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自粛映像コント制作裏話

まずはこちらをご覧ください。

自粛映像コント「めちゃくちゃ嫌われていた男」と題して、この自粛期間にこそこそと30半ばの男二人が部屋にこもって手作りしたものです。この記事ではこちらの映像コントを作るにあたっての経緯等いろいろを書こうと思います。(2020年4月~5月、未曽有のウイルス災害により東京は外出自粛中)

続いてこちらをご覧ください。

昨今テレビのオーディションでは必ずと言っていいほど「特技」を求められます。

①ネタよりもごく短い時間で

②どこででも披露出来て

③誰にでもわかりやすくて

④ちょっと凄くて

⑤しっかり笑える

以上が「テレビが求める特技」に必要な構成要素でしょうか。現代の若手芸人の命題ですね。

この「特技」がとても難しい。必ず求められるとわかっていてもなかなか用意が出来ません。そこで相方の加納は「毎週一つ特技を考える」というノルマを設定して頑張ってくれているのですが、5月第一週の特技として送ってきたものがこれでした。

特技の必要要素②~⑤が全く満たされていませんでした。おそらく要素とかそもそも考えてないのでしょう。そういうところがあります。

そこで僕はこの特技をTwitterにあげることにしました。ただお蔵入りするよりはいいだろうと。せめてもの供養のつもりでした。

これが映像コント制作のきっかけとなりました。

はじまりは他事務所の先輩芸人、プラッチック 一丁さんの一言から。

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まさかのアドバイスを頂いてしまいました。

これは困りました(正直)。

一丁さんといえば話題のDB芸人(ドラゴンボール芸人)ピッコロとして活躍中の人気者ですが、僕と絡むときはずっとふざけている気のいい兄さんです。その一丁さんが今回は(なぜか)ふざけていない。

「うーん、となると作らないわけにはいかないな」と考えました。

こう書くと先輩の圧力で動いたようにも聞こえますが、(少し)違います。

(※そもそも一丁さんは他事務所の人気芸人かつ大先輩、あげくに僕らは底辺のコンビなのでたまに劇場でご一緒することはあっても基本的に接点はないです。ですので、ここで書くことは僕の勝手なイメージや解釈の話なのでその点をご了承ください)

僕は一丁さんのことを「超努力家」として見ています。

-芸人なんだからネタを作るのは当たり前、プラスアルファの一芸を身につけなくては勝負にならない-

これは若手芸人ならだれでも知っていることですが、同時にほとんどの芸人がやれないとてもとても難しいことです。わかっていても出来ない。見つからない。覚悟が出来ない。逃げてしまう。

これを一丁さんはやっているわけです。

時流を読み需要を見つけ、スタイルを一から作りあげ、やり通す。

一丁さんのすさまじい努力を勝手に想像していた僕はこう考えました。

「俺よりお客さんの需要を考えることや、それに応える努力を積んできた先輩がアドバイスをしてくれているんだ。応えないと男がすたる」

というわけで勝手に愛を受け取って制作に取り掛かったわけです。

台本

まずはざっくりと台本を書きました。映像用に台本を書くのは初めてなので手探りです。実際に仕上がったものは多少変更点がありますね。

上段に振ってある数字はシーン、シーン文末の()内は予想されるカット数を書いてみました。合計で28カットを予定。Twitterに投稿することを想定して2分以内の作品にするつもりだったので1カットあたり4秒ほどで撮らないといけない計算になりますが、実際に撮り終えると合計77カット、各カット30秒前後あったので編集でまとめるのに苦労しました。

僕は映画がとても好きで、特に黒沢清監督の作品や著書、考え方に洗脳されています。理解できているか、体現し得るかは別として非常に傾倒しているのです。

清に(尊敬を込めて敬称略)学んだ僕は

「映像は画作りだ。画がよければストーリーなんてどうでもいい」

極論こう考えています。(たぶんに理解を間違えている可能性は承知しています。お許しを)

じゃあいい画ってなんだよ?わかってんのかよ?という声には耳を塞いで話を進めまして、

今回、一番のファインプレーは冒頭のこのショットだと思っています。

冒頭カット

タイトルバックにもなっていたこの画は台本作成段階から大事にしたい、全体の雰囲気を左右する要のショットだと思っていました。

なにしろクソど素人がなんの知識もないのに手作りで挑んでいるのです。照明機材もなにもあったものじゃありません。せまいアパートの一室、うすら暗い蛍光灯の下でさめざめと横たわる現実をかっこいいものかのように映し撮るためには太陽を味方につけることが絶対条件でした。

このあと部屋での生活模様を撮っていくにあたって、いつまでも蛍光灯を点けずに太陽光で撮影するのは不自然です。暗い部屋に差し込む太陽を利用できる画作りのチャンスは2分間でここだけです。なにしろ撮影予定だった日に大雨が降ったため、部屋で撮影する作品にも関わらず一日撮影を延期したほどです。それだけこのショットは大事だと考えていました。

しかし撮影当日カメラを回してみると、どうしても画に締まりがつきませんでした。こちらが実際には使用しなかった没カットです。

困りました。カメラをどうこねくり回しても画が悪い。これでは演者も下手くそに見えます。そこで近くにあった掛布団を手元に引っ張り小さな山を画角の左下に作り、思い切って演者の足元を切ることにしました。これがぐっと画の質を向上してくれました。この小さな工夫が今作の雰囲気を決定づけた好プレイだったと自分を褒めています。

また尺の都合もありましたが、台本上のシーン⑩~⑫についても実力不足からどうしても画が悪かったためここは編集で動きを足して誤魔化しています。充分な画が撮れていればと悔しいところです。

さて次はこだわったタイトル作りです。

編集ソフトにはあらかじめあらゆるフォントが用意されていますが、ここは手作りにしたいと考えマンガが得意な加納に依頼することにしました。

白い字、わざとたくさんの線、大まかに動く。イメージを伝えます。

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ものの数十分でタイトルが送られてきました。ここからさらにイメージを伝えて調整していきました。

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実際に編集にかけて音を付けてみると欲が出てきました。

タイトルと一緒にぱんっと始まる曲をつける。曲のリズムに合わせて躍動するタイトル、ああ、このまま動いて散って、最後に泣いてほしい!

無茶な依頼かと思いましたが落書きみたいなイメージ依頼書を送ります。

タイトルアニメーション指示

3時間後、おそろしいハイクオリティのタイトルアニメーションが送られてきました。全部で約40枚の最高の仕事でした。

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加納の意外な制作力に助けられ、いよいよ雰囲気を決定づけることが出来ました。ここまできたら出来上がったようなものでした。

また作中で文句を垂れまくり主人公を苦しめる家具たちですが、これも加納制作のGIFです。

イメージ依頼書はこれです。

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なんと500枚以上描いたそうです。撮影では一瞬しか映っていませんが特にトイレットロール上の目玉が素晴らしい動きを見せています。ぜひもう一度見てあげてください。

ふだん、コンビのネタ作りは僕が大部分を担っています。

今回も一丁さんの厳命を(勝手に)受けたのも僕ですし、主動は僕です。でも初めて加納となにかを完成させた喜びを感じています。出来上がりはそれこそいい加減かつ無理矢理な話を雰囲気だけで2分やってしらばっくれたようなエンディングを迎えているので大したものではないですが、そういう点でいい作品、経験になりました。

楽しんでくれた方が思ったより多ければ、また映像も作りたいと思いました。

この記事をもって、自粛映像コント「めちゃくちゃ嫌われていた男」は完成です。どちらも見てくれた方ありがとうございます。ぜひたくさん褒めてサポート、スキ、コメントしてください。ではまた。



誰もがあなたのようなら僕も幸せです。