遂に読み終わってしまった。
図書館で借りてきたフィリップ・クローデルの『リンさんの小さな子』
祖国を、家族を、そして明日をも失った難民のお爺さんと、長年連れ添ってきた奥さんを亡くした宗主国のごついおじさん。
ふたりは、回転木馬の見える公園のベンチで隣り合わせになった。
何も、誰も信じられないでいるリンさん、この中年の大男バルクさんにだけは心をひらく。
言葉は通じない。
おじさんはお爺さんの名前を”タオ・ライさん”だと思っている。
お爺さんはおじさんに会うたびに”ボンジュール”と繰り返す。
それでも二人は会うたびに、ちゃんと心地よくお話を続け、リンさんが大事に抱えている小さな女の子を可愛がる。
言葉がなんだ!そんなもの聞きたくもない!
そう思える日もある。
リンさんとバルクさんは魂と魂で通じ合う。
難民収容所から老人を収容する病院のような施設に移されるリンさん。
バルクさんに会いたいリンさん。
リンさん会いたくて、毎日のようにあのベンチへ、バルクさんの奥さんが長年係をしていたあの回転木馬が見えるベンチに座って待っている。
リンさん、小さな子をしっかりおぶって脱走。
街をぐるぐる迷い歩く。
物乞いに間違われながら病院のスリッパで必死で歩く。
バルクさんに会いたい。
読み終わってしまった。
ハッピーエンドと言っても良いかも知れない。
フィリップ・クローデルさんに、良い終わり方をしてくれたと礼を言っておこう。
日本橋丸善に取り置きしてもらっていた呉明益さんの『自転車泥棒』を引き取りにいく途中のカフェで読み終わってしまった。
『自転車泥棒』は図書館で借りて二度読んだ。
そばに置いておきたくて取り置きをお願いした。
レジの店員さんに『リンさんの小さな子』を購入したいと言ってみた。
店員さんは、グループ店を含めて在庫をチェックし、取次の在庫を確認し、
最後に版元「みすず書房」の営業部に電話してくれた。
済まなそうに「絶版だそうで、再版の予定も無いそうです」と。
本を受け取り帰宅しようと思ったが、ぼくの乗った地下鉄は、この状況下でもビールが飲めるブルワリーのある街に着いていた。
あとは、ネット通販なのかなぁ...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?