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ジャニー喜多川と『論語と算盤』

ヤマト運輸の創業者の小倉さんは「安全第一」とだけは言わなかった。「安全第一、利益は第二」と言った。企業というのはそれだけ短期の利潤動機に自然に引っ張られる。

渋沢栄一の『論語と算盤』では、道徳的な事業とは、それが正しいからやるのではない、道徳的に事業運営するととんでもなく儲かるからそうする、と言っている。

小倉さんも渋沢栄一も、長期で見たら道徳的事業運営がどれだけ利益を生み出すかというプラグマティックなビジョンを持っていた。

ここらへんを誤解してるか、認識さえしてない経営者は危ない。真正のサイコパスであり、犯罪者であるジャニー喜多川はもちろん、それを後ろで支えたメディアの経営者もプラグマティックに長期の利益を考える力がなかった。

短期の利益にしか興味がない経営者には欲がない。それは自身の出世とかジャニー喜多川なら「性欲」に還元される私的な欲求の発露で、「社会の役に立って、長期で大きな利益をあげる」という経営者に及ぶべくもない。

日本テレビの井原さんは1970年代にナベプロが巨大化して、局の企画にも影響力を持ってきたときに、「スター誕生」という番組を立ち上げて、そこで生まれたタレントをナベプロ以外に供給し、ポーターの5フォースのうち「タレントの供給」のナベプロの独占状態を解消した。この本はまさに、その長期戦略をどう考え実行したかの記録。楠木建さんが紹介していて知った本。見つけるたびに購入して、戦略を仕事にする大切な友達にプレゼントしている。

こういうパンクな戦略家が組織のなかから生まれてくるには、日本は集団主義、ゲマインシャフトすぎるのか。「集団論理、類型化の力学がつねに作用しているムラ的共同社会のなかには、創造性を生み出す契機が存在する可能性はほとんどない」というのは荒木博之さんが『日本の行動様式』が言ってたこと。

独裁者が君臨して「その人だけクリエイティブ」で、会社の全員が「奴隷」という組織は日本にはたくさんあるよね。そういう経営者ほど、「社員全員が経営者」とか言ってる。


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