kadopi

ただの地方にいる中年の妄想家です。

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マガジン

  • 雨を待つ。

    雨を待つ「私」をめぐる物語。

最近の記事

「傘差さないんですね。」

普段職場であまり話をしない同僚の言葉に動揺した。 まだ東京で働いていた頃の話だ。 当時私はまだ若かったし、普段はバイクに乗っていたので雨に濡れることに抵抗はなかった。 加えて、職場の近くの駅から出版社が立ち並ぶオフィスまでは歩いて10分。私服勤務の職場だったからいつも、着慣れた薄手のコートを羽織りコートをかぶって雨の中を歩いていた。 そんなことを当惑しながら説明すると、 「面白いですね(笑)」 と彼女は笑った。 それをきっかけに彼女と親しくなったわけでもないし、険悪に

    • 雨を待つ。プロローグ

      天気予報のアプリが午後から大雨であると告げると、胸が踊る。 性格が悪いのか陰気なのか、いつからか雨が好きになった。 雨を眺めながらタバコを吸うのが好きだった。 (今はもうやめた) 雨の中をバイクで走るのが好きだった。 (今はもう乗ってない) 雨の中を傘をささずに歩くのが好きだった。 (でもフード付きコートはかぶっていた) 仕事をしながら雨を待つ。 早く雨が降らないか気になって仕方がない。 今はいないが若い恋人が待ち合わせの恋人を待つような気持ちでいる。 霧雨は降

      • 特に何もないんだけど・・

        この気持ちを何かの形で残しおきたい 詩でもいいし 文章でもいいし 写真でもいいし 音楽でもいいし 絵が描けるなら、絵でもいい 地元の河原で摘んできた菜の花が 春の訪れを告げている 花は散らずにいて欲しい あなたにそばにいて欲しい

        • 会話をしていない。

          私は独身だ。友だちと呼べる友だちもいなくなった。 家族は生きているが音信不通に近い。このまま私が孤独死しても誰も気づかないだろう。 だからというわけではないが、家には観葉植物と河原で摘んできた菜の花が飾ってある。そんなつもりはなかったのだが、寝る前や朝起きた時、無意識に彼らに触れながら一人で話しかけていた。 ただ昨日と今日は彼らに全く話しかけないまま、帰宅し、出社した。 葉水することすら忘れてしまった。 人間とまともに会話すらしていないのに、黙ってそばにいてくれる彼らと

        「傘差さないんですね。」

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        • 雨を待つ。
          2本

        記事

          春に乗って帰りたい

          春の雰囲気に包まれていると懐かしいような切ないような気分になってくる。 人間は頭の周波数を切り替えると、自分が行きたい時代に行くことが出来るということが出来るらしい。 春のこのふわふわした気分に乗って、あの人がいるあの季節に帰りたい。

          春に乗って帰りたい

          梅は咲いたか、その次は?

          梅もそろそろ終わりに近づくこの季節、 「梅が終わったら桜でしょ?」 というのが皆さんの認識かと思いますが、いえいえ、春を知らせてくれる主役はもうひとりいます。 それは「白木蓮(木蓮)」です。 ちょうど梅が終わりかけ、桜のつぼみがそろそろ膨らみかけるこのぐらいの季節に私の地元では咲き始めます。 花は大きいのですが、大きな花弁が何枚も折り重なって形づくる花は、いかにも気品があって大好きな花のひとつです。 「春」というと、どうしても梅や桜にばかり目が行きがちですが、是非この木

          梅は咲いたか、その次は?

          夜はだめです。

          「ええ、主に仕事なんですけど、だめですねぇ。 プライベートならいいんですよ。 一人でドライブ行ったり、部屋で一人で本読んでたりとか全然苦痛じゃないし、飲み会に行って、一人で歩いて帰ったり。 そうそう、夏なんかは意味もなく深夜の散歩にもよく行きます。 でも仕事で深夜ってのはなぜかだめなんだなぁ。」 *** 「なんかね、こう・・世界の隅っこ取り残されたような、さみし〜い気持ちになるんですよ。同僚なんかも同じフロアにいるのにね(笑。 でもすごく孤独感を感じる。もう胸の奥をごっそ

          夜はだめです。

          流れに飛ばされそうになる

          田舎道を窓を開けてクルマを走らせている。 開けた窓から入ってくる春の香りを感じられる。 ・田んぼの匂い ・菜の花の香り ・春の空気独特のぼんやりと掴みどころのない柔らかな日差しと、草いきれのわずかな香り でもその道も終わってやがて道は大きな幹線道路に突き当たる。 季節も天気もお構いなしに、人もクルマもビュンビュン走る。 思わず私は怖気づいてしまう。 あの流れの中で私は翻弄され、どこかに飛ばされてしまうのではないか。 どうせならば私の知らない宇宙の果てか、あの人が待って

          流れに飛ばされそうになる

          月夜の海を探しに行こう

          『かなりあ』作詞:西條八十 歌を忘れたカナリアは後ろの山に棄てましょか いえいえそれはかわいそう 歌を忘れたカナリアは背戸の小薮に埋けましょか いえいえそれはなりませぬ 歌を忘れたカナリアは柳の鞭でぶちましょか いえいえそれはかわいそう 歌を忘れたカナリアは象牙の舟に銀のかい 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す 「だから自分の可能性を捨てちゃいけないし、親や教師は短いスパンで判断しちゃいけないんですね。」 「子供自身も、学校の勉強や部活でくじけることがあって

          月夜の海を探しに行こう

          思いついたことを残す。

          思いついたことは思いついたことなので、記録に残すのが難しい。 特に私はスマホを持ってないので書き残すということが出来ない。 それこそ物理的なコクヨが出しているような「ノート」を持ち歩けばいいのかもしれないが、長い間キーボードで文章を書く癖がついてしまっているのでおそらく思考のリズムが崩れてしまって思うようにいかないだろう。 それに思いついたことというのはたいてい散歩や歩きの移動の時に浮かんでくるので余計に難しい。 それでも訓練だと思って(記憶力と文章作成)、このnote

          思いついたことを残す。