日本3大タブロイド紙、『日刊ゲンダイ』・『東京スポーツ』・『夕刊フジ』の違いは何なのか。
初投稿になります。樺中社のマーガリン丸です。
日本では一般紙(例:発行部数順に、読売新聞・朝日新聞・中日新聞〈東京新聞〉・毎日新聞・日本経済新聞等)が主流派ですが、海外では英国(イギリス、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)のようにタブロイド紙が主流派であったりとか、廃刊となった香港(中華人民共和国特別行政区)の『蘋果日報』のように一般紙でありながらタブロイド紙のような面を持つ新聞があります。
タブロイド紙というと、大体はコンビニや駅前での販売が主流となっています。
これらの新聞は主に芸能やゴシップ、スポーツといった内容を扱うという点では、海外でも共通しています。なので、週刊紙とも方向性は同じだと言えます。
では、本題に入ります。
日刊ゲンダイ
最初(1番)に解説するのは、『日刊ゲンダイ』です。
日刊ゲンダイは、日本最大のタブロイド紙であり、発行部数は公称1,457,550(参照:日刊ゲンダイ 中部版|中部経済新聞 愛知・岐阜・三重・静岡の経済情報 (chukei-news.co.jp))。
東京・大阪・名古屋・札幌の4大都市を中心とする地域(関東・近畿・中部・北海道)で発行される、事実上のタブロイド全国紙である。なお、過去には北海道においては『日刊サッポロ』の題号(※1)で発行していたが、統合された。
大手出版社である『講談社(※2)』を母体とし、題号も講談社の発行する情報誌『週刊現代』に由来する。但し、講談社の関連会社といえど、講談社本体との繋がりは余り深くなく編集方針も独立しているようだ。
内容はタブロイド紙・スポーツ紙に共通の芸能・噂・競馬等を扱っている。
地上波民放テレビのワイドショーで記事が取り上げられることも多い。
論調は革新系であり、政治的立場は「左派」に類するが、かつては左派とも右派ともいえない混在勢力(但し、主流派は常に中道左派であり続けた)である民主党、特に小沢一郎の応援団と化していた。
小沢一郎が民主党から離れた後は、国民の生活が第一→日本未来の党→生活の党→生活の党山本太郎となかまたち→自由党を支持することとなったが、山本太郎が旧国民民主党に加わらず『れいわ新選組』を立ち上げたことから、現在は小沢一郎よりも山本太郎・れいわ新選組に好意的な論調となっている。
その為、左派ポピュリズム・反知性主義の傾向が強いといえる。
タブロイド紙ということもあって、政治的には特に理念に反するような個人・団体には攻撃的な論調というのは、他のタブロイド紙にも共通している。
革新・左派のニュースメディアを読みたいなら、日刊ゲンダイは冗談・風刺混じりで、本格的な革新リベラル媒体を求めるなら、一般紙の『中日新聞(系列)』を強く推奨する。
実は、日本新聞協会には非加盟の為、法的には新聞ではなく『雑誌』扱いされている。
なぜ日本新聞協会加盟を拒否されたかというと、親会社が週刊誌を発行する出版大手・講談社であることが関係しているようだ。
発行元:株式会社日刊現代
ホームページ:https://www.nikkan-gendai.com/
東京スポーツ
2番目に解説するのは、『東京スポーツ(東スポ)』です。
大手新聞社の系列に属さない、独立系のスポーツ紙となっていることもあって、スポーツというよりもタブロイド紙に近い編成になっている。
タブロイド紙としては日刊ゲンダイに次いで2番目に多い発行部数であり、発行部数は139,1,000(2019年)である。
「日付以外は全て誤報」という一種の蔑称(?)があり、他のスポーツ紙と比べるとネタ目的記事や、ばかっげた記事が多数派を占める。
『男セン』というページもあり、他のスポーツ紙(※3)が成人向けのコーナーを廃止するなか、東京スポーツは相変わらず性風俗関係のコーナーを継続している。
なお、競馬関係に関しては一定の評価を受けている。
関東では『東京スポーツ』の題号で発行するが、関西では『大阪スポーツ』、東海では『中京スポーツ』、九州では『九州スポーツ』に題号を変えた上で発行している。この点は、一般紙の中日新聞系列と似るが、『中日スポーツ(東京中日スポーツ)』とは、無関係である(混同に注意!)。
日刊ゲンダイと異なる点は、日刊ゲンダイが北海道で展開しているのに対して、こちらは九州で展開しているということになる。なお、両紙とも3大都市圏での展開という点は共通している。
なぜ、このような娯楽性が極めて強く、信頼性に疑問があるタブロイド紙が「スポーツ紙」として経営を続けていることに疑問を抱くが、これには歴史的な背景もある。
元をたどれば、戦前に東京都の地方紙(ブロック紙?)の1つとして展開していた『やまと新聞』である。
この新聞は、今でいうタブロイド紙の前身に当たる「小新聞」という分類であり、レイアウトこそ一般紙(当時は「大新聞」)と同じだが、内容は大衆向けの娯楽・扇情性の高い内容を主に取り扱っていた。
この新聞は後に右翼団体が経営に参加し、かの有名な児玉誉士夫(※4)が経営者だったこともある。
戦後は新興夕刊紙として発足、『新夕刊』・『日本夕刊新聞』・『新夕刊』・『国民タイムズ』を経て1960年には『夕刊東京スポーツ』となり、1962年には『東京スポーツ』として現在に至る。
なお、『やまと新聞』という名前を聞いて、「聞いたことある」と思った者もいるはず。
これは戦前に『帝都日日新聞』として創刊され、戦後に上記の新聞を意識して、その題号に変えたのがルーツである。
帝都日日新聞は、野依秀市という右翼活動家の活動歴があり、戦後は自民党の代議士を務めた人物によって創られた。
野依秀市亡き後、児玉誉士夫が経営に参画し、1969年には『やまと新聞』に解題した。
2013年には、紙媒体の発行を停止、インターネットに完全移行している。
このような経緯からやまと新聞が極右性向なのは公然の事実だが、現在では、在特会のようなヘイト団体を支持するヘイトスピーチ・排外主義・ジンゴイズム路線へと舵を切っている。
と、以上のように東京スポーツは歴史的経緯から特殊な新聞といえる。
発行元:東京スポーツ新聞社
ホームページ:https://www.tokyo-sports.co.jp/
夕刊フジ
3番目に解説するのは、『夕刊フジ』です。
発行部数はホームメイトリサーチ(【メディアポ】発行時期による新聞の分類「夕刊紙」 (homemate-research-newspaper-office.com))によれば2013年時点で106万。日刊ゲンダイや東京スポーツよりは発行部数が低いが、即売の為知名度も高い新聞である。
中堅新聞社(※5)である産業経済新聞社によって発行され、『産経新聞』・『サンケイスポーツ』・『フジサンケイビジネスアイ(紙版は休刊、電子版完全移行の前触れか?)』・『競馬エイト』等とは僚紙の関係にある。題号は、産経新聞と同じフジサンケイグループのフジテレビジョンに由来する。
夕刊フジが、日刊ゲンダイや東スポと異なる点は、ゲンダイは3大都市圏+北海道、東スポが(系列紙含めて)3大都市圏+九州で展開しているのに対し、こちらは近畿と関東でのみの取り扱いとなっているということだ。なお、公式は建前はそれ以外の地域でも発行しているというが、実態には特殊な方法で配布しているだけである。北海道における駅売では、「(東京本社版を)1日遅れ」で展開している(※6)。
かつては「オレンジ色のニクい奴」という売り文句だったが、ライバル紙である日刊ゲンダイも橙色を基調としている。
政治的傾向は発行元の産業経済新聞社が発行する僚紙の産経新聞同様、右派〜急進右翼に属しているが、タブロイド紙ということもあってより内容が低俗となっている。
基本的には自由民主党と日本維新の会を支持し、革新・リベラル系の野党には攻撃的な記事が多数派を占める。
中国・韓国に対するヘイトまがいの記事や、差別的とみられるような内容の記事が、僚紙の産経新聞よりも多くなっている。
陰謀論に根ざした記事や、極右系の論客の寄稿も多い。Qアノン(※7)信者でもある有本香や、拓殖大学(※8)で客員教授を務める石平太郎の寄稿もある。
一方、政治以外にも女子アナやバラエティーの話題なども結構多く、基本的には娯楽中心のタブロイド紙である。
ゲンダイ・東スポと同様、下ネタに関する記事も多い。
インターネット掲示板の、『2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)』を出典とした記事を書いたこともある。
タブロイド紙にありがちな問題ではあるが、特に夕刊フジは誤報も多く、特にこの新聞社の持つ政治思想から明らかに名誉毀損・ヘイトスピーチに与するような記事を連発することから、日本のタブロイド紙の中では最も酷い部類といえる。
発行元:株式会社産業経済新聞社
ホームページ:https://www.zakzak.co.jp/
番外編、ここから先は特殊なタブロイド紙を紹介する。
赤旗日曜版
4番目に解説するのが、赤旗日曜版となります。
週間発行の新聞紙としては、最大の発行部数としている。
『赤旗日曜版』とは、日本共産党の機関紙である『しんぶん赤旗』の僚紙で、日曜日、一週間に1回発行している。
しんぶん赤旗と同じく、日本共産党の活動や主張といったものが書かれている。
芸能人が記事に登場することもあるが、大抵は政治に関係がない者が多い。
大企業からの広告収入を受け取らず、大手メディアとも路線が異なる共産党ならではスクープ記事も多く、最近では「桜を見る会」に関する報道が高い評価を受けた(ちなみに筆者は日本共産党の支持者ではありません)。
発行元:日本共産党中央委員会
ホームページ:https://www.jcp.or.jp/akahata/web_weekly/(日本共産党ホームページ内)
TOKYO HEADLINE
最後(5番目)に解説するのは、東京都区部内で発行される、「フリーペーパー」という位置付けの『TOKYO HEADLINE(東京ヘッドライン)』です。
2002年に設立された、比較的国内の紙新聞の中でも新興に位置づけられる。
『HEADLINE TODAY』として創刊した初期は日刊紙だったが、後に週刊、隔週、月刊に移行している。
主に大衆文化文化を扱う若者向けの紙媒体である。
著名人の寄稿もある。
なお、運営会社の大株主には『電通』がいる。
発行元:株式会社ヘッドライン
ホームページ:TOKYO HEADLINE|東京発のニュースペーパーなら東京ヘッドライン (websozai.jp)
以上で、タブロイド紙の解説は終えます。
大手3紙と称される『日刊ゲンダイ』・『東京スポーツ』・『夕刊フジ』については、夕刊紙であることや、タブロイド紙のあるべきスタイルを保っているという点は共通しています。
今回は、3紙に加えて番外編として『赤旗日曜版』や『TOKYO HEADLINE』も加えました。
筆者自身は、電子においては長文を書くことが得意(?)だと自認している身ではあるが、初投稿であることや、集中しないで寄稿を行ったので、投稿には7時間程度かかった身ではある。
では、次回も楽しみに!
脚注
※1 - 新聞のタイトルを意味する。新聞社によっては題号の異なる新聞を発行している場合も多く、例えば中日新聞社は一般紙は中日新聞、東京新聞、北陸中日新聞、日刊県民福井の4つと、スポーツ紙は中日スポーツと東京中日スポーツの2つを発行している。(大阪や北海道にも展開すべきでは…)
※2 - 講談社は、毎日新聞グループホールディングス(毎日新聞社)と提携関係にあり、かつて毎日新聞社の子会社だった(現在も業務提携関係は継続し、報道面でも毎日新聞と協力している)TBSテレビ(TBSホールディングス)、毎日放送(MBSメディアホールディングス)との関係が深い。講談社系のレコード会社、『キングレコード』は、TBSと提携し、『日音』と共にTBS系のレコード会社として機能し、読売グループ・日本テレビ系の『バップ(VAP)』、フジサンケイグループの『ポニーキャニオン』と競合関係にある。
※3 - 日刊スポーツ(朝日新聞系)は、成人向けコーナーを扱ったことがない。
※4 - 福島県出身の右翼団体活動家で暴力団関係者。岸信介元首相と深い交友関係があった。三男にTBSサービス(現:TBSグロウディア)社長を務めた児玉守弘がいるという。詳しくはWikipedia等を参照。
※5 - 大手メディア・コングロマリットであるフジサンケイグループの所属だが、発行する新聞の発行部数は低く、会社規模としても北海道新聞社や西日本新聞社と大きな差はなく、明らかに中堅である。
※6 - 産経新聞を北海道で購読しようとする場合も、東京本社版を空輸で1日遅れということになる。なお、空輸であれば発行地域外の新聞を購読することも可能であり、産経新聞と提携関係にある沖縄県の郷土紙・八重山日報が「首都圏でも読める」を売り文句にしているのはその為である(なぜ産経新聞はここのような複雑な方法で「自称全国紙」を保とうとするのか…)。
※7 - 米国のオルタナ右翼発の陰謀論。トランプ前大統領を「悪魔崇拝や小児性愛者と戦う救世主」としていた。この陰謀論には現在の5ちゃんねる運営者であり、英語圏の掲示板である8chanを運営するワトキンス親子がかかわっているとされる。この陰謀論は日本でもネット右翼(ネトウヨ)の他、基本的には左派であるはずの『れいわ新選組』の支持者にも信奉者が見られ、日本会議所属の国会議員でもある松原仁は自身のYouTubeチャンネルにおいて有本香と深く関わっている。
※8 - 東京都文京区の私立大学。戦前は国立。教員には、日本会議や新しい歴史教科書をつくる会の関係者がめっぽう多く、総長の森本敏(野田内閣で防衛大臣を歴任)も日本会議である。