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駄菓子屋の婆ちゃん

学校が終わると
お小遣い10円玉2枚を手のひらに握り締め
いつもの駄菓子屋に……
五円で
20粒入ってる甘納豆と
残りの五円は
ふあふあ煎餅の間に水飴を塗ってもらい
試験管のような筒に入ってる
ゼリーを2本
メロン味と
スイカ味
それを買うのが2日に一回の楽しみ
夏の暑い日には
氷をくれたり
冬の寒い日に
指先が見えるような手袋をしていった時には
貸してごらん……と言って
縫ってくれたり
いつも笑顔で
いらっしゃい~と
迎えてくれる
婆ちゃんがいる
駄菓子屋の風景……
そこには
子供ながらに
夢があり
拠り所でもあった

(以上は、現在70歳である知人が綴った子どもの頃の駄菓子屋の風景作品。

代筆:矢嶋花壇です。)

拝啓 あんこぼーろさんの企画に参加させていただきました。

≪作者より 作品のこぼれ話≫

作品に収めきれなかったたくさんの思い出があり、今の駄菓子屋のアイテムを見ると、その一つ一つに色んな思い出が浮かんで来ますよ。

五円で買える甘納豆は、袋の中に当たりが入っていて、当たると景品が貰えるの。

あとは店番が婆さん1人だから、3~4人で行って、金持ちの仲間がまず品物を買ってるときに、他の奴は他の物をポケットに入れて帰ってくる毎日でした。駄菓子屋にはたくさんの思い出がありましたよ。良いことも、悪いことも。

いつも万引きみたいなこともしたけど、たまたまそこの婆さんがお店で倒れて、いつもの悪い仲間と近くの交番まで飛んでいってお巡りさんを呼んできて、婆さんを病院まで連れて行ってもらったこともありましたよ。

あの頃の駄菓子屋は、鍵っ子でもあった私たちにとっては、家では食べられないものが何でもある、優しい婆さんが腹をすかしてお金のない私たちに、楽しい話をしてくれたり、おにぎりを出して食べさせてくれたり、夢のようなお店で、天国のようで、閉店まで家の中に上がったり、そこに居ればいつも幸せがある……そんな思い出も……

≪花壇より≫

かなり貴重でインパクトのある証言だったので、こちらで紹介させていただきました。駄菓子屋の婆ちゃんにお世話になり、あったかい居場所をもらっているのに、一方で万引きもする、でも倒れたときにはみんなでどうにか助ける、という、子どもの持つ残酷なまでの多面性があざやかに現れる、あの頃の駄菓子屋。きれいごとだけじゃすまされない、本当、社会の縮図ですね。ああ、駄菓子屋。
駄菓子屋を知らない花壇でした。

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