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はじめての推しカプ小説同人誌を作りたいという人がいたら 前編

最近、twitterでそういったまとめを見ました。私は活動中、「おはなしの作り方」みたいなまとめは書いたものの、同人誌自体の作りかたというのはまとめたことなかったな……と思ったので私もやります。

以下、注意事項です。

  • あくまでこれは一個人によるまとめであり、人の数だけ適切なものがあります

  • 本稿の目的は全手順の網羅ではなく全体の概要把握をしてもらうためのものです

  • もっというと「検索していくための基礎知識」

  • 私自身は数年ごとに「書ける期」「書けない期」があり、現在書けない期だが前回の書ける期には五冊ほど文庫本サイズ同人誌を発行したりしていた人です

  • そういう人が「推しカプ同人誌を作りたい」という人を目の前にしたらどういうことを話すかを仮定しながら書いています

  • 印刷所に入稿したものにする前提です

同人誌を作るのに必要なもの

小説同人誌を作るのに必要なものは、ぐっと枝葉を削ぎ落としていけば以下の3つだけです。印刷所選びとか表紙デザインとかを気にする前に、この3つを用意することをまず考えるといいでしょう。

  1. 本文(PDF形式)

  2. 時間

1.本文

物語の作り方、みたいなものは検索すれば山ほど出てくるので省略します。
とにかく本文、本文がないと始まらないし、本文がないうちからあれこれ気にして調べてもあんまり意味はないです。本文ができてから調べましょう。

最低必要な文字数

では「本文ができた」とはどういう状態なのか?
答え、「最低限の文字数を確保した状態」です。

昨今の流行りである文庫本サイズの小説では2〜3万字程度あるとそこそこ格好のつく背幅になるな、とは思います。「印刷所で本にしたい」という目的があるなら「8ページでも折れば本」と言われても「そういうことじゃない」となるはずなので、まあ、一万字以上2〜5万字くらいを目処にどうぞ。

が、薄い文庫本というのも岩波書店の薄い文庫本ぽくてかっこいいし、A5サイズで二段組で薄い小説というのも同人誌ぽい趣があってよいものです。

その場合でも、ひとまず「それっぽくなる」のは最低一万字くらいが目安ではないでしょうか。メロスが確か5000字とかそのくらい。一万字を目安に用意しましょう。そこより多いぶんには全然問題ないです。

一万字が20~30Pくらいの文庫本同人誌になります。
私は5万字前後が多かったです。繰り返しになりますが、薄手の文庫本同人誌というのもいいものです。

本文をPDFにする

印刷所に「この小説を本にしてください」と文字を提出する際は、txtファイルでは受け付けてもらえません。PDFデータにする必要があります。
本文自体はなにで書いてもいいですが、最終的にPDFにしなければなりません。

最近は同人原稿に対応したアプリなどもたくさんあります。iPadを持っていれば印刷用PDFへの変換に困ることはないでしょう。wordで入稿PDF作成というのが長らくのスタンダードでしたが、個人的にはiPadのアプリの方が圧倒的に操作性と見た目も良い(というかwordで印刷データ作成はだいぶ無理をしている、あれはそういうツールではない)(ていうかwindowsよりiOSのほうが圧倒的に操作性と見た目が良い)ので、iPadを持っているならそちらで検討してみてほしいです。

↑なるほどーーーってなる記事。

iPadがなければ別途パソコンでPDF対応ツールを探しても良いですし、今だとおそらく一番簡単なのはpixivのPDF出力機能です。あれはやばい。細かい調整はもちろんできませんが、「なにもわからないけど印刷用PDFがとにかくほしい」のニーズには完璧に応えていると思っています。あれがあるとスマホでも入稿データが作れてしまうんですよ。
ちなみに私は本業のあれを活かしてinDesign(プロ用ツール)というやつでやってました。あまり参考にならないと思う例です。

2.金

印刷費はそれこそ千差万別です。それはそれとして「3~5万」は予算わけしておくとスムーズなように思えます。この3~5万は頒布にまつわるイベント参加、旅費、その他雑費用のプールです。

イベントに出ないという選択肢も昨今はありますが、なんらかの理由で予算オーバーになる可能性を見てのバッファは確保しておくのがおすすめです。

予定外の出費が発生した際「予定外の出費が出た」と思うとネガティブな記憶と思い出になってしまいますが、予算があればゆとりになるし、使わずにすんだならそれはそれにこしたことはないので。

印刷費:最安値で攻める

金が必要です。
さて、安さで有名な「ちょ古っ都印刷工房」を見てみましょう。文学フリマ、だいたいここで刷ってる。
https://www.chokotto.jp/

30Pの本を100部、表紙フルカラー、特殊装丁なしでやった想定です

ここはめちゃくちゃ安いです。価格で考えるなら一択。きちんと本の形になっていて感動します。

ただ他の印刷所のような華やかな装丁バリエーションやらなんやらがないとか本文の印刷がちょっとあれで文字の可読性が、などということで(私にはあまり違いがわからんのですが)腕に自信ネキたちは他の有名どころを使いますが、まあこの2、3倍くらいの見積もりになると思ってください。そしてもちろんページ数は100とか200とかです。
部数を刷れば刷るほど単価が下がるのですが、もちろん売れなければ赤字もでかくなるということ……ではどうやって予算を決めるべきか?というと、「出せる金額を決めてその範囲内でやる」しかないなという考えです。

印刷費:予算は「財布から出せる金額」で決めること

わたしが前ジャンルではじめて文庫同人誌を出そうとした際、周囲にそれとなく聞いてみた推奨部数で計算したところ、家賃三ヶ月分くらいが飛ぶ計算になりました。(新刊複数なのもあって)

シンプルに「嫌だが?」と思いました。趣味の自費出版に出してもいい金額、正直、私の場合は5万が上限です。5万なら全然回収できなくてもいい思い出になるし、何より自分の書いた小説を物理の形で得たいというのが最大の動機だから。自分で書いた推しカプ小説を文庫本の形で手にとるのが最優先の目的、そして印刷の際に発生したうん十部を有償でお裾分けする、そういうあれでしたから。

そのときはいろいろあって、推奨された部数で刷ったのですが、その時は後述の裏技を教えてくれた人がいたのでなんとかなったのですが、裏技の存在を知らなくても「刷れ」と圧をかけてくる人はいます。

いますが、あなたのお金はあなたのものです。後悔しない出費をする唯一の方法は「自分自身が納得して金を払う」、これだけです。押されての出費は後悔につながるし、後悔は怨念になります。

界隈の需要がこうだからこれだけ刷らなきゃ、界隈の流行が分厚い小説本だから分厚くしなきゃ、とか、そういうの考えないで、「自分が欲しい本を」「自分がコントロールできる本を」「自分が無理のない範囲で」出しましょう。
趣味って、無理をして自分を削るものじゃないから。楽しい気持ちを味わうためのものだから。
予算の関係で小部数になった本が、あっというまに在庫がなくなっても、それは「無理のない範囲で趣味を楽しめた」ってことです。そのことに万一いろいろ言う人がいたとしたら、その人は趣味を楽しめていないというだけの話です。

印刷費:裏技もある

ところで今は「裏技」もあります。私はこの方法で乗り切りました。

はいこれです。コロナ禍でとらのあながおっぱじめたサービスです。
文字通り〇円で同人誌が印刷できてしまうサービス。
発行した同人誌を通信販売ではとらのあなだけで売る、という条件で、印刷費をとらのあなが持ってくれるんですねー。返済義務なしです。
細かい規約、条件などはページをご覧ください。審査があると聞いてびびりちらしていましたがまあまっとうなサークルならだいたい通ります。

お前あんだけ身の丈にあった趣味の範囲の出費にしろっていっておいてそれかよって言われるとそれはそうなんですけど、でも、けど、使えるものは使うべきでは??????




次回は後編、「3.時間」「4.人への頼り方」についてです。



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