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なんでもない私に、夢をくれた相棒へ。

「お、渋いカメラ使ってるねえ〜!」

カメラが好きな方からは、たまにそんなことを言われる私の相棒NikonF3。ずっしりと頑丈で、ゴツゴツした機体のフィルムカメラだ。

ひょんなことから手元に来たNikonF3...私の相棒との思い出話です。

突然の出会い。

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君は、ある日突然現れた。

私が師匠と(勝手に)慕っているカメラマンの手から、私の手へ。

いつか撮ってみたいな〜フィルムカメラ、と願いながら手が出せずにいた大学卒業したての私の元に「貸してあげるから、やってみたら?」と師匠が言ってくれて、ある日突然君が来てくれた。

師匠がカメラマンとして働き出した頃、一緒に何度も海を渡ったという思い出のつまった相棒機。

とっても大切なカメラだ。壊したら大変だ!と思って、預かるまでには勇気が必要だった。そんな私を見て、師匠は「頑丈なカメラだから大丈夫。壊れるまで撮ってみな」と背中を押してくれた。思いがけないスタートに、ドキドキしていた。

首からかけてみると、今まで持ったどのカメラよりもずっしりと重くて、一緒にいる安心感が湧いた。

嬉しくて、ワクワクしていた。

君とトライ&エラーの日々。

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それから、師匠と君との特訓が始まった。

今では30秒ほどで終わるフィルムを入れる作業も「そんなにビビらなくていいから」と笑われながら、怖く怖くてゆっくりやった。

君はデジタルカメラと違って、今撮った写真を確認できない。

感覚で撮っていた私は見事に大失敗した。

現像してみたら何も写っていなかったり、友人の結婚式の写真が真っ暗だったり、ピントがまるで合っていなかったり...。

時間を巻き戻したい...と何度自分を呪ったことか。


ある日突然シャッターが押せなくなって、半泣きで師匠に持って行った日もあった。

原因は電池切れで、師匠もさすがにあきれ顔で笑っていたよね。さすがの君も、ビックリしたと思います。どんな時も、辛抱強く付き合ってくれてありがとう。

こんな私だからこそ、初めて写真を現像した日のことは、今でもずっと覚えているよ。

日常の美しさを教えてくれる君のパワー。

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初めてカメラ屋さんでフィルムを現像に出した日。

仕上がるまでソワソワしながら時間をつぶして、待ちきれなくて約束時間の5分前からお店の前で待って、受け取ってすぐに写真を確認した。


写真を見た瞬間、鳥肌が立った。

自分で撮った写真なのに、嬉しくて感動していた。

他人から見たらなんてことない写真かもしれない。でも、私はビックリした。私が見ていた世界ってこんなに綺麗だったんだと。君のおかげで、日常の美しさを知った。

自分で撮った写真で感動するなんて今までは無かった。だからこそ、君のパワーはすごいぞ、とわかった。

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初めて一緒に北海道に帰った日は、保安検査場のトレーに乗った君を見守りながら、どうか壊れませんようにと本気で願った。

一緒に沖縄に行ったときは暑さで壊れてしまわないかドキドキして、夏の湿気、冬の雪、海の風、急な雨、鞄の中にいても、いつも君が気になっていた。

写真を撮って、撮って、撮って、大切思い出を沢山残してくれて、長い間私の側にいてくれた。本当に本当にありがとう。

それから自分用にフィルムカメラを探したけど、やっぱり最初の君と同じが良くて、同じF3を中古カメラ屋さんでやっと見つけた。それからNikon F3が切っても切り離せない私の相棒になって約6年。今も感動する瞬間を沢山残してくれている。

なんでもない私に、夢をくれた相棒へ。

小さい頃から私は人見知りで、注目を浴びるのが苦手なタイプだった。

でも、写真の魅力にはまってからは、自分が感動したものを写真に残して、その写真を通して誰かと繋がりたいと思うようになった。

それから「写真が好き」と堂々と言えるようになって、こうして友人の輪を越えて、会ったことのない誰かに届けたいと思えるようになった。

写真の楽しさを教えてくれたのは、日常の美しさに気づかせてくれたのは、憧れだった写真の世界に踏み入る勇気をくれたのは、全部、相棒になってくれた君のおかげです。

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(100夢の撮影中に友人が撮ってくれた1枚。楽しそう。)

この記事を書こうと思ってから、ふと、相棒である君の誕生日はいつなんだろう、と気になり調べてみました(カメラに押されたナンバーから、製造年月日がわかりました)。

なんと、生まれた月は私と同じ10月。年は私より10歳上の1980年生まれ。思わぬ共通点を知って、なんかキュンとしちゃいました。相棒よ、似ているところがあったんだね。

きっと、これまでも誰かの思い出を残してきたんだよね。40年の間、誰かと写真を残しているなんて凄いなあ。

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ちなみに、君と一緒に写真を撮っているとき。

「楓、めっちゃ笑ってるー!」とよく笑われます。

私はどうも君が好きすぎて、ニヤニヤが止まらなくなってしまうみたいです。それくらい大好きです。

よければ、これからも一緒にいろんなところに行って、同じ景色を見ようね。

君とじゃなきゃできないことが沢山あるので、どうか長生きしてね。

いつもありがとう。
これからもよろしくね、相棒。

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