型にはめる

中身を読まないで感想文やレビューを書く方法

僕が直接関わったマンガHONZのインターンの子たちは、最初に中身を1回も読まずにレビューを書く練習をした。もちろん公表はしない。ウィキで簡単にあらすじ読んで、「友情」の物語だとわかったら、リアルに細部まで記憶に残っている自分の「友情」のエピソードを書かせる。

その自分の「友情」のエピソードに比べて、物語はどうあって欲しいかを次に書かせる。最後はそんな「友情」のエピソードを誰と読みたいかが書ければ一丁あがり。実は次にしっかり読んでレビューを書こうとして、この中身を読まないで書いたレビューの質を超えるのはすごく難しい。

なぜかというと、中身を読むと、みんな「あらすじ」を書かなければという考えに囚われるから。あらすじはつまらないし、必要なら引用で補えばいい。レビューに作家が書いたものの劣化コピーはいらない。作家の作品を読んで、自分の心がどう動くのかを書く。その傍証として自分の体験を書く。

例えばこの前、佐渡島君が洞窟に探検に行って「先の見えない洞窟で水に顔をつける恐怖」ということを書いていたけど、あの体験で『うなぎおに』みたいな作品のレビューが書ける。そういう感情の動きと実体験を結びつけたエピソードのストックをたくさん持っている人ほどいいレビューが書ける。

ただ、ほとんどのインターンは十分なストックがあるにもかかわらず、それを僕に質問されるまで思い出さなかったりする。印象的なエピソードのなかで、友達や自分がどんな服を着て、なにを喋り見ていたか、どんな音がしていたか、聞いていくと学生は心象風景を具体的な事実と併せて思い出してくる。

と、ここまで書いていて、僕自身は全くこのやり方で書かない時があるので、インターンの子たちが僕が教えていることを理解してくると、角野さんは「自分のことを書かないんですね」なんて言ってくる。君はそれがわかればもう大丈夫。教えることはない。そしてめでたく卒業していきましたとさ。

実は「読まないで書く練習」は、読書感想文にも使えるので、僕みたいに苦しんでいる小学生にも教えてあげたい。


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