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安定のリーガル・サスペンス『99.9 刑事専門弁護士』

元日に娘と一緒に観てきた。12月29日に地上波で流れていたドラマが多少関連することもあり、配信などでドラマを観てから映画を観たほうが楽しめる。テレビドラマのときから1話完結でスカッと伏線回収するリーガル・サスペンスでその気持ちよさはそのままに、榮倉奈々さん、木村文乃さん、奥田瑛二さん、笑福亭鶴瓶さんなどもちょっとだけ出演して、ドラマファンの期待に応える展開になっている。

ストーリーは明確にあの作家のあの作品のオマージュだなというのは途中で気づいたけど、作家の名前を出しただけでネタバレになるのでそれを書くのはやめておく。名張毒ぶどう酒事件と和歌山毒物カレー事件をミックスしたような事件が起こり、その真実を追いかける斑目法律事務所にいろいろな困難が降り掛かってくる展開だ。でも、事件をそこから引用しているだけで観た印象はすごく軽いので、おどろおどろしい物語を観たくない人にも問題ないと思う。

韓国ドラマとか、『鬼滅の刃』とか年末に見た『呪術廻戦0』もそうなんだけど、マンガとかテレビドラマにオリジンのあるコンテンツは、コメディリリーフを多用して、物語を重くしない工夫をしている。ストーリーの本筋を複雑にしすぎないで尺を稼ぐ工夫でもある。「笑い」の替わりに「残酷」が入ることもあるけど、そうやって観客のアテンションを切らさないことが、いつでも読み飛ばしたり、チャンネルを変えることができるコンテンツには死活的に大切になってきていることを痛感した。

10年後にZ世代は1分間の動画にしか集中できないというギャグがあるけど、そこに近づいていることを実感するような気分。

ドラマシリーズにあったような「裁判官と検察官の人事交流の影響が不公正な裁判を許しているのではないか?」とか「検察の無謬性神話が冤罪を後戻りできないようにしている」というテーマはなかった。そういう意味でも正月に家族で「普通に」楽しめるいい映画だった。ただしドラマシリーズを観てない人にとってはキャラがたくさん出てきすぎて「この人はなぜ?」ということもあるかもしれない。そういう人は後追いでParaviでドラマシリーズを追いかけるといいと思う。

映画の事件の造形に利用された「名張毒ぶどう酒事件」「和歌山毒物カレー事件」と「狭山事件」は日本の冤罪事件の代表的なものなので、この映画で興味をもった人がいれば、下記の本を参照するといいかもしれない。古い本は「権力VSマイノリティ」的な思想に囚われすぎて、「真実」が逆に見えにくくなっていることもあるので、この辺の本を漁るときにはそこは要注意。

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