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#6 イカロスの羽はとどかない

 そのむかし、ギリシャのイカロスは空を飛んだり跳ねたりした挙句、高高度から地上に墜落するなどしたそうですが、文明が発展した現在も飛んだり墜ちたりする人は後を絶ちません。

 具体的にいうと、双極性障害を持っていると飛翔率・墜落率が格段に跳ね上がります。つまり、僕。

 イカロス氏がなぜ空を飛ぼうと思ったのか定かではありませんし、僕が飛ぶ理由もはっきりしません。躁状態になってテンションがだだ上がり、気が付いたら高く飛んでいるの。

 そのまま高く飛べるのなら「躁」状態も、悪いものではないのかも知れない。けれど衛星軌道上にたどり着くひとはおらず、大抵は高度を維持できず、下手をすれば大気圏に突入して燃えちゃうケースがそのほとんど。

 例えば、やたら買い物をする。
 例えば、やたら攻撃的になる。
 例えば、やたら活動的になる。

 当の本人は気分が高揚しているというか、単純に元気いっぱいな感じで高く飛んでいる自覚さえない。んで、無自覚に空気の薄いあたりまで打ちあがって突如のガス欠。上った角度で墜落。摩擦で燃える。地面に激突する。とても痛い。

 これはちょっとなんとかしたい。対策とか考えてみたい。そう考えたカバネは、Twitterを通じて現代のイカロスたちに色々とお話を聞くことにしました。みんな、どうやって気をつけてるの?

 共通していたのは、そもそも高く飛ばないこと。
 いつの間にか足元にジェットエンジンが装着されていることもあるけれど、重石をつけて飛ばないようにするのだと。

 まとめるとこんな感じ。

①躁を制するものは双極性障害を制する
 
これは本当に名言で、双極性障害の一番の怖さは、やはり躁状態なんだなと。元気になってハイになればなるほど、その後にくる「鬱」がとても酷いことになる。なので考えるべきは「躁」対策。躁を抑えれば鬱も大分と軽くなる、ハズ。

①睡眠を制するものは躁を制する
 これもカバネ的名言。躁状態になると睡眠時間が短くなりがち、というか睡眠不足でも支障がない(気がする)のだけれど、確実に負債は積みあがっている。躁状態×睡眠不足とかもうヤバい。なのでともかく早く寝るように。いいから早く寝るんだ。早よ寝ろ。

③週に1日は休養日を設ける
 
躁状態になると人は何故か予定をギチギチに詰めます。それを凄まじい勢いで消化はするのだけれど、やっぱりガス欠になって墜落する。なのでともかく空白日を死守する。予定でテトリスを組んではいけない。テトリスっていうかジェンガみたいな。ジェンガっていうかバベルの塔みたいな。

④人に教えてもらう
 自分がいまどの程度の高さにいるのか、メンタル高度計を持たない僕らは気付くことがとても難しい。なので家族や友人にお願いして、「あっこいつ足元が地上から離れ始めたな」と思ったら指摘してもらう。この際、「僕は飛んでなんかいないよ!」と言っちゃダメ。そこで攻撃的になりでもしたら、きっとあなたはイカロス手前。

 とまぁ、こんな感じで、最近になって得た双極性障害対策を整理してみた次第です。

 もちろん今だって躁状態は怖い。いつ宇宙に打ちあがるのか。成層圏を突破できるのか。そしてパラシュートなしで地上に激突したくないのだと。

 ……ここまで考えて、僕はイカロス氏の気持ちが、少しだけ分かった気がしました。

 ひょっとすると、彼も双極性障害だったのかもしれない。

 僕は、なるべく地に足をつけておきたいと思うよ。

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