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異語り 016 紙魚

コトガタリ 016 シミ

懐かしい風景の夢を見た。
小学校の頃家族旅行で行った、宮崎県の都井岬。
なだらかな草原と青い海、小柄な馬がのんびりと草を食んだり寝転んだりしている

ただ思い出と違い風景には白い影が立っていた。


夢は毎日見るわけではなかったが、影は見るたびに近づいてきた

緑と青の景色の中、大きくなっていく白い影


何度目かの夢見の後、目覚めと同時に全身の毛が弥立つ。


次に見る時あの影は目の前に来る

確証はないがそう感じた。


怖い。
でも夢を見ないようにする術も、いつ夢を見るかも分からない。

眠るのが怖い。でも睡魔はやってくる。


ある日、押し入れで懐かしいアルバムを見つけた。

そっとページをめくるとパラパラっと何かがこぼれ落ち、サーと足下を走っていく。どうやらアルバムに紙魚がわいていたらしい。



ちょうど開いたページに色あせた風景写真があった。


緑の草原に青い海と馬
写真の右隅に紙魚にかじられたらしい白い筋ができていた。

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