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電車で本を読むという抵抗

通勤電車の中ではできるだけ本を読むようにしている。
もちろん読書がしたいからであるが、最近は私が本を読む姿を見てもらうことによって読書に興味を持ってもらおうという草の根活動も意識している。
読書に興味をもってもらうには、面白そうに本を読んでいる姿を見せるのが一番だろう。
それを電車の中で実践しているのだ。

電車の中で読書している人は本当に少ない。
たまに車両内を見渡してみるが、本を読んでいる人は一人もいないことが多い。
乗客のほとんどがスマホをいじっている姿を目にすると、書店員の私としてはなんだか悔しくなる。

ネットで簡単に調べ物ができたり、スマホで無料の娯楽を楽しめたり、そんな中で本の存在意義が問われるようになってきた。
電車で誰も本を読んでいないと、その世相をまざまざと見せつけられるように感じてしまう。
私の周りでも次々と書店がつぶれている。
そして、私が働いてる店も経営は苦しく、給料は雀の涙である。
それでも通勤電車の中で楽しそうに本を読めば、その姿を見た人が読書に興味を持ってくれて、自分の店に来てくれるかもしれない。

先日、うれしいことがあった。
席に座ってみると、隣のおばあさんと向かいの若い男性が本を読んでいたのである。
近くの席で2人も本を読んでいる。
こんなことはめったになく、年に1回あるかないかだと思う。
いつもは心細く本を読んでいる私だが、このときばかりは仲間ができたかのように穏やかな気持ちで本を読むことができた。

本を読む人が少なくなっている現在だからこそ、本好き同士は惹かれ合う。
電車で本を読んでいる人を見かけると、なんだかうれしくなる。
さながら情報社会で一緒に闘うレジスタンスの同士を見つけたような気持ちなのである。

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