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時々頁をひらく。今、足りないものはそこにある。

良質なコンテンツがあれば、どんなパッケージに載せても伝わると思っていた。


池澤夏樹さんの文章。

エルンスト・ハースの写真。

池澤さんの紹介は必要ないだろう。

エルンスト・ハースは、1921年にウィーンで生まれ、医学学校で学んでいたが、ロバート・キャパに認められニューヨークへ渡った。数々の賞を受けているが、本書の写真は本当に美しくて、賞自体がその美しさを理解できていただろうか、と疑うほどだ。1986年、ニューヨークで亡くなっている。

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和光のPR誌「チャイム銀座」1990年の4月号から1992年の3月号に掲載されていたフォト・ストーリーだ。

愛する人の元を離れ、世界中を旅する男が送った手紙と写真。

”ああ、君に見せたい!”そんな風景と、”本当は、いま直ぐにでも君の元へ帰りたいんだ!”という恋情があわく、あわく綴られている。

「洋酒天国」、引き継いだ「サントリー・クォータリー」もそうだった。

編集長は、開高健。そして山口瞳…

いっぱしの大人とは、本物の男とは、酒とはこう飲むものだをと教わった。

この国は永遠に成長し続けると信じていたあの頃、企業が企画し、育てた良質な文化がちゃんと在った。

しかし、いつの間にか消えていった。そんな目には見えない広告効果、販売促進に使う金はもう無いのだと。

そして、ホームページやメルマガがその役を肩代わりしている。

良質なコンテンツさえあれば、デジタルでも伝わるものは伝わると思っていた。


すこし小さい版型。

手触りの良い紙の表紙をめくると、なんともやさしい書体とQ数。


ー「最初の手紙」

とうとう旅に出てしまった。

きみのもとを離れて辛いという気持ちと、はじめた以上はきちんと最後までやりとげて帰ろうという気持ち、

その間ずっと一人で待っているきみへの思い、先の不安、いろいろな気持ちが心の中で勝手にあばれまわっている。

* * * 

ぼくは、時々、『きみが住む星』を手に取り、気ままに頁を開いてみる。

そして、いま、ぼくが必要としているものを思い出す。

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