『ト書き・動作』③性格動作『キャラの履歴書を作る』

 ト書きの動作には4種類あると以前に述べました。
・一般動作
・生活動作
・性格動作
・リアクション(関係)動作
 今回は『性格動作』について述べたいと思います。

性格動作とは

 性格動作とは、"その人ならではの動き"のことです。
 例えば"潔癖症"の人……

・いつも手袋を持ち歩いている
・外食をしない
・タンブラーを持ち歩いている

 などの独特な習慣や動作を描くことが出来ます。
 その人ならではの動作というものは、その人の性格がにじみ出ます。
 なのでその人ならではの動作がないということは、"まだまだキャラの作り込みが甘い"といえるかもしれません。
 例え何の変哲もない20歳のキャラクターを描くことになったとしても、そのキャラクターには画面に映らない20年分のバックボーン……歳月が存在するわけです。
 あなたと同様にキャラクターも多くのものを背負っていることを意識すると、中身のあるキャラクターを作り込むことができ、かつそのキャラクターならではの動作というものを思い浮かべることが出来るようになります。
 もしキャラクターの過去や背負っているものを動作で描くことができたなら、そのキャラの過去をとうとうと語るような”回想は不要”となります。
 "初心者が使う回想は基本的に悪手"という暗黙の了解があるのですが、それはキャラクターの過去を回想以外の手段で見せることが出来ていないからということに尽きるかもしれません。

キャラクターの履歴書を作る

 もしキャラクターの作り込みが苦手という方がいらっしゃるのであれば、『キャラクターの履歴書』を作ってみることをおススメします。
 履歴書といっても実際の履歴書とは異なり、

・どんな友達に出会ったか
・どんな過ごし方をしていたか
・恋をしたことがあるか
・その恋は上手くいったのか

 など、人間臭さを盛りに盛り込んだ項目をふんだんに設けてください。
 その作業がキャラクターの奥行きを深めることに、ひいては魅力づくりに寄与してくれることかと思います。

 ところで『ジョジョの奇妙な冒険』で有名な荒木飛呂彦先生はキャラクターを作成する際に履歴書を作るというのは有名な話ですね。
 成功した先達がどのような項目を使っているのかを学ぶのもいい勉強になるかもしれません。以下にリストアップしておきます。

・姓名、略称 ・年齢 ・性別 ・生年月日 ・血液型 ・出身地 ・身長 ・体重 ・髪の色、瞳の色 ・視力、色力、メガネの有無 ・きき腕 ・声の質 ・手術の経験や虫歯、病気 ・体のキズ ・病気やけどやアザ、刺青 ・その他の身体的特徴、鼻や目の形、姿勢、乳房、足、ホクロ ・人種 ・宗教 ・前科、賞、学歴 ・幼児、少年期の精神的経験、その人物(像?) ・セックス体験、恋人、その考え、結婚 ・尊敬する人、恨んでいる人 ・将来の夢 ・恐怖 ・性格上の特徴、口ぐせ、くせ ・人間関係、態度 ・家族関係、態度 ・トラブル関係 ・職業、学校 ・経済状態、その態度 ・ペット、植物 ・性格(明るいか暗いか、ユーモア、暴力的、社交家か、知的か、清潔か、表現力は、弱点、悩み、異常性格) ・特技、ワザ、能力(動きは敏捷か、スポーツ、ダンス、武術、銃、運転、語学、その他免許) ・趣味、娯楽、好き嫌い、住食衣、習慣、好きな音楽(音楽、新聞、文学、雑誌、映画、創作、コレクション、好きな色、きらいな色、香り、インテリア、ファッション、場所、家、土地、人物、ひいきの店やメーカーなど、愛用品、首飾りや指輪をしているか、嗜好や麻薬) ・その他(ワイン、食べ物、超能力、霊感、占い、言葉のなまり、野性的カンなど)

 ……膨大ですね! あまりも項目が多いので、列を分けずに箇条書きになってしまいました。
 これらの項目に沿ってDIOや吉良吉影が誕生したかと思うとあなどれないものがあります。荒木先生のキャラは特に悪役が輝いていますよね!

 ちなみに私も普段、なんらかしらのコンテンツを制作する際にはキャラクター設定書なるものを作成し、取引先に提出して了解をいただいてから執筆に入るようにしています。
 どんなクリエイターにも必須の工程とはいえないかもしれませんが、少なくとも主役ぐらいはこのぐらい作り込んでおいた方が、後でキャラがブレるなんて事態にはならないかと思います。

キャラクターの性格は不変

 ところで今回述べた『キャラクターの性格や過去は動作によってにじみ出る』という法則は、また別の法則を導き出すことができます。
 それは『ドラマを通じて主人公の性格が変わることはない』ということです。なぜならば"過去を変えることはできない"ですから
 例外はあるかもしれませんが、あなたが知っているドラマでも、物語の始まりと終わりで主人公の性格が変わっているという事例はごく少数かと思います。
 "情けなかったのに逞しくなった"とか"イケてなかったのにカッコ良くなった"とかであれば、性格が変わったのではありません。成長しただけです。
 成長した主人公の表面的な立ち居振舞いの裏には、"情けなかった頃の過去の自分"や"イケてなかった頃の自分"が存在し、それがまた違った人間的な深みとなって所作に現れることでしょう。
 もし劇中の出来事やその他の登場人物の言動で性格そのものがコロコロと変わってしまうのであれば、それはもはや滑稽としか言いようがありません。そんな人物に魅力を感じることが出来るでしょうか?
 むしろ"主人公=魅力的な人物"に描く必要があるのであれば、他人の言動に振り回されるのではないと思っています。
 良くも悪くも自分を持っていて、自分の悪いところに自覚し、思い悩みつつも変えられずに悩んでいる……そんな人間臭さこそがキャラクターの深みに繋がるのですから。

 では物語の始めと終わりで主人公にはどのような変化が起こるのでしょうか?
 それは先ほど述べた『成長』もそうですが、紛れもなく『感情が変わる』ということを意識しておいてください。
 例えば恋愛ドラマでは、
"はじめは大嫌いだった異性だったが、その人となりを知るうちに良い部分を認めるようになり、やがて恋をして成就させる"

 例えば『千と千尋の神隠し』では、
"両親の都合に振り回されていた主人公だったが、両親を頼れない状況に陥ったことで成長し、やがて自分で決断して勇気のある一歩を踏み出す人間になれる。生きるということに対する姿勢が変化する"

 そしてキャラクターは成長しても根本的な部分は変わらない。元は臆病だったり無気力だったり人を簡単には許せなかったり……そんな過去は依然存在し続けており、そしてそれを乗り越えた様を視聴者や読者に見せつけてくれる……そんな姿勢や過去を窺える立ち居振る舞いがあってこそ、受け手はそのキャラクターの生きざまに感動を覚え、そのキャラクターをより一層愛せるようになると思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?