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暗闇の中を ひとり歩け

華やかな都会の雑踏の中を
クリスマスの装飾に飾られた賑やかな街のなかを
素敵なプレゼントをかかえた多くの人々が行きかう中を
甘い言葉を交わす若いカップルたちがすれ違う交差点の中を

大事な人の病の回復を節に祈りながら一人歩く君
愛するわが子の将来を信じて 学費を工面するために
借財の覚悟を決めて一人歩く君
たちいかなくなった会社をたたむために
自宅の売却の相談のため弁護士事務所をあとに一人帰る君

まわりの華やいだ 楽しそうな人たちを見て
羨んだり 自分を憐れんだりしてはいけない
そんなもので 自分の人生を
人間の器を 人の幸福を 測ってはならない

世間に 職場に 何処にでも
可愛がられる人気者がいる
仲間にうちとけて
味方にまもられて
助けられ 取り立てられ 見守られ
おおめに見てもらい
お目こぼしをうけ
いつも明るく快活に
世の中わたっている人がいる
正直に言うと うらやましい
世の中 ひとりで渡ってきた身には とてもこたえる

どうしたらあんな風に振る舞えるのか
わたしだって上司からのランチのご馳走
一度ぐらい 頂いてみたい
楽しそうに雑談している彼を横目で見ていた

思えば彼は いつだって
多数派の側
権力の側
上司の側
敏感に察知して
そこにいることの権力を振り回している
寂しい人への思い
陽の当たらない人への思いやり
そんなものは 初めから頭の中にはないだろう

わたしは
ひとりで戦ってきた
ひとりで考えてきた
模索してきた 解決してきた 決断してきた
だれにも 手を差し伸べられることもなく
そっと寄り添ってもらえる人もなく
暗闇の中を 一人で歩いてきた

しかしその行動が 間違っていなかったのなら
何を惨めな思いをする必要などあろうか
わたしが ひとりで歩いてきた道が
ひとりで決断し 行動したおこないが
高尚な ひとのため 他人のためにという思いに
基づくものだっのたなら
ほかに何をうらやましがることがあろうか
ひとりで歩いてきたことを
むしろ 誇りに思え

人を助けた 立場の弱い人のために働いた
大事な人のために身を粉にして犠牲になった
という誇り高い記憶があるのなら
人に守られた記憶など
とるに足らないではないか
ひとの好意など期待せず
真理があると思う方向に向かって まっすぐ道を進め
真っ暗闇の中を たった一人で歩いてこそ
見える真理というものがあるのだから

人に恵まれていないと思うとき それは
天にみまもられている証なのだから

少なくともこの私は
この浮かれた雑踏の中で
うつむいて一人歩く君に
限りない友情と親しみをこめて
この詩をおくる

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