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【読書メモ】情報は一冊のノートにまとめなさい

たぶんむかーーーしに読んだんですけど、先日蔵書交換でいただいてめちゃくちゃ面白かったので記録。

タイトルは「情報を一冊のノートにまとめなさい」ではあるけども、これは正確ではなくてちょっとキャッチーにしてますね。
正確に言うと、「情報を書く場所は一冊のノートにまとめなさい」で、一冊に過去未来現在全てが詰まったノート術の作成方法ではない。
実際は積み上がっていくログをデジタルも使ってデータベース化してます。

でもってこの本の何がおもしろいって、いろいろあるんですけど、まず2008年初版発行なんですよ。12年前の「最新」なんですね。なので文中に「スマートフォンというものを5万円かけて入手した。これがあればデジタルの索引がどこでも読める」とか書いてある。でもスマホの用途はそれだけで、普段使いには物理キーボードつきのガラケー使ってる。日本にiPhoneがやってきたのは2008年で、そこから数年間はiPhoneは意識高い物好きが使うアイテムだった記憶があります。
そういう時代に書かれた本ってことです。

パソコンが業務と切り離せなくなり、でもまだガラケーがメインで(かつブラックベリー的な物理フルキーボードつきがいけてた)、持ち歩けるノートパソコンなんて鈍器以外に存在せず、クラウドツールなんて存在してなかった、そんな時代。

そもそもシステム手帳というのが第二次世界大戦で開発された「戦場でも事務作業をするためのアイテム」だったわけです。で、その後高度成長期の日本でそれが取り入れられ、マキシマリズムの時代において「手帳にはなんでもつっこむ、取引先の住所録も資料も何もかも、重ければ重いほどすごい」みたいな価値観の時代になっていったような感じがあります(古い時代の手帳術本を読むかぎり)。
さらにその後スマホの開発やぶっとい回線によるクラウドツールを経て、「書く」ことは実用から嗜好品になりインスタ系映え映え手帳が主流になっていったりするわけですが、本書はその過渡期、物理手帳の世界にデジタルが忍び寄ってきた、そういう時代のノウハウ本です。めちゃおもしろい。

ところでこの本のメモ術、読めば読むほど「バレットジャーナル」に酷似しています。
キーこそありませんが、文章の記述は箇条書きの指定すらしています。
しかしパクったのではなく同時期によく似た考えと需要の人物が開発したのだろうな、という感じは確かにあります。で、調べてみるとバレットジャーナルの開発者はウェブデザイナー(デジタル情報と人的リソースのあれそれを管理する立場の人)が2007年ごろに広め始めたものだそうで、2007年と2008年、これはやはり流れ込んでくるデジタル的情報をどうにか人間が捌くために「時代」が編み出したすべなんでしょうね。

12年前のやり方なので、今このコアを行うなら全て手書きである必要はありません。
実際、12年前の時点で目録やメタ情報はデジタルに持たせてるし、今ならスマホの入力ハードルの低さは当時の比ではなく、なんならアップルウォッチで音声入力だってできるでしょう。Kindle Unlimitedにもnotionやらkeepやら使った、まさにこの本のメソッドをフルデジタルでやる方法がたくさんあるし。

とはいえ、この本にはデジタルでクラウドな世界の夜明け前の空気が漂っています。(当時全盛期であるミクシイを挙げて「みんな夢中になってるけど50年後もあるとは限らない」「ブログブームは下火になるはずだ」とか言ってる、あとパソコンのバックアップの重要性を何度も繰り返している)
「パソコンにはテキストエディタという便利なものがあるんだ」と紹介しながらノートのページを工作して封筒状にして絆創膏や千円札を入れたりするこの過渡期感、たまらない。あとやはり当時入ってきたばかりのものであろうマインドマップにも触れている。
そのへんを未来人の視線で見るのも楽しいし、なにより手法自体は今も一部通用するところはあります。
バレットジャーナルは英語発祥なので日本語、日本人には向かない要素があるのではと感じてた違和感もこちらのほうが馴染みやすいような気もするし。

本書には「古い時代の実用書には「情報の発酵」とでもいうような魅力がある、今古いパソコン通信の本を読むとメルトモの作り方などが載っている」みたいなこともかかれてます。12年経ってまさに本書が発酵しており、なんともいえない味わいです。

発酵のかおりと、そうは言ってもこのへんはむしろ今も使えるな、というのを拾うのとがほんとに楽しい本でした。

2013年に「完全版」が出てるみたいで、だいぶ改稿されてるっぽく気になります。それでも9年前か……

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