【詩】トーキョーは、あぶくみたいな

多摩川はトーキョーとカワサキの狭間を流れ
ている 見渡せばどうみても続いている景色
なのに 向こう側はトーキョー 夕方五時の
チャイムが混じり合って いつも聞いていた
遊びの終わりを 告げる音色も分からなかっ
た 飲んでみたドクターペッパーを零してし
まった 新鮮さを失った血の色の 粟立った
液体が地面に広がる
大きな意味を持てないトーキョーという言葉
暴力的な明かりに成れなかったのに 神経へ
の刺激をまた求めている 冷たい街を 冷た
すぎるとは思えなくて 冷えたおふとんくら
いにしか思えない 自分に向き合える静謐も
反芻思考に囚われる静寂も しってる
夢がないというのは悩むほどのことではなく
て たんなる事実なのかもしれない 川を越
えた先にあるのは 東京駅じゃなくてトーキ
ョーの駅だから 新幹線で全能感に膨らむ胸
も 小田急線じゃ膨らまない つぶれたドク
ターペッパーの缶には まだ水滴がついてい
る 血が街に吸い込まれた痕は 公園に放置
された野球ボールに付いた土みたいに黒かっ

水平方向から顔に当たる 太陽光線が 肉体
をとろとろとかして 包み込んでしまう そ
のぬじゅぬじゅの感触に たぶん精神が反発
していて 脇腹がキリキリする 筋肉と脳が
一致しないから 動けないでいて 風そよぐ
を待っている そこがわたしのふるさと

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