社会をナメた男による出版社立ち上げ計画【出版社を作ろう1】
出版社を作ろうと、思い立った出版ど素人の僕。
過去にライターをしていたといっても求人広告のライターなので、全く畑違いである。たとえて言うなら、ウイイレが得意なプロゲーマーがプロサッカー選手を目指すようなものだ。
しかし、色々調べていると「いけるんじゃね?」という感覚を掴んだ。どうにも1人(あるいは2人などの少人数)出版をやっている先人たちはたくさんいるようだし。
だが、大半は業界構造や出費の大きさなどによって資金繰りに苦しんでいるようだ。しかし、素人ながら、そのデメリットも攻略出来そうな気がしている。
今から書くのは、本格的始動前の青写真であり、皮算用にすぎない。いつかこれを見返して「おれ、馬鹿だったなぁ」と思い返す日もくるだろう。だが僕は熱いと分かっていても火傷してみなければ納得できない男なのだ。それに、火傷すると分かっているなら、耐えられないほどの火傷でもないだろう。
■なぜ、作ろうと思ったのか?
実を言うと、今の会社は適応障害で休んでいて、続けるか、別の道にいくのか、進路に悩んでいた。
どっちつかずのまま数ヶ月を過ごしていたが、その間もずっとアンチワーク哲学者としてのnote執筆は毎日続けていたし、Amazonダイレクトパブリッシングという仕組みを使った電子書籍出版は3ヶ月に1度程度の頻度で継続していた。
ところが、である。売れない。読まれない。バズらない。金にならない。
僕はアンチワーク哲学は、この社会を労働から解放し、真に自由な社会を実現するポテンシャルを秘めた重要な哲学であると信じて、日々、文章を書いている。もっと多くの人に届けたいと思っている。
noteのフォロワーは400人を超え、パトロン募集のメンバーシップも数名の方に参加していただき、Amazon本の売上も多少増えてきたものの、せいぜいアンチワーク哲学者としての収入は多くて月に1万円程度である。これでは、生業にすることは不可能だ。僕には住宅ローンも、家族の生活もある。となると、他の仕事をしなければならない。しかし、他の仕事をしていると、アンチワーク哲学者としての活動に注力できない。多くの人に届ける活動に注力するには、すでに多くの人に届いている必要があるのだ。
この矛盾をどう解決するのか? 僕がたどり着いた答えがリアル書店に本を並べることであった。そうすれば、強制的に人目に付く。インターネットが無名の人々を輝かせるツールとしてキラキラした目線を向けられていた時代はとっくに過ぎ去り、1:999くらいの比率の玉石混交状態になっていることが明らかになった今、ゴミ山から金粉を探し出そうとする物好きは少ない。結局リアル。人々はこの結論に辿り着いているのではないだろうか。
ならば、本屋に僕の本を並べるために出版社に掛け合うのか? いや、しゃらくさい。どうせこんな訳のわからない男の本を出してくれる出版社などいない。ならば、自分で立ち上げた方がいい。
僕のような右も左もわからない素人は、プロの構造の中に飛び込んだとき、あれよあれよと流されて、好きなことができなくなる傾向にある。ならば、一国一城の主となって、素人丸出しのまま好き放題に戦う方が、きっと性に合っているのだ。
■どんな出版社を作るのか?
まず第一にこの出版社の目的は、僕が書く本を出版し、リアル書店に流通させることである。つまり、究極のDIY出版社である。
とはいえ、せっかく出版のノウハウを身につけるのであれば、自分の本だけではなく、他の人の本も出したい。では、誰の本を出すのか?
簡単である。僕のような人の本だ。
noteで活動していると、商業出版されている金太郎飴のような自己啓発書よりも、よっぽどユニークで面白いことを書いている人がゴロゴロ存在していると痛感する。
彼らは筆力も、情熱も、世間に対する一家言もある。しかし、わかりやすい看板や実績、出版ルートを持たないだけで世間に注目されていない。世界を変える言論は、持たざる者の中で燻っているのだ。
持つ者とは、既存の社会システムの中で成功した人物である。一方で、社会を変える言論とは、社会システムを破壊するものである。象牙の塔の中でマナーを叩き込まれた学者たちや、自分の功績に酔う成功者たちは、飼い主の手を噛むような真似はできない。できるのは何も持たない野良犬だけである。
野良犬たちはすでに、インターネットの中で遠吠えを上げている。僕と同じように出版したり、毎日狂ったようにブログやnoteを書いたり、YouTubeで1人語りを展開したり。さながら、僕が立ち上げる出版社は、拡声器といったところだろう。社会という名の消音装置にかき消される前の遠吠えを、不愉快なまでに響かせるのだ。
もちろん、多くの人を巻き込む前に、まずは僕がモルモットになる必要がある。僕が書いた本を、流通に載せて、本屋で売る。それがある程度成功するようになったら、インターネットというスラムで燻っている野良犬たちを集めてくるのだ。
■金の話
さて、ここからは社会をナメた男による皮算用である。
出版社をやるには、兎にも角にも金である。金が尽きれば夢も尽きる。金さえなんとかなれば、あとはなんとかなる。アンチワーク哲学者として金に振り回される社会を批判してきたために居心地の悪い思いはないではないが、今の社会で会社をやるには、金の問題は避けては通れない。
・法人立ち上げ費用(11万円)
どうやら個人で出版社的な活動をすることはできなくもないらしい。それも考えたが、書店に対する信用度や家族や知人に対する本気度アピールを考えれば、法人格を持ちたいところである。
起業になど微塵も興味を持たなかった人生である。まずはグーグル先生に問いかけてみる。
この記事曰く、資本金を除いて、株式会社設立の登録費用は約24万2000円。合同会社なら約11万1000円とのこと。
「合同会社ってなんやねん‥」という32歳の男が口をするにはためらいを感じられる疑問は、即座にグーグル先生に解消してもらった。
要するに所有と経営が一致していて、社員は存在せず「出資者」だけが存在するのが合同会社らしい。ワーカーズコープ的なものなのだろうか? 僕は詳しくないのでよくわからない。
だが、ひとり出版社でやるなら、合同会社で問題ないように思う。デメリットとして挙げられている社会的信用の低さというのは、銀行から金が借りにくいみたいな話だろう。ハナから銀行から金を借りる気などないので、合同会社でいこう。
手続きは難しいらしく、司法書士に丸投げする人もいるようだが、そんな余裕はない。法務局で素人丸出しで窓口に泣きついてやろう。まぁ無碍にはできまい。
・家賃、パソコン、複合機などなど(10万円)
僕は住宅ローンを借りてマイホームに住んでいる。
まず事務所に関しては、自宅でOKである。我が家は広いので在庫を置く場所も十分ある。事業所として使うと住宅ローン減税が受けられないみたいな話があるが、僕は住宅ローン減税の手続きの書類を提出するのがめんどくさくてやっていないので実質デメリットではない。
パソコンは私物を流用。FAXやビラ印刷用の複合機はどれくらいするのだろうか? まぁトータルで10万くらいを見ておけば問題ないだろう。
・INBSコード取得(2万円)
調べていると、どうやら本を流通させるには番号を取らなければならないらしい。
この登録に1冊分で8000円。10冊で2万円。100冊で3万7000円。とりあえず10冊分で問題なさそうだ。僕は別にバカスカ本を出して儲けたいわけではない。家族の食い扶持を稼ぎつつ好きな本を出せればいいので、10冊あれば1~2年は持つ。その先のことはまた考えればいい。
ところで、コードを取得するだけでこれだけの金を掠め取っていく男たちは、一体どんな顔をしていて、どんな生活をしているのかは気になるが、まぁいいとしよう。
さて、ここまでは初期投資である。あとは、本を作っていくためのランニングコストだ。
・原稿、デザイン、編集、校正費用(0円)
さて、この記事を参照させていただいているわけだが、この手の費用はバカにならないらしい。
結論から言えば僕はこれらを全てDIYするつもりでいる。先述の通り執筆は僕なので著者印税はゼロ。デザイン、編集、校正も自分でやるつもりだ。すべて経験はゼロである。せいぜいAmazonで出版した本を自分で作った程度だが、まぁいけるのではないだろうか?
本の信頼性を高める意味ではプロに任せた方がいいかもしれない。だが、信頼性よりも自分で作る手触りの方が欲しいのだ。それに、流石にこんな金を払う余裕はないのである。
・取次屋や運送屋への支払い(0円)
さて、ここが僕の最もナメた部分である。取次屋とは要するに問屋であり、そこを通せば受注や、書店への配送手配、代金の回収を代行してくれるとのことだ。その分、出版社の方々は取次屋に費用を払うわけだが、そうしなければ全国に流通させるのは難しい。というわけで、取次屋を頼らざるを得ないわけだ。そして、取次屋を通す最大のデメリットは利益が目減りすることと、入金が遅れることらしい。
僕のような素人は、次のような結論の魅力に争うことができない。「自分でやればいいんじゃないの?」だ。
どのみち零細出版社は、出版社自ら書店に営業に行かなければ注文を取れないらしい。ならば大阪と東京と名古屋あたりに100~200店舗ほど飛び込み営業して、注文書を置いて帰り、発売日になれば、またレンタカーか何かに積み込んで配達して回ればいいのではないか? で請求書を置いていけばいいのではないか? そうすれば梱包資材も必要ない。でっかい段ボールのまま持っていけばいい。そして、小口になる追加の発注分だけ、運送屋を頼ればいい。
僕は営業をしていた頃、1日に100件くらいの飛び込み営業はやったことがある。書店となると距離が離れているので、そう簡単には行かないが、1週間もあれば営業して回れるのではないだろうか?
となると必要なのは・・・
・営業交通費、宿泊費(10万円)
といったところか。交通費と宿泊費を考えれば、初めは関西圏だけでやってもいいかもしれない。関西だけで本は捌けるのだろうか・・・・
・本の印刷代(1000部で15万円)
さて、関西圏だけで捌くとなると、1000部程度だろうか? わからないが、適当に検索して出てきた印刷屋さんの料金を見てみる。
仮にB6サイズ150ページの本を1000冊刷るなら、13万4902円。なんやかんやとかかると見て15万円くらいだろう。
意外と安いな…と思ったのは僕だけだろうか。ちょっと豪華な家族旅行をするくらいの値段で1000冊の本を印刷できるのだ。
1000部というのは適当である。1800円の本を1000部なら、売上が180万円になる。だいたい本屋への卸値は65%程度らしい。
だが、僕の場合、卸値は50%くらいまで下げていいかもしれない。なぜなら、それくらいしないと弱小出版社と書店が取引をしてくれない可能性が高いからだ。書店は取次を通すことで請求業務の煩雑さを逃れているわけで、直取引が増えると、工数が増える。何処の馬の骨ともしれない弱小出版社の小さな利益のためにわざわざ工数をかけてくれる書店はいないと見越せば、とにかく卸値で誠意を見せるしかない。それに、書店に並ぶことが、売れるためには重要なのだ。書店がそれだけの付加価値を生んでいると考えていい(ただし、長期的な目線で見ると、卸値は上げていきたいので、実績ができれば卸値をあげるという前提で契約したい)。
では、50%で計算すると…
・1000部売った売上(90万円)
(※委託販売と買切販売の2種類があるらしく、委託販売の場合は返品されるリスクがあるが、一旦買切前提で考える…)
会社設立からもろもろ含めて粗利(たぶん使い方間違えているけど)は…
・1000部売った粗利(42万円)※法人立ち上げ関連費含む
もちろんこれは全部売れれば…の話であるが、夢がある。2000部、3000部と増やしていけば、もっとイケる。
では、法人立ち上げの費用を除いて、本当の意味での粗利は…
・1000部売った粗利(65万円)
いや、結構イケるやん?
もちろん、見落としているお金は結構あるだろうが、まぁそれくらいの粗利があればやっていけるんじゃないだろうか。
・資金集め
この持ち出しであれば、貯金で行ける。が、クラウドファンディングでもいけるものだろうか? ちょっとクラウドファンディングを舐めすぎているような気もするが、予約販売的な形ならワンチャンあるだろうか?
まぁそれはおいておいて、粗利がこれだけ出れば、あとはなんとか回せるような気がする。最悪、親戚に泣きつこう。
■どうやって売るか?
さて、皮算用を現実のものにするには、売らなければならない。ここでいう売るとは二段階の意味で考える必要がある。書店に売ることと、読者に売ること、である。
書店は、売れると思った本を仕入れる。つまり、書店員に売れると思ってもらわなければならない。そういう意味ではアンチワーク哲学はどうだろうか? アンチワークのトレンドはじわじわと来ているわけで、それを哲学的に解釈する試みは悪くないはずだ。書店で見かければ手にとってくれそうなインパクトは出せる気がする。ぶっちゃけ、個人でやっているのだ。書店員と一緒になってポップを作ったり、ビラを作ったり、売り子をやってもいい。本人がそこまでやるなら、書店側もなんとかしてくれるんじゃないだろうか。知らんけど。
■時間はあるか?
さて、ここまで僕1人の仕事である。果たしてここまでできるのか?という疑問が残る。
その点に関しては、とりあえずやってみなければわからない。とりあえずやってみようか。
■こんなんでいけるのか?
ここまで読んでくれた人ならわかると思うが、僕は手続き関係はかなり杜撰である。会社経営に向いている人間だとは到底思えない。それに、市場に媚びる気もない。だが、情熱とDIY精神だけは持ち合わせている。
なんとかなるものか。とりあえず一歩踏み出してみようか。
■社名どうしよう
社名、考え中である。会社立てるにも、まずそこからである。無名の人々が一家言をぶちまけるアウトロー感を出しつつ、出版社感も出したい。要検討。
1回でもサポートしてくれれば「ホモ・ネーモはワシが育てた」って言っていいよ!