挙げて喜ぶのはまだ早いというのもよぎった。

芽生えた命はまだあまりにも小さくてか弱く、安定して妊娠継続できるかは定かではない。妻も慎重に報告したいとのことで誰にも報告しないことにした。例外的に上司には仕事の調整が必要になる可能性があるため妊娠のことは伝えておいた。
今日は半休をもらって、妻と病院に行ってきた。
エコーで胎児の様子を見るとまだ胎嚢に、ぽつりとまんまるな何かが写るのみで心拍は確認できなかった。
まだ妊娠初期ということもあり、未分化なのだろうとのこと。
白黒のエコーの写真では詳細なことは何一つわからなかったけれど、そこに命の源が宿っていて、細胞分裂を始めて着々と成長していることはわかった。また来週受診する予約をとって帰ろうとすると妻は気分が悪くなってしまった。ひどい立ちくらみで動けなくなった。妻の中で確かに変化が起きているようだった。
そのことを強く感じて、自分も少しずつ変化していかなきゃならないなと思った。


6/6 晴れ

僕は他者性を含んでいない行動をする人が苦手だ。
ケアしている時に自分目線の話ばかりする人にはうんざりしてしまう。

だけど本日のダーリン中で、糸井さんはこう言う。
「大谷翔平がひとりだけいても、二刀流はおろか野球というゲームそのものが成り立ちません。あの豪速球も捕手のミットに向かって投げてるわけだし、三振してくれる相手打者がいなけりゃ奪三振もない。ホームラン打つにも、相手投手が投げてくれなきゃ、バット持って強く振ってもどうにもなりません。二刀流の大活躍はすごいけど、チームの他のメンバーや、相手チームや、ベンチや球団や、観客、ファン、野次馬、そういう人たちがつながっていてこその大谷翔平です。藤井聡太七冠にしても、その輝く冠は、とても将棋の強い前王者から「奪取」したものです。高度な対戦相手がいなかったら対戦はできなかったのです。」という。
「ひとりでいられる覚悟は、ほんとうに大切なものですが、その「ひとり」が無限につながっているという想像力と、だれもが、じぶん以外の「ひとり」なのだという事実を、忘れちゃぁなんねぇぞということです。」

確かに。自分のケアを受け取ってくれる人がいてくれるから、自分が看護師としてケアができる。
相手がケアを受け取ってくれなければ僕は看護師として力を発揮することはできない。相手がいて初めて自分が発揮できる。すごくすごく基本的なことなのにいつのまにか忘れていた。
結局のところ、人はお互い様なのかもしれない。どこまでいっても。仕方なくでも僕を受け入れてくれる人に感謝なのかもしれない。


6/7 晴れ

毎週決まった曜日にうつ病を持つ人のお宅に訪問している。その人は自分の人生と他人の人生を比べてしまうようで、いつも苦しそうだった。

そしてその人は僕が来るたびに毎回同じ質問をしていた。

「人はどうして生きるんだとおもう?」
そんな問いになかなか答えが出せずに困っていた。

あるとき、養老孟司はこう答えていた。
「それは人間が暇な生物だから。」
「平和で生きることが楽になったから、そんなことを考える必要がある。それこそ必死で生きてたらそんなこと考える暇も余裕もない」と。
そして長年虫を研究し続けている養老孟司はこう続けた。
「虫を追っかけてたらね、そんなこと考えないですよ。」いかにも養老孟司っぽいセリフだけれど、本当にその通りだなあと妙に納得できた。自分が熱中できることがある人はそんなことは考えない。
熱中できることに忙しいから。承認欲求とかはどこかに置いておいて、自分が熱中できること。
それは自分の小さな頃の熱中していたものにヒントがあるという。
自分が熱中できることは新しく見つけるんじゃなくて、自分を辿って見つけるものだったようだ。


6/8 晴れ

自社HP用の写真を撮ることを任された。ずっと写真で仕事をしてみたい気持ちがあったけれど、なかなかできずにいたから嬉しい。
自分がやってみたいことを形にしたり、自分を試してみる機会が来たのかもしれない。

「写真で誰かに何かを伝える」という課題付きの状況で写真を撮ることは初めてだからすごく楽しみだ。肩の力が入りすぎてしまいそうだけれど、少し力を抜いてゆったりと構えておきたい。
目の前のことに集中してそれを写す。そのことを考えていたら自然といい写真が撮れるはずだ。
機をてらわず、丁寧に撮る。それだけでいいはずだ。


6/9雨

朝からひどい雨だ。気づけば至る所で紫陽花が咲いていて、梅雨に入ったのだと思う。
湿気も高まっていて、暑いのか寒いのかわからない。

写真家がここ最近撮り溜めた写真をインスタにあげていた。
どれも日常の写真だった。自分でも撮れそうな場面を撮っているのだけれど、自分は見たまま撮り逃していた。
誰でもいい瞬間だなと思える瞬間はきっとある。プロはそういう瞬間を「撮れる」からプロなんだろうと思った。
カメラの違いもあるのかもしれないけれど、これが明確な差なんだと思った。もっと撮ろう。
いっぱい見て、撮り続けよう。


6/10 雨時々曇り

妻の体に変化が起きているのを感じる。
妻はどんな料理よりも海鮮丼が好きなのだけれど、妊娠がわかってからめっきり食べたいと言わなくなった。
前のご飯から時間がたつと激しい空腹感を覚えるようで規則正しく体内時計が回っている。
少し前には韓国の辛いラーメンプルダックラーメンをひいひいさせながら2人で食べていたが、ここのところそれもなくなった。
最近は疲れやすさもあるようで、外出もあまりしなくなった。
妻のお腹はいつも通りで明らかな変化は感じられない。けれど妻の嗜好や行動の変化が生まれてきていて、確実にそこに新たな命があることを感じる。
妻はどんどんと変わっていく自分の変化に驚きながらも対応していっている。妻が母親になるまでの軌跡はちゃんと見ておこう。そのモチベーションは初めての子ということもあるけれど自分が妻の変化についていけるようにしていきたいという気持ちの方が強い。
初めての妊娠に戸惑いながらも頑張っている妻の力になりたい。


6/11 雨時々曇り

今日はアニメ版のシャドーハウスを見た。影と生き人形という設定のアニメだ。少し前に1話を見て、何やら可愛いだけじゃなさそうだ。となったけれど、その時は面白さがわからなかった。一話はとりあえず見たけれど、興味は続かなかった。それから間が空いたけれど、今日は時間があったから妻と一緒に見た。
端的にものすごく面白い。世界観もかなりクセのあるもので、一見不気味さが強く出てしまいそうなのに素直で魅力的なキャラたちが作品に芳醇さと甘みみたいなものを与えていて、苦味と甘みのバランスの取れたティラミスみたいな作品のようだった。
1期はほぼ一気見してしまった。
個人的にはジョンとショーンの組み合わせが好きだ。
どうやら2期もあるようだ。しばらくは見るアニメに困らなさそうだ。

この記事が参加している募集

#最近の学び

182,321件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?