シーソーシークワサー【20 空上の猶予】
↑前回までのあらすじ
【シーソーシークワサー 20 空上の猶予 】
東京行きの飛行機で、久しぶりにGを感じることになる。
沖縄から出たことがない凡人は、こうして飛行機に乗るのも楽しみだった。いい歳である。いい歳なのに、そんなことで嬉しくなる自分の変化に驚いていた。東京にいる絢は、どう思うだろう。ただ島を出て素直に会いにくればいいのに、半年も時間をかけて旅し、遠回りしてくるような男に呆れるだろうか。絢が夜の頃の客だったならばそう思うかもしれないと、今までの凡人なら不安に取り憑かれていたかもしれないが、今はもう、そんな感情も持たない。
成果、結果を残してこその世界に生きていた。小さな島で客を奪い合い、取ったの、取られたの、くだらない争いの中で、まるでモノのように客を見る人ばかりだった。「それは、そうではあるが、しかし、決してそう扱うべきではない」と唯一、皆を諭し、夜の世界を束ねていた母が他界し、保てていた島の均衡が崩れたのだ。そのことで、凡人は自分の力のなさを思い知った。
生前の母は常々、「自分一人で大きくなったような顔をするな」と言いながら、「自分一人でも生きていける技術を身につけなさい」とも言っていた。
相反するその言葉に、気まぐれの狂った女帝だと反発するものもいたが、結局は泣きついて出戻り、母の世話になるものも多かった。凡人は母を越えられなかった。反発するものは全て切り捨ててきた。それは反抗期の無かった自分が限界値の正論を着て抵抗出来たことだった。そのツケが、回って来たのだ。凡人は全てを手放し、今、ここにいる。
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