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赤毛のアン 炉辺荘の家/モンゴメリ

間が空いてしまいました!
赤毛のアンシリーズ第7巻の感想です。

第6巻で、アンとギルバートは大好きだった「夢の家」を泣く泣く離れ、炉辺荘に越してきました。(「イングルサイド」と読むみたいなんですが、どうしても漢字のまま「ろばたそう」と読んでしまう…)

いつの間にか二人には六人もの子どもが産まれていて、アンの視点、子どもの視点、など一章ごとに話者をかえながら物語は進んでいきます。

赤毛のアンシリーズっぽく、これといった事件は起こりません。ただ、日常の小さな事件は起こります。
今回は、中でも私に突き刺さったお話を紹介しようと思います。

アンの長男ジェムのお話です。ジェムは動物が大好きで、犬や猫や小鳥を可愛がりますが、不幸続きでどの子もあまり長生きせず、悲しみに暮れていました。新しい犬が欲しいと思っていた矢先、新聞に「子犬を引き取ってほしい」という広告が出て、ジェムは飛びつき真っ先に広告主の少年ロディの元を訪ねます。
事情を聞くと、ロディの父親が死んだので違う街の親戚の元へ引っ越さなくてはならず、その親戚が犬嫌いだから飼えないだろうから、ということでした。
ロディは犬を手放すことにひどく心を痛めているようでしたが、ジェムは「大事にやさしく育てるから」と約束をし、犬を引き取って家に連れ帰りました。

犬の名前はブルーノといって、なかなかジェムに懐こうとしません。ジェムは「そのうち新しい家にも慣れるだろう」と思い、一時もブルーノのそばから離れずに面倒を見たり、遊んだり、美味しいご飯をあげたり甲斐甲斐しく世話をするのですが、ブルーノは尻尾を振ったり、舌で舐めたりして応えてくれることはありません。
ある日、ブルーノが嵐の中家を脱走して6マイルも先の、元の飼い主・ロディの家にいったことがありました。ジェムと父親がその家に探しにいってみると、濡れた玄関の階段で泥だらけになってぶるぶる震えている小さなブルーノを見つけました。飼い主が去った家を見て、小さな犬の胸は、ついに張り裂けてしまったようでした。
その日からご飯を何も食べなくなり、獣医に見てもらってもどこも悪いところは見つかりません。
「私の経験では一匹だけ悲しみが原因で死んだ犬がありますが、これもそうではないかと思いますよ」と獣医はこっそりジェムの父親に伝えました。

そんなブルーノの姿を見て、ジェムは決心します。
元の飼い主ロディに連絡を取り、家に呼んだのです。

ロディがベランダの段々を上がってくると、今からその足音を聞きつけたブルーノは頭を持ち上げ、耳をピンと立てた。つぎの瞬間、痩せ衰えた小さな体はじゅうたんの上を顔色の悪い褐色の目の少年の方へと飛んでいった。
その夜、スーザン(アンの家の家政婦)は畏れすくんだような口調で言った。
「奥さん、あの犬は泣いていましたよ…泣いてたんですよ。現に涙が鼻をつたわって流れましたもの。信じられないといいなすっても無理はありませんよ。私だって自分のこの目で見なかったら信じはしなかったでしょうからね」

炉辺荘のアン「駒鳥と犬」章より

うう、泣ける…よかったね、ブルーノ。結局ブルーノはロディに引き取られて行きました。

最後に、ジェムはアンにこうたずねます。

「母さん」ジェムは声を詰まらせた。「ぼくがあれほどかわいがったのに、なぜブルーノは僕を好きになってくれなかったのかしら?ぼくは…ぼくは、犬に好かれない種類の子供だと思う?」
「いいえ、坊や。ブルーノはただあんまりたくさん愛情がありすぎたのよ…それをブルーノはそっくり与えてしまったのよ。そのような犬がいるものよ…一人の男だけしか好きにならない犬がね」

動物と人間の、種を超えた愛情とか絆って、不思議ですよね。
不思議で尊い。

ブルーノとロディが生涯一緒にいられますように。

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