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【2011年、転職活動記~26歳はじめての転職活動でボクが考えたこと~】2

2012年1月19日:楽しいこととすべきことは少しずれたとこにある

ここ数日、面接が続いている。今週は合計7社の面接が入っている。先ほど今週5社目の面接が終わったから、一週間に例えれば、いま、この時間はまさにハナキンだ。しかし、のんびり飲みにいく時間はない。あと3時間もすれば、土曜日になってしまう。

転職エージェントに会ってからというもの、色々な会社に応募してきた。大手、中堅、ベンチャー。業種も問わず、実に多様な顔ぶれだ。40社近く応募している。グループで言えば、まさに時代を彩るAKBと同じくらいの数だ。自分でも応募しすぎではないかと感じるが、どれくらいの会社であれば合格して、どれくらいの会社であれば不合格となるのかを肌で感じるためにこうしているわけだ。AKBの総選挙みたいなものである。そうして、書類選考に通過して、面接の日程が埋まってきたのが、まさに今週である。年明けを挟んだことも、また、修士論文の発表があったこともあり、今週からまさに本格的に転職活動が始まったという感じだ。
とはいえ、とんとん拍子で面接が決まったわけでもない。最初は、残念なお知らせが続いた。エージェントから、「先日ご応募いただきました求人につきまして、大変残念ながら今回はお見送りとのご連絡を頂戴いたしました。お力添えが出来ず、申し訳ございませんでした。」とメールが届くのだ。謝られるとむしろ悲しくなるとはこのことだ。「他に好きな人ができたの、悪いのは全部私、ごめんなさい。」と言われるくらい悲しい。いっそ責めてほしいものだ、あなたが私の事ちゃんと見てなかったせいよと。つまり、書類で落とされることは、なかなか精神的にこたえることなのだ。なにしろ、学歴や職歴によって、他の方の方が当社には合っていると決めつけられるのだ。そんなものでおれの何がわかるんだ、とでも声を荒げたくもなるが、そんな子どもではない。大人には大人の事情があるのだ。
それでも、日が経つごとにだんだんと書類通過率はよくなっていった。初めに応募した10社のうち、通過したのはたったの2社だったが、それ以降に応募した30社については7割近い書類通過となってきている。確かに、職務経歴書については、より具体的に行ってきた業務が分かる形式で記述を行うなど、工夫はしてきた。それでも、僕はこの通過率の変化にはからくりがあると思う。というのも、初めに応募した10社については、エージェントを訪れたその日に提示された案件であった。前にも書いたが、やはりあれらの案件は客引きのための風船であったに違いない。客引きの風船には、たくさんの人が群がる。しかも、僕がエージェントに紹介された時には、すでに多くの人が飛びついていた。後から入って割るのはなかなか困難だ。だから、賢明な読者に言おう。初めのうちは、書類すら通らない日々が続く。けれど、そこであきらめてはいけない。それが自分の実力だと早合点してはいけない。大人には大人の事情があるのだ。

そうして、今日も面接だったわけだが、相手は渋谷に事務所を構えるFX取扱会社で、FX業界では唯一といっていいほど、急激に伸びている、まだベンチャー色の強い会社だ。監査法人で働いていた時にFX会社にはよく往査しにいっていたということもあって、応募してみた。
その会社は、まさに往査していたFX会社とそっくりだった。事務所そのものの作りから似ている。受付に置いてある電話で人事に面接に来た旨を伝え、ロビーで待つ。行く人行く人、美人ばかりだ。なぜだろうか、往査していたFX会社も美人揃いだったものだ。しかし、大手にいる美人とはタイプが違う。渋谷にあるということも関係はするかもしれないが、派手さのある美人だ。
人事担当者と経理部担当者が迎えに来て、いざ面接開始。人事担当者は30代前半くらいのひょろっとした感じで、見るからにひ弱だ。しかし、進行役の彼はしゃべり始めると雰囲気が変わる。いきいきと話すのである。人は見た目にはよらないのだ。一方の経理担当者は20代後半の女性で、なかなか気が強そうな美人だ。メイクもばっちりしていて、隙がない。恰好もトレンドを取り入れつつも、できる女を見事に演出できている。面接は彼の進行のもと、和やかな空気で進んだ。僕から職歴等の自己紹介、会社を志望する動機を説明した後、相手方から履歴書、職務経歴書についての質問を受ける。

質問されることはだいたいどこの会社も一緒だ。僕の場合は公認会計士を目指した理由と監査法人を辞めてまで大学院に入学した理由、この二つについては必ず聞かれる。まぁ、当然だろう。僕はこう答える。
まず、公認会計士を目指した理由については、企業に対する監査を行って、財務諸表の適性性を担保し、投資家が安心して企業に対して投資を行うことができることに貢献したかったから。なんて言うわけがない。そんなことを考えて目指した会計士の仲間は一人としていない。たいていみんな安定を求めて資格をとったんだ。ちなみに僕が答える時には、こう言う。監査がしたいという想いはありませんでしたが、大学在学中に何か一つ大きな目標を立て実行したいと考えていたので、経済学部ということもあり、関連する資格のなかで一番難しいものを取ろうと考えて、公認会計士を目指しました、と。これはほとんど本音だ。
次に、大学院に進学した理由。この質問には二つの答えを用意している。一つは上っ面な答え、もう一つがもう少し正直な答え。前職において監査をしている中で、これからの公認会計士には会計や監査の専門性だけでなく、経営についても知識や経験が必要だと感じたためです。これが上っ面、でも嘘ではない。こう答えると、できる面接官は必ず突っ込みを入れてくれる。その時に一般事業会社に転職しようとは思わなかったのかと。しめた!と思う。あえて突っ込みやすい答えをすることもきっと面接のテクニックだと思う。面接官は突っ込みを入れた充実感を感じられ、また、それに適切に対応した希望者のアピールにもなる。
僕が大学院に進学した理由。経営を勉強したいというのは本当だが、かといって一般事業会社で働くことは考えなかった。公認会計士への最後の関門の修了試験があったからだ。公認会計士になるためには、公認会計士試験に合格した後、2年間の実務経験と3年間の補習をし、最後に修了試験に受かる必要がある。合格率は7割。監査法人に勤めている人は修了試験受験前に1ヵ月程度の休暇をもらえる。通常の有給休暇とは別である。だから一般事業会社で忙しく働いていたらとてもじゃないが受かる試験ではない。だから、経営の勉強と修了試験に合格することの二つを同時にできる大学院に進学した。この答えは意外とウケがいい。きみ、計画的だねぇ、と褒められる。いえいえ、おじさまこそいい質問されてさすがですよぉ。とは思っても言わない。

雰囲気のいい面接終わりはこれ以上ない充実感でいっぱいだ。
僕も往査していたクライアントにいるような錯覚を覚えるくらいだったから、全く緊張せずに受け答えできていたのだろう。業務についても既によく知っているし、かなり即戦力として働けるはずだ。そう確信していたし、相手もそう確信したはずだ。両想いであることを確かに感じたのだ。
東横線に揺られながら、考える。この会社なら即戦力として働けるし、雰囲気もとってもいい。しかも美人も多い。給与もいい。いま働くにはこれ以上ない環境だ。
しかし、こうも条件が揃いすぎると、疑いたくなるのが人の性だ。本当に何も問題ないのだろうか。この会社に入って後悔はしないのだろうか。そう考えてみる。
 
「自分が好きな仕事よりも自分に向いている仕事を見つけなさい。」
よくこんなことが大学生向けの就職活動セミナーにおいて言われる。のを、テレビの報道か雑誌の特集かなにかで読んだことがある。
なぜか。それは、たぶん人間は好きなことになると、自分のことを客観的にみることができないからだ。サッカー好きが必ずサッカーがうまいとは限らない。それでも好きなことだけしていたいという子供はそうしていればいいけど、その先にある成長とか出世とかそんな大人を目指すなら、向いていることをすべきなのだろう。

それは今の僕にも同じようなことが言えるんじゃなかろうか。
居心地のいい、好きな職場にいることが自分の成長につながるんだろうか。
たぶん答えはNOだ。
きっと自分のしたい事とすべき事はいつも少しずれたところにあるんだ。
 居心地のいい天国で働くより、泥臭い地上で働いてやろうじゃないの。


続き

2011年、転職活動記は以下6記事となります。他も読んでいただけるとありがたいです。
2011年12月21日:事のはじまり
2012年1月19日:楽しいこととすべきことは少しずれたとこにある(←本記事)
2012年1月24日:誰がダルビッシュを笑えるだろうか
2012年2月5日:若者はなぜ3年で辞めるのか
2012年2月23日:決断のとき
2012年4月6日:終わりと始まり


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