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人の気持ちがわからないのに、「どうしてそんなに人の気持ちがわかるんですか?」と言われる僕がやっていること

正直なところ、僕は人の気持ちがわかりません。

しかし、不思議なことに、「どうしてそんなに人の気持ちがわかるんですか?」と言われることがあります。

一体なぜ、僕は人の気持ちを理解しているように見えるのでしょうか?

最近、この点について同僚と話をする機会がありました。僕の認識と、彼の認識を合わせて議論を重ねた結果、1つの仮説にたどり着きました。その仮説とは、僕が普段からやっている「ある3つのこと」が、人の気持ちがわかる人に見せているのではないか?というものです。

今日は、その3つについて書きます。誰の役に立つか知らんけど。


1つ目:普段の雑談から、「人の気持ち」をテーマにしがち

これは、毎回シリアスな話をしているという意味ではありません。本当にくだらない雑談でも、「人の気持ち」を切り口にして会話することが多いという意味です。

ちなみに無意識にやっていることです。だから、単純に僕の興味の話だと思ってください。

5W1Hというメソッドはほとんど全員が聞いたことがあると思います。この5W1Hにしても、人によって興味があるポイントは違いますし、ほとんどの人は特定の項目に偏っています。たとえば、「いつ?」ばっかり聞く人もいれば「なぜ?」ばっかり聞く人もいます。

僕の場合、5W1Hに分類することは難しいのですが、たいてい「どんな気持ち?」を切り口に話をします。たとえば、上司がある部下を、遅刻が多いことでコテンパンにキレ散らかしたという噂が入ってきたとします。同僚とランチでもとりながら、この件について何気なく会話するとき、僕の会話の中でテーマにするのは、遅刻した人の気持ちと叱った上司の気持ちです。僕は、人の気持ちを想像するのが好きだし、興味があります。だから、

「あいつ遅刻したの5回目らしいよ。そりゃ上司もキレるよな。」

のように、気持ちの部分があっさりと処理されてしまうとモヤモヤするのです。だから僕はこのフリに対して、

「5回目か~。朝起きて時計見た瞬間どんな気持ちやったんかな?もう慣れてもうて逆に余裕やったんか、今回こそマジでヤバいって冷や汗かいてたんか、どっちやと思う?」

とか

「でも今までの遅刻でも、上司はそれなりに注意してたんやろ?5回目でめちゃくちゃ叱るってどんなふうに気持ちを持って行ったんかな?遅刻とかって、発覚と本人登場の間にめっちゃ時間空くから、突発的な怒りってとっくに鎮まってるやん?それを、本人が来てからあえて強く怒るって、なかなか難しいと思わへん?」

という風に会話を展開することが多いです。会話を何気ないキャッチボールと捉えている人にとっては非常にめんどくさい相手ですね。

しかし、このように常に「気持ちにフォーカスしてしまう」という僕の普段の会話スタイルが、「この人は人の気持ちがわかる」という虚像を生み出しているのかもしれません。

2つ目:部下を指導するとき、気持ちをテーマにすることが多い

これも無意識でやっていることです。

説明が難しいので、部下が自分のミスを報告しに来たときの、実際の会話を書いてみます。

「すみません。●●の処理をしているときに、間違ってミスしてしまいました。」

「そうか。今回のミスは、気づいた瞬間どんな気持ちやった?」

「うわー、やっちゃった.。。って思いました。」

「ドキッとした?」

「しました。」

「うんうん。気づいた瞬間震えるよな。他になんか頭をよぎったことある?」

「審査に出してくれた人にも、申し訳ないって思いました。」

「ほー。それは……え~と……」

「今回のミスのせいで、エラーになって出し直しになっちゃうので。二度手間になっちゃうなぁって。もしかしたらめんどくさくなって申し込むのやめちゃうかもしれないし。」

「ホンマやな。そうなってしまう可能性もゼロじゃないわな。他になんか感じたことある?」

「他には……ないと思います。」

「うん。でもそうやってお客さんに申し訳ないって感じたってことは、今かなり気持ちがどんよりしてるんちゃうん?」

「めっちゃ落ち込んでます。」

「そうかぁ。そうやんなぁ。今日あと3時間あるけど、気持ち切り替えれそう?」

「はい。頑張ります。」

「うん。ちなみに、気持ちの切り替えとかは得意?」

「いや~、苦手ですね。。」

「うんうん。実はね、たぶんそうなんじゃないかと思って。」

「わかりますか?」

「うん。わかるっていうか、5年くらい引きずるタイプですって顔に書いてあるで。」

「いや、5年は大丈夫です(笑)」

「あ、そうなん?ほな大丈夫やな。」

「はい。大丈夫です。」

「ほな、また気持ち切り替えてよろしく頼みますね。」

こんな感じで、ひとつひとつ気持ちを確かめながら、きっとこうやろうなって決めつけないように注意しています。

僕が気持ちの確認をするのは、気の持ちようが仕事をするうえで非常に大切だと考えているからです。

気持ちの問題は、最終的には本人の課題です。「社会人なんだから、自分のご機嫌くらい自分で取れるようになりなさい」というアドバイスもありますよね。これはまさにその通りだと思います。周りが自分を宝物のように扱ってくれないと拗ねちゃうような大人は、ハッキリ言って死ぬほどめんどくさいです。

しかし、どんよりと落ち込んだ気持ちをゼロまで回復させるのがなかなか難しいのも事実。これを一瞬でできる人は、特殊技能を持っていると誇っていいと思います。

だから、最終的には本人の課題ではあるものの、僕はなるべくゼロに戻しやすくなるような声かけはしてあげたいなと思っています。

3つ目:ウォンツ、目的を理解する

これは、意識しながらやっていることです。

まず言葉について説明しておきましょう。
ウォンツの対義語であるニーズと一緒に理解したほうがわかりやすいので、まずはニーズの説明をします。

ニーズというのは「必要なもの」。洗剤が切れたら買いに行くのは、ニーズがあるからです。決して欲しいわけではありません。必要だから買うのです。

一方で、ウォンツというのは「欲しいもの」。2万円のスニーカーなんて必要ありません。5000円も出せば、十分丈夫な靴が買えるでしょう。でも5000円の靴は欲しくないんです。欲しいのは、2万円のナイキのスニーカーなんです。これがウォンツです。

目的は「どうしたいか」です。ウォンツに似ていますがちょっと違います。ウォンツはナイキのスニーカーで、目的は自分らしさを表現することです。
※あくまで一例です。人によりけりです。

さて、このウォンツと目的を把握することが、コミュニケーションにおいては非常に重要です。特に、目的の把握は最重要です。

人は何かの目的に向かって行動しています。目的がなさそうな人も、「なるべく何もせずに過ごしたい。」という目的に向かって、行動の優先順位を決定しています。

そういう意味で、僕は言葉を言葉通りに受け取ることは多くありません。何かの目的を達成するために発せられたんだなと考えることが圧倒的に多いです。

たとえば、突然会社の悪口を言うようになった人がいるとします。その悪口の内容が「研修がわかりづらい」「休憩が短い」だったとしても、いきなり「研修をわかりやすくしてほしいんだな」「休憩時間を長くしてほしいんだな」とは決めつけません。本当の目的は何だろうな?という点も一緒に考えます。

たとえば、辞めるための伏線として、いかにこの会社がダメかということを事前に喚き散らしている可能性もあります。

ただし、目的を把握するのには注意点もあります。それは、行動から一意に目的は決まらないということです。これはどういうことかというと、

「突然会社の悪口を言い始めた人は、必ず、辞めるという目的を持っている」

とは限らないということです。どんな目的を持っているかは人によって違います。いえ、目的達成のためにどんな行動をとるかは人によって違うと言った方がいいでしょう。

たとえば、会社を辞めるときに、上司から「突然辞めると言われても困る!」と言われることを想定している人は、事前に会社の悪口を言いまくることで「突然?僕は前からこの会社のダメな点を指摘していましたが、改善してくれませんでしたよね?」という反論を用意しているのです。

逆に、辞める前にフォローが入ることを嫌う人は、ひっそりと影を潜めて突然辞めるという戦略を取ります。悪口を言うと、「どうした?最近気に入らないことがあるみたいだけど、どんなところを改善すればいいかな?」と上司からフォローが入る可能性があります。ここで、「悪いところなんてありません。」と答えると辞めにくくなるし、悪いところを指摘して本当に改善されてしまうと、これもまた辞めにくくなってしまいます。

したがって、目的の把握は簡単ではありません。目的については、複数の候補に絞り込むのが精いっぱいでしょう。

ちなみに、上にあげたような「会社を辞める」のような仕事に関係するネガティブな話の場合は、直接質問して反応を見ます。

「今言ってくれたような会社のダメな点が改善されない場合、辞めることも考えていますか?」

「改善された場合は、ここで頑張ろうと思っていますか?それとも、改善されたとしても違う会社に移りたいと思っていますか?」

このときの相手の答えも、一意に目的を確定することはありません。相手が駆け引き好きの場合は、交渉から違う何かを引き出そうとしている可能性もあります。

このように、目的を特定するのは難しい作業になるのですが、これを常に考えているという点が、もしかすると僕を「人の気持ちがわかる人」に見せているのかもしれません。

まとめ

このように、僕は人の気持ちがわかっているわけではありません。

しかし、人の気持ちにはめちゃくちゃ興味があるし、人間関係を築くうえで大切な要素だと思っています。

特に、会社で上司と部下のような関係だと、気持ちは無視されがちです。効率の邪魔になると考えられることが多いからです。ホントはそんなことないんですけどね。

僕は、人の感情が生産性の邪魔になると考えている人で、働きやすい組織を作れている人を見たことがありません。こういう上司は過去に2人あたったことがありますが、とてもギスギスしていて、部下はみな「いつか上司が異動になるまでジッと耐える」という戦略を取っていました。給料が安い会社だったら離職率が上がっていたと思いますが、そこは辞めるにはもったいないくらい給料が高い会社だったので、みんなとにかく耐えていました。

ちなみに、その上司もまた、自分の上司が2年後に定年退職することだけが唯一の希望とでもいうように、理不尽な命令に耐え続けていました。なんなんですかね、この負の連鎖。

みんなが「仕事なんだから仕方ない」と感情を押し殺して効率的に働いてくれれば生産性が上がると考えている人は、ありもしない幻想に現実を重ねようと頑張っているので、残念ながら結果が出ません。出ても1回きりです。

では、感情に配慮すればすべてうまくいくかというと、それも違います。感情に配慮することは難しいし、どんなに頑張ってもすべてうまくいくことなんてありません。

しかし、ひとつだけ、僕がチームをマネジメントするうえで効果があると感じていることがあります。

それは、「お互いの感情について丁寧に対話する」というものです。ポイントは「お互いの」という部分です。

コミュニケーション術の本を読むと「相手を理解する」「傾聴する」みたいなことばかり出てきますが、僕は、それと同じくらい「自分の感情について語る」「自分がどう感じているかを相手に理解してもらう」が大切だと感じています。というのは、上司と部下の場合、ほとんどのケースで部下は上司の感情を誤解しているからです。

これについては、またいつか詳しく書こうと思います。

どうぞよしなに。

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