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『自分の中に毒を持て』感想

2022年、突如としてツイッターで存在感を放ち始めた「タローマン」
複数のフォロワーさんが語っていることもあって気になっていた。タローマンとは何なんだ、と。

そんなものだからお正月にタローマンの再放送があると聞いて軽い気持ちで見た。丁度4話のオープニング辺りだった。

「バクハツだ
 バクハツだ
 バクハツだ
 芸術だ〜♪」

なんだこれは(洗脳完了)



そんなタローマンの作中では毎度「そう岡本太郎も言っていた」と繰り返される。
私は岡本太郎といえば「芸術は爆発だ」や作品のひとつ「太陽の塔」を知っているぐらい。
デタラメな世界観は面白いものの、これだけで岡本太郎を知ったような顔をしていいのだろうか、本当に岡本太郎はそう言っているのだろうか……

と考えだしたら手に取らざるを得なかった。主題歌歌詞にもなっている『自分の中に毒を持て』

実際に読んでみると「本当に岡本太郎も言っていた」となる。激しい。でも、力強く生きてみたいと思わせるパワーを持っている。
自伝というよりは哲学書の様相で、ちょっと言ってしまうと宗教っぽさもある。だが後者についてはご本人が同作の中で「宗教みたいだと言われる」と語っていて笑ってしまった。


また、意外だったのはいじめについての話。

「いじめられる恐怖感を持つというのは、よくわかる。」

と、同情的な意見を書いている。

読み始める前に抱いていた岡本太郎のイメージは、激しく、型破りで破天荒で、自分にも他人にも厳しい人、というものだった。
タローマンで「好かれる奴ほど駄目になる」「一度死んだ人間になれ」など激しい言葉を先に聞いていたこともあり、いじめについても厳しいことを言われるんじゃないか、たぶん何処かでそんなふうに感じていた。

だが岡本太郎氏も、ガキ大将の取り巻きや、学校の先生からいじめ(先生のそれは「虐待」のような……)を受けていた話が書かれている。何度も死のうかと思った、とも。
いじめてくる人物に反発し、強く立ち向かった岡本太郎氏でさえ、そう思わずにおれなかったのだ。そんな心境をも語ってくれたことが驚きだった。

別作品の話だが、少し前に『かがみの孤城』の映画を見た。詳細は省くが、この作品にもいじめが絡んでくる。この作品では救いもあるが、現実は必ずしも上手くいかない。
この映画の影響もあり、いじめのくだりは相当印象に残った。あれだけ激しい言葉を残している岡本太郎も、激しいだけの人物ではない。マッチョイズムで弱さを否定することはしない。

岡本太郎氏は、ただ激しいだけじゃなく、弱さに対する理解も併せ持つ人物だと感じた。そこが好きになった。
次はこの一冊と対を成す『自分の運命に盾を突け』を読んでいく。あとNHKさんは是非またタローマン再放送してください。全話ちゃんと見られてないので……。


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