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「面白そう」と「面白い」の違いから、ネット時代に流行るコンテンツの作り方

今回の記事は、ラフな結論までならば無料で見ることができます。詳細なまとめと実用例、応用例に関しては有料となっています。今回の記事を有料にした理由は、明らかにプロ向けの記事となっているためです。コンテンツのクリエイター、自分で作品の方向を決定できる方、コンテンツ作成に関わる方、将来そうなりたい方以外には購入をオススメしません

この結論に至るためには、ディレクターとプロデューサーを両方をこなす必要があり、私はこの結論を経るために数年の経験が掛かっています。なぜ「そんなに面白くない作品」が流行っているのか、なぜこの製品は面白いのに流行らないのかといった疑問、どうすれば自分の作品を流行らせることができるのかをテクニックではなく回答することができます。

筆者紹介
プログラマーとしてwebアプリでゲーム業界に参入後、ディレクターとなりソーシャルゲームを5本作る。作ったアプリは複数入賞、2000万以上DL、売り上げ百億以上、作ったゲームによる会社の上場などを達成する。現在では、ScopeNext社を起業し、今年の3月にSteam向けに「Dimension Reign」をアーリーアクセス(公開しながらフィードバックを受けて開発していく形式)でリリース。理論で作っていくタイプ。

なぜSteamを選んだのか、電ファミインタビュー(ガチャの快感でTwitterトレンド入り)

noteには新卒向けの参考資料として書いていたら、意外に好評で書き続けている。

購入してみて納得の行かない場合は24時間以内でしたら無条件で返金可能です。

発売2日で100部売れたため、有料部分に「スマブラ」と「進撃の巨人」の説明を追加しました。
発売4日で170部売れたので、購入御礼として有料部分に『[分析]小島監督の「面白そう」による物凄いストーリーテリング』(4500文字)を追加しました。
発売6日で260部売れたので、無料部分に「例の広告パズルゲームアプリが教えてくれたこと」(1000文字)を追加しました。
発売8日で400部売れました。後日、追加記事を追加して、値段を上げる予定です。
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発売3週間で500部売れました!ありがとうございます。

「面白そう」と「面白い」の違い

Steamでゲームをリリースしてから、ソシャゲとの違いをたくさん感じている。一応ゲームと名のついているものなので、似たような構造をしているかと思いきや思った以上に違いがあったので驚いている。

それが、「面白そう」と「面白い」の違いである。

どういうことかというと、Steamやコンシューマゲームは買い切りなので、購入前に面白いことがわかることが要求される。それが「面白そう=期待・認知」である。面白そうであった場合、それは購入に進み、プレイをして、「面白い=体感」に変わるのだ。なので、そもそも「面白そう」でないと購入されないことになる。

ゲームでの例を出そう。Factorioという工場を作って自動化するゲームがある。このゲームは、主人公が1人でバイターという凶悪な生物がひしめく惑星に不時着してしまって、鉄鉱石や石炭から鉄板を作り、コンベアを作り、工場を作って最後には宇宙船を作って通信をして惑星からの脱出を目指すゲームだ。

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もう一方のゲームは、shapez.ioだ。こちらはやっていることはFactorioとそんなに変わらないが、Factorioからバイター(襲ってくる現地生物)や地形、ロケット打ち上げといった目的が取り除かれ、過度に抽象化されたアブストラクトな世界観になっており、主人公や危機の設定がない。

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この2つを見てどちらが面白そうと思うだろうか?実際に機能を同じにしたとしても、Factorioの方が「面白そう」と感じるはずだ。それは世界観だったり、危機感だったり、リアリティだったり、私が何者で何をしているのかがはっきりしているためだろう。「面白そう」は購入前に機能する。

コンシューマゲームやSteamゲームと違い、ソーシャルゲームでは、「面白そう=期待・認知」ではなく、比較的「面白い=体感」重視だった。それは、フリーToプレイで、無料でプレイできるため、面白そうを過剰に突き詰めなくてもとりあえずプレイしてもらえたからである。ソーシャルゲームでは、プレイのあと「面白い」を感じ、そこから課金をしてもらうという仕組みだった。なので、「面白そう」でも「面白い」を感じないものは全く売れなかった

[追加]例の広告パズルゲームアプリが教えてくれたこと

他の例を出そう。アプリでみる動画広告の中には、動画で出てくるゲームと、実際のゲームがぜんぜん違うものがある。

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これは、「面白そう」なゲームと、「面白い」&課金されるゲームモデルが違うことに起因する。よくあるのがパズルに見せかけて、実際は高額課金のギルドゲーだったり、タワーディフェンス動画のようなものを見せつつ、高額課金のギルドゲーだったりする。高額課金ギルドゲーばかりなのは気のせいではなく、このタイプのゲームではユーザーが来さえすれば一定確率で課金されられることを運営が理解しており、このように多少騙してでもユーザーを獲得する方向に進みやすいのだ。

これらは、広告モラルとしてどうなのかという問題はありつつ、効果が一定以上あったので採用されているのだろう。なぜこのようなことが起きるかというと、まさに「面白そう」と「面白い」がずれているためだ。

画像のパズルゲームは、「広告と実際のゲームが違うこと」で有名になりすぎて、広告で紹介されたゲームがそのまま遊べるアプリが実際に作られた。作られたアプリは、開発経緯として話題にはなったものの、爆発的なヒットはしなかった。広告で流れてくる5秒の間に脳内で解くには十分に難しくて面白いパズルなのだろうが、実際にプレイしてみると手の順列組み合わせが数通りしかなく、簡単すぎて面白くないのだ。

「面白そう」と「面白い」の両立は、実はとてもむずかしい。片方だけならある程度のコストで達成可能だが、両方を達成するものを作り出すのは難しい。なぜならば、「面白そう」は「短時間での理解」が有用だが、「面白さ」の維持には学習する余地が必要であり、一つのゲーム要素(ゲームメカニクス、世界観、キャラクター、etc)でこれらを満たそうとすると、この2つはトレードオフをするためである。

「面白い」と「面白かった」の違い

もちろんSteamでは理想的には、すごい面白い→熱狂的レビュー→バイラル→大ヒットみたいなルートもあるにはある。ただ、この「すごい面白い」は、発明クラスのものだったりするので、難易度が高い。普通のルートは「面白そう」→「面白い」→「面白かった」→レビューと展開し、レビューを見たユーザーが面白そうと思って購入してくれるというループ構造となっている。
なので、Dimension Reignのリリース前はアーリーアクセスでは「面白い」を改善していけばよいと思っていたが、実はこの3つのうちのボトルネックを発見して、改善していくのが最適解だと理解をした。

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これは相互ボトルネック構造である。効率よく売れるようにするためには、一番低いボトルネックを改善するのが一番よい。

もちろん、新規制作でも同様のことを考える必要はある。特にインディーゲームは広告で認知度をあげる余裕がそこまで無いことが多い。また、Steamでは、お金を使って広告することを否定されているようなプラットフォームではある(お金をかけて広告するコマンドが存在しない。どのアプリでもリリースまでに5回宣伝ができる。が、あまり効果はなかった)。なので、レビューの面白かったで勝負をするのだが、「面白い」と「面白かった」も実は違うものである。

「面白い=体感」で、「面白かった=記憶」なのだ。なので、フロー体験という面白いけど記憶されない体験は、認識されにくいのだ。

「面白かった」と「面白かったの共有」の違い

さらに続けると、「面白かった=記憶」と「面白かったの共有」も違う。Steamでのアプリ全体レビューと違って、Twitterなどで共有される「驚き」や「プレイ中の体感」だったりの共有は、面白かった記憶をそのまま記述するわけではない。記憶の中での特異点を記述するような形となる。なので、フロー体験から引き剥がされるくらいの変化だったり、ストーリーの特異点だったり、強すぎるボスだったり、人に語りたくなったり、自慢したくなるような、はみ出した部分が必要となってくる。

つい最近、Outer Wildsが「面白かったの共有」でバズったのも記憶に新しい。

Outer Wildsは2019年の5月にリリースされているにもかかわらず、日本語圏で大きく認知されたのは上記の記事が2020年の5月末にリリースされたタイミングだ。

ネット時代に流行るものを、どう考えて作るべきか?

ソシャゲやSteamや、コンシューマでの買い切りも含め、ネットがこれだけ普及をしている上で、流行るものを作るというのはどういうことなのだろうか?

このあたりの話は、極めて広い分野にまたがっているので、もう少し解像度をあげ、わかりやすく整理をしてみた。(今回は買い切り用の整理ではあるが、購入タイミングがずれるだけではある)

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