第94回 将 -銘柄-
投資は、1にも2にも銘柄だと言う人がいます。
しかしながら、いくら良い銘柄を教えてもらっても、本人にその気が無ければ、上手に利用することはできません。
例えば、ジリ高銘柄を教わっても、飽き性で数か月しか持っていられない人では、得られる利益は限られてしまいます。
逆に、長期で持ちたい人に急騰銘柄を教えても、急騰後の急落場面でも持ち続けて、結果的に無意味だったことになってしまいます。
また、他人から教えられた急騰銘柄で大儲けしたら、次も急騰銘柄に期待してしまうでしょう。
そうなると俗にいう「待ちぼうけ」になります。
「待ちぼうけ」は、北原白秋が作詞した歌詞です。
その原典は、「韓非子 五蠹(ごこ)篇」の中にある説話「守株待兔(株を守りて兎を待つ)」です。
北原白秋と言えば、その名前が特徴的です。
古代中国で、「白」は「白虎」の白であり、「秋」、「東」の意味で用いられます。
因みに対義語は「青春」です。
「青」は「青龍」の青であり、「春」、「西」の意味で用いられます。
当然、北原白秋は、「青春」の対義語として「白秋」を自称したのは間違いないでしょう。
そして、「韓非子五蠹篇」の「守株待兔」ですが、歌詞の通りです。
ある日、宋国の農夫が畑を耕していました。
すると、ある日のこと、一匹のウサギが畑に飛び込んできて、畑の脇にあった切り株にぶつかって、首の骨を折って死んでしまいました。
農夫は、そのウサギを売って、予想外の収入を得ました。
このことに気を良くした農夫は、もう一度同じことが起こってくれるのではないかと思い、次の日から畑仕事を止めて切り株を見張り始めました。
しかし、いくら待っても、ウサギが切り株にぶつかることは二度とありません。
そのうちこの農夫の評判は宋国中に響き渡り、国中の笑いものになったということです。
自分で努力しないで利益を手にしようとすること、チャンスは積極的につかみに行かないといけない、努力せずに幸運を待つようでは成功しないという意味で用いられます。
また、そこから転じて、限られた経験に固執して融通がきかない人、変わろうとしない人、変化に向けて努力しない人、という意味でも使われます。
ですから、単に良い銘柄を教えてもらうだけでは、絶対に成功しません。
そういう意味で、「将-銘柄-」は4番目になる訳です。
さて、この将の条件は、「智」、「信」、「仁」、「勇」、「厳」と孫子は書いています。
「智」とは、物事の本質を見抜ける知識の豊富さのことです。
「信」とは、配下から寄せられる信頼度の高さのことです。
「仁」とは、広く人々を慈しみ教育する優しい心のことです。
「勇」とは、信念を貫き通せる強い思いのことです。
「厳」とは、部下に軍律を徹底させることが出来るカリスマ性のことです。
これをそのまま当て嵌めると投資家として成功できる条件になってしまいます。
ですので、この条件を一時投資家自身としていましたが、それでは「孫子」を体現できていないのではと考え、「銘柄」にしました。
「智」とは、投資家自身が持ち合わせている知識で見抜ける銘柄のことです。
以前バフェットは、IT関連銘柄には魅かれないと言っていたことがあります。
それは、彼がITに詳しくなく、自分の手に余るからだそうです。
また、格言の中でも、「遠くの株は買うな」というものがあります。
その会社の状況や環境が掴みにくく、正しい判断が出来ないからです。
当然、短期投資でも、その動きを利用できる銘柄に限るべきということです。
「信」とは、信じることができる銘柄のことです。
この信じるとは、信じて持てるという意味ではなく、その動きが予測の範囲内に収まり、慌てることがないという意味です。
信じられない銘柄は、売買の判断に悪影響を及ぼしてしまいます。
「仁」とは、突発的な材料が出そうもない銘柄のことです。
突発的に材料が出て、チャートが崩れてしまったら、トレードそのものが成り立ちません。
上昇トレンド中に、増資なんかの発表をなされたら、一気にストップ安へと転がり落ちてしまいます。
こういう投資家に対して優しくない銘柄は避けるべきです。
「勇」とは、トレンドが明確な銘柄のことです。
多少外部要因が変化しても、力強くトレンドに沿って動く銘柄が良いです。
「厳」とは、用いる投資法に合致している銘柄のことです。
周囲が認める良い銘柄であっても、投資法に合致していないと利益は取れずに損失を生み出す恐れがあります。
どれだけ投資法にシンクロした銘柄であるかが、問題になります。
当て嵌め方に、ちょっと強引な箇所が無い訳では無いですが、それでも言いたいことは理解して頂けると思います。
自分が手掛けて儲けられる銘柄が、良い銘柄なのです。
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