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作家・門田隆将(門脇護)のモラルハザードを問う 第3回

連載第2回から引き続き、門田隆将著『風にそよぐ墓標』と「FOCUS」遺族手記の比較をご紹介します。

■門田隆将著『風にそよぐ墓標』の疑惑(55)〜(61)

◆門田隆将氏の疑惑 その55

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】31ページ
 タクシーのドアを自分で開け、家の中へかけ込んだ。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】227ページ
 タクシーのドアを開け、家の中へ駆け込んだ領一を、今度は庭から煌々とした灯りが照らし出した。

◆門田隆将氏の疑惑 その56

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】31ページ
 どうやら、仮通夜の最中に私が着いたらしい。友人が何人も来てくれていた。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】228ページ
 仮通夜には、友人が何人も来てくれていた。

◆門田隆将氏の疑惑 その57

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】32ページ
 藤岡から電話があった。明日から、一部の遺体を公開するので、すぐ戻ってくるように。密葬に出席するつもりであったが、朝一番で藤岡に戻ることにした。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】228ページ
 藤岡から連絡が入った。「明日から部分遺体を公開することになりました。すぐ戻って来てください」と。
 母と妹の密葬にも出るつもりだった領一は、朝一番で藤岡に戻らなければならなくなった。

◆門田隆将氏の疑惑 その58

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】32ページ
 朝一番の飛行機で戻り、群馬の藤岡に到着したのは、昼を少しまわっていた。8月16日である。
 すぐに遺体の公開場所へ行った。どこかの学校の体育館である。入ったとたん遺体の甘ずっぱい臭いと、線香の臭いがまざった。何とも言えない臭いにおそわれた。すぐ、マスクを渡され、それを口にあてた。棺桶が、整然と敷きつめられてあった。その上には、紙と札がはってあった。緑色の札は男、赤は女で、そして、紙には遺体の特徴が書いてある。それを見て、心あたりがあれば、近くにいる警察の人を呼んで柩を開けてもらう、そんなシステムである。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】228ページ
 八月十六日、部分遺体の公開が始まった。早朝の飛行機に乗り、領一が藤岡に到着した時はすでに昼をまわっていた。
 領一は、すぐに遺体の公開場所となった体育館に向かった。
 だが、中に入った途端、死臭とも腐乱臭ともとれる甘酸っぱいような匂いと、線香の煙と香が入りまじった強烈な空気が領一を襲ってきた。
 領一はマスクを手渡され、それを口にあてた。体育館には、棺が整然と並んでいた。
(略)ひとつひとつの棺の上には、色のついた札が貼ってある。近づいて見てみると、緑色の札が男で、赤い礼が女だった。それぞれの棺の上には、中に入っている遺体の特徴が書いた紙も貼ってある。それを見て、心あたりがあれば、近くにいる警察の人を呼んで棺の蓋を開けてもらうのである。

小川さんの遺族手記には〈遺体の甘ずっぱい臭いと、線香の臭いがまざった。何とも言えない臭い〉という独特の表現があります。腐乱した大量の遺体の臭いをかいだ人でなければ、このような強烈な表現はできないでしょう。このくだりとソックリな表現が、上記のように門田隆将氏の本には書かれているのです。

◆門田隆将氏の疑惑 その59

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】32ページ
 警察の人は、柩の窓の部分を開ける。その下には遺体の顔があるはずだ。私達は、じっと息をこらして見ている。だが、いざ窓が開くと顔がない。(略)いわゆる部分遺体。体の一部。四肢の一部。手と胴体、足なんかがくっついているのなどは、よっぽどましであった。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】229ページ
警察の人に最初、棺の窓の部分を開けてもらうんですが、そこを開けてもらっても、〝顔がない〟んです。あるべき顔が棺の中にない。(略)手とか足、あるいは胴体などの部分部分が入っているだけでした」

◆門田隆将氏の疑惑 その60

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】32ページ
 ある家族が、一発目で遺体を発見したらしい。
「お父さんだ、お父さんが呼んでくれたんだ」

 体育館中にその声がひびきわたった。それをうらやましそうに見る周りの目は異常であった。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】229ページ
「ある時、急に叫び声が聞こえて、そっちを振り向くと、お父さんだ、お父さんだ、お父さんが呼んでくれたんだ、と叫んでいる家族がいました。その家族は、一発目で父親の遺体を発見したらしいんです。その声を聞きながら、ほかの遺族たちが羨ましそうに見ているのが印象的でした」
 異常な空間だった。

◆門田隆将氏の疑惑 その61

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】32ページ
 遺族の、まあ、正確に言うと、乗客の家族の待機所では、こんな会話がかわされていた。
「御遺体、確認されたそうですね」
「有難うございます」

「よかったわねぇ」
「ええ、五体満足で
「それはおめでとうございます」
「おたくもはやく見つかるといいわね」
(略)しかし、おめでとう、とはねぇ、遺体が確認されたということは、死んだ、ということが確認されたわけなんだから。でも、この気持ち、十分理解できる。それほど、異常な世界なのだ。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】229ページ
 遺体確認所や待機所では、
「ご遺体が確認されたそうですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます。お陰さまで五体が揃いまして……」
「お宅も早く見つかることを祈っています」

 そんな会話が交わされていた。十六歳の領一は、遺体が確認されることが「おめでたい」という、奇妙で異常な世界にいた。

遺体安置所での遺族同士の会話は、部分的に表記や表現を変えつつ、ほとんどそのままコピー&ペイストされています。

■門田隆将著『風にそよぐ墓標』の疑惑(62)〜(68)

◆門田隆将氏の疑惑 その62

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】32ページ
 日がたつにつれ、うじの数は増え、臭いも増し、また、ほとんどが部分遺体となってしまった。臭いのため、遺体公開場には、30分といることができなかった。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】230ページ
 日が経つにつれ、遺体に群がるウジの数は増え、臭気も耐えがたいものになっていった。強烈な腐臭によって、領一は遺体公開場に三十分もいることができなくなった。

◆門田隆将氏の疑惑 その63

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 8月18日、午前、呼出しがあった。どうやら親父が見つかったらしい。(略)警察の人の説明を受けた。相当、焼けてひどいという。気をしっかり持って確認するようにと言われた。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】230ページ
 八月十八日の出来事は、特に忘れられない。この日の午前中、領一は警察の呼び出しを受けた。
「お父さんかもしれないご遺体があります」
 群馬県警の係官はそう領一に告げた。相当炭化しているが、お父さんの可能性がある、と係官は言う。その理由も説明していたが、領一は覚えていない。とにかく、気をしっかり持って確認するように、との申し出だった。

◆門田隆将氏の疑惑 その64

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 私は見た。思わず、目をつぶった。真っ黒だ。これが人間かと思った。焼けて縮んでいる。何かをしようとしていたのか、体が半分起き上がった状態だった。かすかに、歯が白く残っている。歯のかたちが何となく親父に似ている。これが親父か。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】230〜231ページ
 領一は覚悟を決めてその遺体と対面した。
 その瞬間、領一は声を上げそうになった。
 棺の中に収められたその遺体は黒こげになっていて、縮んでいた。(略)半分起き上がったような形の遺体を、看護婦が領一の目の前できちんと起こしてくれた。
「これが人間か……」
 遺体にかすかに残っている歯だけが、異様に白い。
(略)これが本当に親父なのか。

◆門田隆将氏の疑惑 その65

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 最終的に血液鑑定をすることになった。(略)それが分かるのは2日後であった。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】231ページ
 遺体は血液鑑定することになった。結果が出るのは、二日後である。

◆門田隆将氏の疑惑 その66

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 2日後、警察からの呼出しがあった。結果は、B型。親父の血液型はO型である。一致しない。もう一度、一から出直しである。がっかりした。また、あの公開されている部分遺体の中からさがし出さなくてはならない。そう思うと、気が遠くなった、と同時に、ほっとした。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】231ページ
 鑑定の結果は予定通り、二日後の八月二十日に出た。黒こげの遺体は父とは違っていた。
(略)もう一度、出直しである。ほっとすると同時に、がっかりもした。また、あの部分遺体の棺を見て歩かなければならないのだ。気が遠くなった。

父の遺体探しが出直しとなったことに「がっかりした」、そして「気が遠くなった」「ほっとした」という三重にわたる感情の激しいブレが、門田隆将氏の本ではそのまま流用されていることがわかります。

◆門田隆将氏の疑惑 その67

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 あの遺体がもし親父だったら、どのようにして大阪まで運ぼうか。こんなものを祖父母や弟に見せることができない。どうしたらいいものだろうか。2日間、ずっとこのことを考えつづけていた。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】231ページ
 この遺体を連れて帰ったらどうなるだろうか、と思った。(略)道頓堀の祖母に、この遺体を見せることができるだろうか。領一は漠然とそんなことを考えていた。

◆門田隆将氏の疑惑 その68

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 その日の夜、
「どんな組織の中でも下位20%のなかには入るな」
 という親父の言葉を思い出していた。これは、私の成績を見て言った言葉である。当時、私の成績は、たいへん悪く、下位20%どころか、下位一ケタぐらいであった。この日までに部分遺体を含め、400人ぐらいの遺体が確認されていた。520名の方がなくなっているのだから、上位80%といえば420名ぐらい。そうすると、親父が下位20%に入ってくるのは時間の問題だ。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】232ページ
 日頃、父親が言っていたことを思い出したのは、そんな時である。父は、(略)
「どんな組織に入っても、下から二〇%の中にだけは絶対入るな」
 と言っていた。おそらく、下から二〇%どころか、下から何番目という成績だった自分を叱咤するための言葉だったのだろう。しかし、もはや遺体が確認できない最後の二〇%に父が入って来るのは時間の問題となっていた。その時、領一は父のその言葉を思い出したのだ。
 犠牲者五百二十人の内、もう七〇%以上が確認されている。(略)父が忌み嫌った〝下位二〇%〟に、父自身が入ってしまう瀬戸際が来ていたのである。

■門田隆将著『風にそよぐ墓標』の疑惑(69)〜(74)

◆門田隆将氏の疑惑 その69

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 次の日、警察から、すべて、発見された遺体を公開する、という発表があった。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】233ページ
 この日、ついに警察から、「発見されたすべての遺体を公開する」という方針が伝えられた。

◆門田隆将氏の疑惑 その70

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 まだ一度も確認していない遺体の安置所へ行った。二つ目の柩を開けた時、あっと声を上げた。見覚えのある服が横においてある。顔は分からない。しかし、親父の手である。(略)絶対、親父だ。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】233ページ
 領一は、まだ一度も見ていない遺体の安置所へ向かった。(略)二つ目の棺を開けた瞬間、「あっ」と思った。
 見覚えのある服がそこに置かれていたのだ。
しかし、肝心の遺体には顔がない。(略)
 手も見覚えのあるものだった。父に違いなかった。

◆門田隆将氏の疑惑 その71

【「FOCUS」(90年11月2日号)手記】33ページ
 最終的な確認は、指紋で行われた。家の中にあったものと一致した。大阪から前もって送られていたスーツを上にのせ柩のふたをしめた。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】234ページ
 最終的な確認は、指紋でおこなわれた。あらかじめ提出していた指紋と、領一が探し出した遺体の指紋は完全に一致した。領一は、大阪から前もって送られていた父のスーツを遺体の上に乗せて、棺の蓋を閉めた。

なんともはや、このくだりもソックリですね〜。

◆門田隆将氏の疑惑 その72

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】18ページ
 群馬県警から遺品の事で呼び出された。確か、前橋の警察学校だったと思う。車が到着した。いつもの様に、マスコミのカメラが走り寄ってくる。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】234ページ
 領一は群馬県警から呼び出しを受けた。「お父さんの遺品のことで相談があります」とのことだった。領一は、指定された前橋の警察学校に、はるばる出かけていった。
(略)領一が到着すると、いつも通り、カメラマンたちが走り寄ってきた。

◆門田隆将氏の疑惑 その73

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】18ページ
「どうぞ、こちらへ」
 と奥の方へ案内された。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】234ページ
 氏名を告げると、奥へ通された。

◆門田隆将氏の疑惑 その74

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】18ページ
 やたら長い時間、待っていたような気がする。
 二人の警察官が入ってきた。二人とも、体が、「ごつい」人だ。服装は、いかにも、つい今まで山登りをしていた、という格好である。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】234〜235ページ
 しばらく待っていると、屈強な群馬県警の警察官が二人、入ってきた。今まさに山から下りてきたという格好をしている。

■門田隆将著『風にそよぐ墓標』の疑惑(75)〜(83)

◆門田隆将氏の疑惑 その75

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】18ページ
「わざわざこんなところまでお呼び出しして申し訳ございません、私は……」
 と言い、名刺を出そうとしたが、なかなか出てこない。ようやくポケットの中から出てきた名刺は、くちゃくちゃで、半分土で汚れていた。
「すいません。今まで現場にいたもんで。
飛んで戻って来ました」
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】235ページ
「遠くまでお呼びだてして、申し訳ありません」
 警察官は、そう言いながら、名刺を出そうとした。しかし、名刺がなかなか出て来ない。あっちこっちポケットをまさぐってやっと一枚の名刺を出してきた。
 名刺はシワだらけで、半分が土で汚れていた。
警察官は申し訳なさそうに、
「すみません。さっきまで現場にいたもんですから……」
 と、汚れた名刺を出す非礼を詫びた。

◆門田隆将氏の疑惑 その76

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】18ページ
 カバンだったのか、袋だったのか記憶は定かではないが、とにかく、その中から、フィルム、カメラ、それに、現像した写真が出てきた。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】235ページ
 持参してきた袋を机の上に置いた。そして、そこから土のついた品物を取り出し始めた。
 それは、カメラにフィルム、あるいは、それを現像した写真……等々だった。

◆門田隆将氏の疑惑 その77

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】18ページ
「これ、借りていくで」
 と言って親父が持っていったカメラだ。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】235ページ
 旅行の前に父が「これ借りるで」と言って持っていった領一のカメラだったのだ。

◆門田隆将氏の疑惑 その78

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】19ページ
「警察といたしましては、これらの写真を、事故原因の究明に役立てたいので、出来ましたら、全て貸していただきたい」

(略)「異常が発生してからの写真は、今のところこれだけです」
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】236ページ
「今回の事故で、異常が発生してからの写真は、今のところこれしか見つかっておあありません。警察としては、お父様の残されたこれらの写真を事故原因の究明に役立てたいと思っています。これらをすべて警察に貸していただくことは可能でしょうか」

◆門田隆将氏の疑惑 その79

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】19ページ
「事故原因究明のために使って項けるのなら、お貸しいたします」
 はっきり私はそう言った。恐らく親父だったら、こうしていただろう。そう思った。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】237ページ
「もし、事故原因の究明のためにお役に立てていただけるのなら、すべてお貸し致します」
 領一はその場で、警察官にはっきり言った。それは、父親自身だったら間違いなくそうしていただろう、と思ったからである。

◆門田隆将氏の疑惑 その80

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】19ページ
「これは、事故原因解明の重要な手掛りになります。大切に使わせて頂きます」
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】237ページ
「これは事故原因解明の重要な手掛かりとなります。大切に使わせていただきます」

◆門田隆将氏の疑惑 その81

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】19ページ
「それで、マスコミに対してなんですが、できたら、黙っていて頂きたい。というのは、今、外にこの写真が出ると、パニックになりかねません。そうすると、捜査の方にも影響が出る可能性もあります」
「分かりました。でも、現像した写真、一セット頂けますか」
「それは結構です」
 ということになり、一セットもらった。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】238ページ
「マスコミに対しては、このことは、できましたら黙っていていただきたい
んです。今、この写真が出てパニックになると困ります。捜査にも影響が出てきますので、秘密にしておいて欲しいんです」
 もちろん領一に異存はなかった。進んでマスコミにこれを公表するつもりはない。
 その代わり、現像した写真を一セット、領一は警察から譲り受けた。

◆門田隆将氏の疑惑 その82

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】20ページ
 たじろいだ私の姿を、祖母は見逃さなかった。
「何か、かくしてるやろ」
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】238ページ
 ことあるごとに祖母はこう聞いてきた。
「(哲が)何か残しとるやろ?」

◆門田隆将氏の疑惑 その83

【「FOCUS」(90年11月9日号)手記】20ページ
「○○新聞ですが、遺品の中に、機内で撮られた写真、なかったでしょうか」
「おまへん、そんなもの」
 さあ、えらいこっちゃ。マスコミが、知ってはいけないことを、知っている。
【門田隆将『風にそよぐ墓標』】239ページ
「機内写真ですが、ありますよね?」
「お父さんが残された写真のことですが……」
 そこまで聞いて来る新聞記者もいた。

■「引用」は「無断」でやってかまわない

以上が、門田隆将著『風にそよぐ墓標』と「FOCUS」に載った遺族手記の類似点です。くどいようですが、ここまでソックリな記述だらけなのに、『風にそよぐ墓標』の文中には「FOCUS」からの引用であるとは明記されていません。小川領一さん(事故遺族)が書いた手記と、門田氏オリジナルの文章がゴチャ混ぜになっているのです。これは池田知加恵さんが著作権侵害訴訟に訴えたケース(連載第1回を参照)と同様の手口ではないでしょうか。

これまたくどいようですが、作家が文章を書くにあたって「引用」を自由にすることには何ら問題はありません。「あなたの文章の一部を引用させてもらいますね」と、著作者本人に連絡する必要もありません。ときたま盗用・剽窃(ひょうせつ)のことを「無断引用」と表現する人がいますが、「引用」は「無断」でやって何ら構わないのです。問題は、どう見ても他人の文章の引用であるにもかかわらず、そのことをカギカッコつきで明記しない書き方です。

この点について、読者の皆さんはどうお感じになりますか? 「いやいや、これくらい法律的にはセーフの範囲内だよ」と言う人もいるかもしれません。たとえ法律的にセーフだったとしても、作家としての道義的姿勢、モラルはどうなのでしょう……。

次回の連載では、「FOCUS」の遺族手記のみならず、『風にそよぐ墓標』にまつわるさらなる引き写し疑惑についてお伝えします。

連載第4回へ続く/文中・一部敬称略)

※情報提供はコチラまで → kadotaryusho911@gmail.com

#門田隆将 #門脇護 #ノンフィクション作家 #風にそよぐ墓標 #著作権侵害訴訟 #疫病2020 #Fukushima50

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