1.はじまりは面接から
それは例年と違わない、時間が間延びしたような夏の一日だったように記憶する。何の予感も混じることのない透明ガラスのような日差しに辺りは満たされていた。娘の幼稚園もそろそろ夏休みが終わりに近づき、前にも後ろにも進んでいないかのような倒錯した時間が始まるのをただ待っていた八月。少し違った装いがあるとすれば、新しく生活シーンに加わった長男のベビーベッドの存在だった。この静止画像のような時間を揺さぶったのは妻の声だったのか。
「あ、日本語講師の募集が出てる」
確かにこのようなやりと