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【雑記】毒育ち女とスカート

 気がつけば四月も下旬、2022年も三分の一が過ぎようとしている。

 まずい。このままでは月連続更新が途絶えてしまう……というくだらない小さな執着心から当記事を書いている次第だ。

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 通常業務に加えて式典などの集会が多いこの時期、簡易的とはいえ“ドレスコード”という存在が私を憂鬱にさせていた。正装である以上、無論ノーメイクとはいかない。慣れないヒール靴も履かなければならない、そして私はパンストもハイソックスストッキングも大の苦手である。

「男性はスーツに靴下がベストなのに、なぜ女性はストッキングなんぞ蒸れる、キツい、穴が開くリスクがある代物を履いて肌感を見せなきゃならんのだ!?」と密かに憤っていた私は、苦肉の策としてローヒールローファーにベージュの靴下で一日だけやり過ごした。(誰からも注意こそされなかったが、その真意はいまだに分からない。もしかすると裏で陰口を言われてるかもしれないが、この快適性には代えられないのでギリギリまで攻めていく所存だ)

 晴れの場で友人や同僚が身に着けていた華やかなスカート見て、私はふと最後に自分がスカートを履いた記憶を手繰り寄せてみた……おかしい、ここ近年のスカート着用の記憶が無い。もちろんスカート自体は持っている。スーツのスカートとロングスカートを二枚。いや、下手するとそれらに足を通したのはコロナショック以前まで遡るかもしれない。女子会で居酒屋の座敷席に案内された時、デブで正座の苦手な私は「ああ、なんで今日スカートにしたんだろう」と後悔したのであった。そう言えばスーツのスカートも就職活動で数回履いただけかもしれない。

 こんな私を見た巷のミニマリストの皆様からは「履かないなら捨てなよ!」と説教の一つでも頂きそうだが、そう簡単に捨てられるものではないのだ。上手く表現できないが、私の中の(ほんのわずかな)女性性が悪足掻きをしているのだ、「それは、捨てたらアカンで」と。無用の長物となりつつあるスーツのスカートとロングスカートとは、私の(限りなく透明に近い)女性性を保つ上での“最後の砦”であるのかもしれない。


 それにしてもなぜこんなにもスカートを履く機会が減ったのか考えてみる。

 そもそも今の私にはスカートを履く必要性が皆無だからかもしれない。職場でもスカート着用は特段義務づけられていないし、仮に明日デートに赴くとしても私はスカートという選択は取らないだろう。令和時代の今、パンツスタイルでも女性らしいファッションは可能であるからだと私は思うからだ。ワイドパンツやプリーツパンツ、アンクルパンツ、フレアパンツと実に種類も豊富でメンズライクファッションやノームコアファッションの流行もパンツスタイルの追い風となっている気がする。(気がする)あとは単純に私は太っていている上に年齢も考慮すると極力足を出したくないという。

 まあそれ以上に私は(自称)心配性であるのだが、それがスカートスタイルを躊躇させているとも言える。死にたがりの心配性とは笑わせるが、“まだ”死ぬ場面でない以上は可能な限りリスクを減らしたいのだ。たとえば災害で公共交通機関が止まって徒歩帰宅や待機を強いられた時、スカートではなかなかしんどい。またこの令和時代、電車内や密室での犯罪が多発した上に中には女性を標的としていた容疑者も存在した。日本においてスカートとは女性の象徴および記号であり、スカート姿を見かけたら99%の人間は対象を女性だと認識するだろう。それがパンツスタイルならば、万が一暴漢に狙われても「え、もしかして女じゃないのかも……?」と勘違いしてくれるかもしれないし、パンツスタイルの方が逃げやすいのは明白である。(先ほどの「パンツスタイルでも女性らしいファッションが可能」という表記と矛盾するかもしれないが、緊急時においてはその限りではないことを断っておく)

 
 もっとも残念なことに今の私には、自宅まで送り届けてくれる男性の恋人も、犯罪に巻き込まれた際に咄嗟に守ってくれる彼氏もいない。災害に見舞われようが、暴漢や痴漢に付け狙われようが、私自身が私を助けるほかないのだ。(こう書いていて涙がにじんできたが、それが紛れもない現実である) もしかすると逆に私が母や姉、他の誰かを助けなければならない状況に遭遇するかもしれない。そんな時に「スカートが引っかかっちゃった!」だとか「あ~ん、スカートで走りにくい~」なんて言ってられないのだ。輩に一発蹴りでも喰らわせないといけないときたら、なおさらスカートでは無理である。つまり、私にとっては生活的観点からも防災・防犯的観点から(ほぼ)パンツスタイル一択なのである。

 そう考えると、あくまで個人的偏見に過ぎないが、今のご時世にスカートをお召しになれるのは心強い恋人が存在する女性か、いかなる状況においてもスカートが破れようがどうなろうが自分自身を守るという強い責任感と「それでもスカートを履きたい!」という強い信念を持った女性だけなのではないだろうか。

 私は決してスカート自体もスカートを履く女性も否定はしない。むしろスカートスタイルで黙々と仕事に励む女性はカッコいいとすら感じる。もちろんパンツスーツも捨てがたいが、「スカートとハイヒール」とは女性専用の戦闘服なのかもしれない。ズボラでだらしない私にはなかなか着こなせないからこそ、それを纏う彼女たちが勇ましく見えるのであろう。

 ここまでとりとめもなく書き連ねてきたが、そもそも性別にかかわらず「誰もが着たい服を思う存分着られる世の中」を実現しなけれなならないのではないか(もちろんTPOや職務規定を遵守するという条件で) もっと欲を出せばパートナーがいようがいまいが、強い責任感や信念があろうがなかろうが、「女子・女性の皆さんが安心してスカートを履ける世の中」の実現である。まあ私は別段フェミニストという訳ではないが、スカートとはある意味平和の象徴なんじゃなかろうかとも思う。

 今度の休みは久方ぶりにロングスカートで出かけてみようかしら。一応、保険としてペチコートを履いてだが(笑)



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