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KADOLABO 009 Fresh Hop IPA 2023 Amarillo


諸言

ホップ(Humulus lupulus)は、ビールの製造において香りや苦味を付与するために利用される植物の花である。ホップの雌花には、ビールの風味や香りに影響を与える成分であるホップオイルやビタミン類、アルファ酸が含まれており、これらが醸造過程で重要な役割を果たす。また、抗菌作用もあり、ビールの保存に寄与する。
ホップは北半球においては、8月から10月にかけて成熟し、収穫が行われる。近年、収穫されたてのフレッシュなホップを使用したビールの醸造が、アメリカを中心に盛んに行われている。”Fresh Hop Beer”としてスタイルとして認定されたほどである。日本においても地場産のホップを活用したフレッシュホップビールに取り組む醸造所があり、商品が市場に流通している。
フレッシュホップの醸造の方法は多岐に渡るが、元々は収穫したての乾燥させていないホールホップであるWet Hopを使用したFresh Hop Beerが主流だが、収穫したてのホップを凍結させたもの、乾燥させずに凍結させたもの、乾燥させたばかりのホールホップあるいはペレットもフレッシュホップとして認められている。加工方法によりホップのキャラクターは大きく異なる。近年のHazy IPAの台頭からホップ由来のフルーティ・トロピカル・ジューシィーなキャラクターが望まれるところもあり、Wet Hopよりも一定のプロセスを経たFresh Hop を使用したビールを多く見かけるようになった。
国内各所でホップ栽培に取り組むところが増え、日本でもFresh Hop Beerの文化が盛り上がりつつある。ISEKADOでもホップ栽培に取り組みたいという議題は定期的に立ち上がってくるものの、日本のホップ栽培は、気候、栽培規模、設備、扱える品種においてアメリカに敵わない部分が多々あり、叶わずにいる。
そんな中幸運にも、アメリカから乾燥したばかりのフレッシュなホールホップを得る機会を得た。そこでフレッシュホップビールにチャレンジした。フレッシュホップビールの醸造にあたり、その経験・知見が自社にほとんどなかったため、フレッシュホップをどのように使用すべきか、というレシピ設計のため、9月中旬に渡米しフレッシュホップの文化を勉強した。ワシントン州・オレゴン州のホップファームの訪問およびフレッシュホップビールを提供をしている醸造場の訪問のツアーを行った。
中でも一番印象的だったのはBreakSide BreweryのFresh Hopビールだった。BrewmasterのBen Edmundsさんから製法について伺ったところ、これまでのフレッシュホップビール醸造のアプローチとは全く異なり驚いた。それは、Wet Hopを収穫してから3h以内にブルワリーに持ち帰り、液体窒素を使用して凍結粉砕してから、仕上がったビールに漬け込み、香りづけをするという方法だった。それまで仕込み工程で投入する例を多く見てきたので、仕上がったビールに香りづけをするというアプローチが新鮮だったし、ビールそのものも、ホップ農家を訪問した時に生ホップを手のひらで擦ってから嗅いだ時の香りに非常に近い、青々しくもホップのフルーティなオイル成分も感じる仕上がりで、これぞFresh Hop Beerだと思わされた。
その知見を生かして、今回の009 Fresh Hop IPA 2023 Amarilloを醸造した。凍結粉砕は設備面から困難だったので、冷凍庫で凍結させたホップを手でちぎったものを仕上がったビールに漬け込んで完成させた。Cold Sideでのホップはフレッシュホップのみ。ペレットホップに頼らず、アメリカのフレッシュホップビールを目指し、ビールを仕上げた。

方法

18プラートの麦汁をハイブリッド酵母Nova Lagerで10日間発酵させた。コールドクラッシュし、酵母を除去してから、冷温分解(冷凍庫で凍結させてから手でほぐした) Amarilloの乾燥フレッシュホールホップを15g/Lの比率で投入し、2日間漬け込み、瓶詰めした。

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