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日々読み #26

4/24 くもり

少し前にカメラを買った。
自分にしてはすごく高い買い物だった。前に使っていたカメラは古いフィルムカメラだったから、最近のミラーレス一眼カメラに変わって、僕の撮影も一気に変わった。前なら暗くて映らないようなところもよく写るし、前のカメラなら写せないような細かいところもしっかり写る。でもまだカメラが体に馴染んではいないような感覚があって、それがもどかしくなる。
焦る気持ちもあるけれど、まずは撮っていこう。
いっぱい撮って、少しずつ自分の体の一部として慣らしていこう。


4/25くもり

昨日は久しぶりにお酒を飲んだ。妻と、仲のいいご近所さん、これからも仲良くしてほしい少し大人なお友達。短い時間ではあったけれど、とてもおいしくて、楽しかった。
それにしてもナチュールワインは楽しい。色も香りも僕が知っているワインのそれとは違っていて、なんだか立体的だなと思った。
グラスの中に注がれる綺麗な液体は「野生」を纏っていて、刻々と移りゆく時間の中で香りも味も変わっていくような感覚すらあった。
グラスに注がれたすぐそばから、変化していくナチュールワインの魅力に引き込まれそうだ。


4/26 雨
今日は朝から雨で湿気がひどい。気温が低いのだけれど、湿気が多いからか逃げ場のない熱が体にこもって、少し火照る。自分の肌に水分がまとわりつくことで自分の摩擦係数が高まっているのを感じる。
吸う空気にも水分が多分に含まれていて、すっきりとしない。ことあるごとにため息が漏れる。

それでも目線をあげてみると、遠くに見える山々に霧がかかって普段見慣れた景色も幻想的に見える。そこに車窓の曇りや結露も加わってさらに美しい。思えば久しぶりの雨だからか、木々は瑞々しい色気を帯びていて、綺麗だ。
雨の日を嫌がるのもいいけれど、その日にしかない魅力もある。いつでもそこに目を向けられる自分でいたい。

ーーー

馴染みの人なはずなのに、いつもは息が合っているのに、なんだか今日は合わないなあという日がある。そうなる理由として相手の精神状況もあるのだろうけど、
相手と同じかそれ以上に僕ら看護師の精神状況も大きく関わっていることを忘れちゃいけないなと思う。
相手は僕らの一番近くで僕らのケアを見ている。だから僕らが何気なくとっている行動とか言動から滲み出るいつもと違う情報が相手に伝染してタイミングがズレたり、いつもの手順を飛ばしたり、忘れたりするのだ。ケアはいつでも双方向だからそこは忘れちゃダメなところなんだと思う。急いでいたりすると、つい心がざわついたままケアに入ってしまう時がある。そうすると普段通りだと自分は思っていても、違う時がある。ケアに入る前、一度流れを切るために深呼吸をしてもいいのかもしれない。それは玄関のインターホンを押す前に確認

相手が変わったんじゃなくて、自分の気持ちとか思いが前に出過ぎて、うまくいかないということもあるよなあと思った。


4/27 晴れ

雲一つない青空だったのに、へこむことがあって憂鬱だ。少しのことなのに、なんだか胸がずんと重くなる。こんな日に限って遅延はしているし、ついていない。
この嫌な時間を早く抜け出したいけれど、ヒトはそんな簡単には切り替えられない。すぐには切り替えられないけれど、これからの1日、1日をなんとか転がしてこの気持ちを乗り越えなければならない。これまでもそうしてきたし、これからもずっとそうなのだ。ああ、苦しい。早く帰ってご飯を食べて、お風呂に入ろう。


4/28 晴れ

昨日はへこむこともあったけれど、今日も仕事をしてきた。今日の出勤前は行きたくなさが最高潮だったけれど、実際に行ってみたら目の前のことに集中していて、昨日までのどんよりとした気分はどこかに消えていた。

そして訪問したお宅のご家族に会った。今日はたまたま休みだったそうだ。普段は本人だけと接しているから初めて会った。
それでもご家族は僕のことをよく知ってくれていて、驚いた。
僕が帰った後、その方はその日どんな話をしたのかをご家族に一つひとつ楽しそうに報告してくれているからだそうだ。
「今日は彼がきてくれるのかな」と訪問の前の日には言ってくれているようだ。僕を楽しみに待ってくれている人がいることがすごく嬉しかった。
僕がこの仕事を続けていく理由がまたひとつできた。
人はこうして何か一つのことを続けていくことができるのかもしれないなあと思った。


4/29曇り

久しぶりに仕事がない日。
髪が伸びたから、久しぶりにばっさり髪を切った。
眉上の前髪、襟足はすっきりで、すっかり短髪だ。
視界良好で頭が軽くなった。
20代前半の頃と比べて、短髪が似合うようになった気がする。少しは顔に深みでも出てきたのかな。


4/30 雨

今日は東京都写真美術館に行ってきた。
少し遠かったけれど、久々の都内は楽しかった。
街はGWの人たちも多くいるようで恵比寿ガーデンプレイスは賑わっていた。深瀬昌久の展示を見てきた。

妻が展示を見て一言
「写真こどもおじさん」と言っていた。
的確すぎて笑った。
一生をかけて、写真を撮ることで遊んでいたんだと思う。それが最後のブクブクにも現れていたし、最初の家族写真にも色濃く写っていた。その純粋さは周囲には理解し難いものだったのかもしれないけれど、その純粋さが羨ましくもあった。
深瀬昌久の後にも二つ展示を見た。
その中の一つに土門拳の展示が大々的に行われていた。
客層が全く違うことに驚いた。さすが巨匠だ。
仏像や神社仏閣の写真が展示されていた。ドアップのものが多かったけれど、そのどれもが魅力の肝を抑えている感じがしてすごい。対象の魅力を見抜いて、切り取る。その力がすごいなあと素直に思った。
セレンディピティという若手?の企画展もあった。とっつきやすくてとてもいい展示だった気がする。中でもホンマタカシはさすがと思わされた。構図もいいし、撮るカメラの性質を捉えた上で撮っている気がして圧倒された。こんな写真が撮りたいと思わされた。
今日初めて知った写真家さんに島尾伸三、佐内正史がいた。自分が撮りたい写真のヒントみたいなものが散りばめられている気がした。

美術館に行けて良かった。
このまま少しずつでも今撮っているものを続けていきたい。振り返ったら、少しはいい写真が残ってて欲しい。また明日からも丁寧に生きよう、そしていっぱい撮ろう。

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