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オーバーザサン 堀井美香さんの朗読会に行ってきました ~まさかのチケットトラブルからのプロの朗読のすごさに圧倒される 三浦綾子『母』~

こんにちは。カブトムシの母です。

7月20日、東京文化会館で行われた堀井美香さんの「ピアノで綴る音楽朗読 三浦綾子著『母』」に行ってきました。

少し早めに互助会友達と待ち合わせをし、夕飯を済ませてから余裕をもって到着。

QUOカードとハンカチの入ったノベルティ?をもらって会場に入りました。

「OVER THE SUN」からもお花

席は後ろから2番目でしたが小ホールだったので、舞台は思ったより近く「ステキなホールだね」などと話していると、友人が後ろから「あの、ここって〇列の△席じゃないですか」と声をかけられました。「はい」と見ると、友人とその方の席の番号が一緒⁉

ダブルブッキング⁉


「え、これってダブルブッキング?」「ちょっと聞いてきますね」とその方は受付の方に行かれました。

見ると、そこかしこで、チケットを見合わせながら戸惑っている人達がいました。

今回の朗読会は昼の部、夜の部があり(昼の部は『泥流地帯』)、両方見たい人のために通しチケットが発券されていました。

どうやら、夜の部だけのチケットと、通しチケットがダブルで売られてしまったよう。

開演は7時からでしたが、始まる気配はありません。
会場の外は席がないお客さんであふれていました。

しばらくすると、会場の外から「うわー」という歓声が聞こえてきました。
どうやら、美香さんが登場したよう。
笑い声や拍手が聞こえてきたので、トラブル解決の何か提案がされた様子。

その後、美香さんは会場にも表れ、今回、ダブルブッキングになってしまったことへのお詫び。
そして、今回は、通しチケットの人は夜の部の人に席を譲ってほしいということ、返金を必ずすることと今年中にもう一度、埋め合わせの講演が行われることが告げられました。

美香さんが悪いわけではないのに、とんだ災難!

そして、私の隣にいて、「何だか大変そうねえ」と傍観していたマダムは通しのチケットを持っており、「あら、私だわ」と言って、席を立って静かに去って行きました。

通しのチケットを持っていた人も、昼公演の後、かなり長い時間、時間をつぶしたと思われるのでとんだ災難。
中には、この日のために遠方から来た人もいると思うので、がっかりされたと思います。

それでも、頭を下げる美香さんにみんなで温かい拍手。
どんな時にも優しいオーバーザサンの互助会員(観客の8割以上は恐らく互助会員)。

怒った人はいたかもしれないけれど、少なくともこういう場面で見かける「怒鳴るオジサン」はいませんでした。

プロの朗読に驚く


そんなトラブルがあり、30分遅れで公演が始まりました。

演目は三浦綾子の『母』

実は、今回の朗読会は友人に誘われて、チケットも取ってもらって行ったので詳しい内容は全然知りませんでした。

タイトル『母』だから、なんかお母さんがテーマなんだな。私も母だからきっと楽しめるだろうな~、というくらいの感覚。

内容よりも、オーバーザサン互助会員として、美香さんが力を入れている朗読が聞いてみたかったのです。

美香さんが、あのキレイな高い声で、プロのアナウンサーらしく感情を込めて本を朗読するんだろうと思っていました。

ところが!

わだしはね、再来年は数えて九十になるんですよ。こったら年寄りが、こうしてみんなに、大事に大事にしてもらってねえ。もったいない話です。これもみんな、多喜二があったら死に方ばしたからかも知れないねえ

『母』三浦綾子

と始まったストーリーの主人公は、90歳近いおばあさん。

それに合わせて美香さんも普段のラジオとは全然違うおばあさんの声。
目をつぶったら、本当におばあさんが話しているよう。

しかも、全編秋田弁!
(美香さんは秋田出身なので、まさに美香さんのために用意されたような作品)

そして、何よりも驚いたのは、2時間近い朗読が全て暗記で行われたことでした。
しかも一回も噛まずに!

三浦綾子の『母』

小林多喜二の母セキさんを主人公にした作品で、セキさんが少女時代のころから、家族のこと、多喜二のこと、多喜二の死、多喜二の死後の苦しみ、キリスト教に救われた話を三浦綾子に語っているという形式。

「小林多喜二・『蟹工船』・プロレタリア文学・獄中死した」は、受験のために知識として覚えましたが、実際に読んだことはありません。

三浦綾子は『氷点』や『塩狩峠』で有名だけど、読んだことがあるのは『細川ガラシャ夫人』ぐらい。

…という教養のない私なので、『母』のストーリーも全く知らず、
今回の作品を通して、初めて知りました。

ト書きの部分がなく、セキさんの語りでストーリーが進んでいくので、全てセリフ。
美香さんの真に迫った話し方が、まるで女優のようで、朗読というより、一人芝居と言った方がいい作品だと思いました。

息子・多喜二がどんなに優しくていい息子だったか、真面目すぎて愛する女性と結ばれることがなかったこと、「貧しい人をなくしたい」という思いで書いた小説によって特高(秘密警察)に目をつけられ、会社をクビになってしまったことなどが、セキさんが乗り移ったかのような美香さんに語られ、どんどん小林多喜二が身近になってきました。

そして、愛する息子・多喜二を拷問で殺されてしまった母セキさん。

美香さんの悲痛な声を聞き、もし、自分の息子がそんな目に遭ったら…と想像するだけで胸が苦しくなりました。

活字で読んでいたら、こんなに心を揺さぶられなかったかもしれません。

『音読教室』

美香さんは『音読教室』という本も出されていて、朗読会の前に読んでみました。

この本では、『ごんぎつね』『蜘蛛の糸』『雨ニモマケズ』の読み方を懇切丁寧に指導してくれているのですが、美香さんの並々ならぬこだわりに、朗読の奥の深さを感じさせられました。

『ごんぎつね』を読む

 早速始めましょう。まずはタイトル「ごんぎつね」の「ご」からです。

『音読教室』堀井美香

なんと、ひらがな一文字から!

前の章でお話ししましたが、最初の一文字はなかんずく大事です。最初の「ご」だけで何時間かレッスンしたいくらいです。
 準備期間なしにいきなり出さない。数多のことをよく考えて、自分の体内と呼吸を整える。それらの間のあとでやっと出てくるかけがえのない「ご」なのです。

『音読教室』堀井美香

私も小学生に読み聞かせをしているので、声を出して本を読むこととは真剣に向き合ってきたつもりですが、そこまで細かく考えたことはありませんでした。
(そもそも絵本の読み聞かせと、朗読では目的や読み方が違うのですが)

この本を読んでから、今回の朗読を聞いたので、美香さんが、ひとつひとつの言葉にこだわりを持って表現されていたことがわかり、『音読教室』で言っていたのは、こういうことだったのか、と腑に落ちました。

美香さんが力を注いだ朗読、『母』、生で聞けて本当によかったです。

あ、言い忘れていましたが、ピアノもとても素晴らしかったです。

ピアノ担当の川田健太郎さんは、羽生選手のアイスショーで演奏したり、『光る君へ』の劇伴音楽も担当しているとのこと。
大河ファンなので、「おお!」と反応してしまいました。

まとめ

7月20日は奇しくも美香さんのお母様の誕生日ということでした。
お母様の誕生日に『母』を朗読するなんてステキなプレゼント!
(ダブルブッキング事件でお母様が会場にいらっしゃったかわからないけれど)

「オーバーザサン」では、ジェーン・スーさんと他愛ない話をして笑い転げている美香さん。
今回はそれとは違うプロフェッショナルな一面を見せていただきました。

機会があれば、ぜひ、みなさんにも聞いていただきたいと思います。

通し券を買った方には申し訳ない気もしますが、
次の機会に必ず聞けますように!

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

毎日暑い日が続きますが、みなさま、どうぞご自愛ください。


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