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あかちゃん蛇口争奪戦ー御風呂場ノ陣

きゅっ。
ピタっ。

シャンプーを髪の根本から洗い流していた、シャワーのお湯が急に止まる。
私の手も止まる。
視線がゆっくりナナメ下に移動する。
そこにいるのは立っちして蛇口のレバーを勢いよく引き下ろした、マイ・フェア・レディ。
娘(1歳)。

彼女は自らの働きで得た戦果を手で確かめている。
それは蛇口からどーっと滝のように流れ落ちるお湯。
保育園の連絡帳に書いてあった。
「○○ちゃんは最近お水がお気に入り。水道の前まではいはいしていって保育者に「水だして」って泣いておねだりします」
先生。
それ、うちでもそうなんです。。

風呂場の蛇口レバーは上下に動かすタイプだ。
上ならシャワー。
下なら蛇口からお湯。
上ならお母さんがシャワーを使えて。
下なら娘が流れるお湯を検分できる。
こうしてしばらく前から風呂場は戦場になった。

私がレバーを上にする。シャー。頭の泡が流れていく。
娘が負けじとレバーを掴み体重をかけ下にさげる。どばー。蛇口から溢れるお湯。
私はすかさず上に戻す。シャー。
「いーっ!」
抗議の声は無視無視。
ぴたっ。
娘がレバーを下に。どばー。
娘の反撃だ。
負けずに上。
下。
上。
下。
上。
「あー!!○✕△…」
シャンプーが中々流せない。
誰だ。蛇口レバーを赤ちゃんでもお湯が出せる仕様にしたのは。
あ、でも「赤ちゃんでも簡単に出来ます」はそれくらい扱い易いってことだからある意味すごいことか…
仕事終わりでじーんと重い頭で考える。

半年前は、ぽやっとした顔で手をしゃぶりながら私が急いで自分を洗うのを待っていた彼女。
それがどうだ。
こんなにも世界への好奇心で満ちている。
こんなにも世界へ働きかける力をつけている。

成長って、まぶしい。

上。
下。
上。

この戦は彼女が飽きるまでつづく。

来月の水道料金が、怖い。