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ストーリー化~講師の「具体化」テクニック~

「シーン設定」と「ストーリー化」がどう違うかというと、時間をかけての変化が描けるという点です。
「シーン設定」で説明した内容は、ひとつのシーンを作るまででしたので、その場で起きる変化しか伝えることができません。
いくつかのシーンをつないではじめて、時間をかけて変化する様子を伝えることができるようになります。

時間的な変化

講座や動画教材で伝える内容がどうして人生に役立つかというと、変化を起こすことができるからです。

たとえば何かのやり方を伝える。
そのやり方で、これまでは出来なかったことができるようになる。または、膨大な時間をかけていたことがわずかな時間で片付くようになる。
これが講座の効果となります。

この講座を受講するとどういう変化が起きるのか、を伝えるということは、講師にとって重要な意味を持っています。

たとえば講座の説明文を書くときもそれを意識して伝えないといけません。講座の中でこれから伝えることによってどういう変化が起きるのかを伝えることも大切です。

では、変化はどうやって伝えたらよいのでしょうか?

ストーリーにして伝える

時間をかけての変化を伝えるのに、一番良い手段はストーリー(物語)にして伝えることです。

人類は長い歴史の中で、ストーリーという伝達手法を編み出し、それを教育に大いに役立ててきました。

原始時代の人たちが、洞窟の中で焚き火を囲んでいる風景を思い浮かべてください。
長老にあたる人たちが若者たちに物語を語って聞かせること、それが教育のはじまりでした。

そうした物語の中で、さまざまな知恵やノウハウが世代を越えて伝達されてきたのです。

ですから人類は物語となるとそこに聞き入る習性を持っています。
物語(ストーリー)を作ってそれを聞かせることは、そうした長い歴史の必然に則った効率の良い伝達手法なのです。

ストーリーはどうやって作るのか?

それではストーリーはどうやって作ればよいのでしょうか?
ここでは「シーン設定」までにお伝えした内容は踏まえてください。

ストーリー化に必要なのは「主人公」と「ストーリー展開」です。

主人公をつくる

「主人公」というのは、ストーリーじたいを体現する人物だといえます。
ストーリーの中心になっていて、変化を実感する人物です。

ストーリー化をはかるにあたって、誰が主人公なのかを決めておくことは大切です。

主人公をどう作ればいいのかというと、これは受講生が自身をイメージできるように作ると一番効果が高いのです。

たとえば主人公がスーパーマンだったら、どんな変化が起こったとしてもスーパーマンの超能力のせいになってしまって、自分と重ね合わせることができません。

受講生と同じ立場、同じ環境にいる人が主人公であれば、受講生はストーリーを受け入れることで、自分の未来を仮想体験することができるわけです。

ストーリー展開をつくる

主人公が受講生自身を投影した人物だとすると、ストーリーは受講生自身にとって「これから起こる未来」だということになります。

講座を受講することによって、自分に起こる未来の変化を仮想体験する。

すごい未来が待っている。講座を受講さえすればその未来が自分にも訪れる。ワクワクしますよね。

主人公の作りかた

ですから、ストーリー化をする際には、受講生が「自分のことだ」と感じられるように主人公を作りましょう。

講座をつくる際に「理想の受講生」を想定していますか?
性別・職業・立場などは、想定される受講生に近いものにしましょう。

たとえば子どもを持つ女性向けの講座であれば、主人公もママさんにすべきです。

ただし、性格までコピーする必要はありません。
性格は明るく積極的な人物にしたほうがストーリーは聞いていて心地よいものになります。
賢い必要はなく、少しおバカなくらいがちょうどいいと思います。

主人公には名前をつけたほうがいいでしょう。
Aさん、B君でもかまいませんが、具体的な名前があったほうが架空の人物らしく、また架空のストーリーだと感じやすくなります。

起承転結ではなく「起・転・結」

物語というとすぐ「起承転結」だと思い込む人がいます。
たしかに小説などならそうかもしれませんが、講座で使うストーリーは3つのシーンで十分なのです。

変化の段階でいうなら、「変化前」「変化のプロセス」「結果」です。

これはいわば「起・転・結」ですね。長々としたストーリーは不要なので、「承」はいりません。

起~よくはない現在~

変化前というのは、何か問題が起こっていたり、効率が悪かったり、悩みがある、つまり良くはないシーンになります。

ここで、何が問題なのか、どんな悩みなのか、を描写しておくことによって、変化のありがたさが理解できるしくみなので、ここは省くことができません。

転~◯◯によって変化が起きる~

◯◯というのは、講座でお伝えするテーマのことです。

ここでは、なぜ変化が起きるのか?(変化する原理・しくみ・理由
どうやって変化を起こしていくのか?(変化させるプロセス
を伝えていきます。

結~改善された未来~

そして、変化が起こったあとの未来、つまり問題が解決していたり、効率が飛躍的に向上したり、悩みが解消した状態を描写します。

つまり、ここが素晴らしき未来なのです。
ここの素晴らしさが実感できると、変化を欲するようになります。

ストーリー化の具体例

実際にストーリー化した例をあげましょう。
今回は、リーダーシップやビジネスコミュニケーションの講座だとします。

まず主人公を紹介する

青井翔太、36際。大手家電メーカー「パソット」勤務。
熱血漢で積極的なバリバリのサラリーマン。
今回はじめて新規開発のプロジェクトリーダーとして、後輩たちを率いることになりました。

最初に主人公を紹介します。
ここは受講生が自分に重ねることのできるように、主人公の立場などを簡潔に伝えましょう。

発端の状況

新規開発プロジェクトは、いきなり暗礁に乗り上げます。
その原因は青井翔太リーダーの熱血ぶり。
バンバン仕事を割り振って、鞭をふるいます。
やる気が空回りして、ついて来られないメンバーが続出しました。

改善すべき状況を描写します。
青井リーダーと後輩メンバーの会話などを入れたいですね。
青井「一週間前の会議で決めただろう!なんでやってないんだ」
後輩「そんなこと言ったって通常業務もあるし、時間がなかったんですよ」

変化が起きる

青井翔太リーダーは自分の態度を反省します。
「どう接すればいいんだろう?」
退社後書店に立ち寄った青井。一冊の本が目に止まります。
その本の中の一行が青井を変えました。
翌日、ふたたび会議を招集した青井リーダーはこう言いました。
「分担を変えよう。この中でやりたい仕事を担当してくれ」

何が変化のきっかけだったのか?
変化はどうやって起こしたのか?
それを描写します。

変化がもたらした未来

態度を変えた青井リーダーに、プロジェクトメンバーの不満が解消しました。
メンバーのひとりひとりが自主的に動くようになり、プロジェクトも遅れを取り戻しました。

改善された状況を描写します。
特に美化する必要はありません。
当たり前のことが当たり前に起こった、ということで十分です。

ストーリー化は効果的な伝えかた

簡単にストーリー化のやり方について書いてみました。
コミュニケーションのさまざまな局面で、ストーリー化というのは効果的な伝達手法です。

マーケティング・広告の分野や、ブランディングなどにもストーリー化はたいへん効果を発揮します。

伝えたいことをストーリーにするとどうなるのか、ぜひ考えてみていただきたいと思います。

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