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カーターの短編小説

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短編小説をまとめています。 マガジン画像募集中。
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【短編小説】東京の朝

今日も中央線に乗って大学へ行く。 そんな毎日に嫌気がさしていた。 中学高校と自転車通学していた私にとって電車はストレスだった。 毎日毎日、電車の時間に合わせる自分が嫌だった。 俺の来る時間に電車が来い。 そう何度も思った。 しかしながら、2年生になり唯一楽しみができた。 それは毎週月曜日と水曜日にだけ 同じ電車の同じ車両で同じ駅で降りる彼女の存在だった。 毎回目だけが合い、会釈もないが とにかく清楚で可愛い女の子だった。 同じ大学ではなかったため、 近くの大学か専門の

【短編小説】華やかな大学生活を期待して。。

↑前回のお話↑ 読んでからがオススメです。 上京なう。 そんなtweetをしたころが懐かしい。 3.11の大地震のあとだった。 ACのぽぽぽぽーんのCMしか流れない時代。 原発事故の問題があり電力不足。 被災者もいるため、入学式は中止。 コロナ禍の近年でもよくあるが、 当時では珍しく、楽しみにしていた私は落胆した。 兵庫県の一部しか知らない高校生が 東京にいくのだ。 人生の転機となることは間違いなかった。 華やかな大学生活を夢見て 家を旅立つ前に震災が起きた。 東京に行

【短編小説】東京が好きだ。

生まれは兵庫。 そして育ちも兵庫。 地元が大好きで、友人も多かった。 地元が一番。それは今も変わらない。 そんな私が大学で上京した。 東京は夢の街だった。 SNSは、グリーとかミクシィとかデコログとかその程度の時代。 ちょうどスマホが出始めて、Twitterが流行りだした時だったか。 とにかく東京はテレビの世界だった。 私は視野が狭かった。 ずっと兄を追いかけていたからだ。 兄の進んだ足跡をたどるように追いかけた。 いつまでも後ろにいて、 いつまでもついていくと思ってい

【短編小説】今夜は鍋。 その②(完)

※前回の続きです。 今夜は鍋だ。 晩御飯が鍋と聞いて、残念に思う人もいるだろう。 そう。私もその一人だ。 しかし、決して嫌いなわけではない。 我が家では鍋の日は、壮絶なバトルが繰り広げられていたのだった。 3ターン目、既に野菜だけでおなかが膨れてきてしまった。 しかし、満足感がない。 1kgのお肉を2パック開けているのに 私自身3~4枚しか食べられていないからだ。 では4ターン目に行くとしよう。 4ターン目に入る前にと、父がギブアップとなる。 父はいっぱい食べろよとか

【短編小説】今夜は鍋。 その①

今夜は鍋だ。 晩御飯が鍋と聞いて、残念に思う人もいるだろう。 そう。私もその一人だ。 しかし、決して嫌いなわけではない。 我が家では鍋の日は、壮絶なバトルが始まるのだ。 父・母・姉・兄、そして私の5人家族だ。 父親はプロ野球候補のバリバリの元スポーツ選手。 母親は鍋の日はひたすら食材を運ぶ係となる。 姉は関西でベスト4のテニスプレーヤー。 兄は高校日本代表候補のラグビー選手。 そして、私は肩書のないラグビー選手。 さあ1ターン目が始まる。 母親が昆布でだしを取っていた。

【短編小説】買って帰って食べるだけのことなのに。

去年の冬のことだ。 いつもの時間、いつもの帰り道。 いつも通りの場所のはずが、私の目に留まった一つの自動販売機。 赤を基調とした鮮やかな色彩にインパクトのある文字。 『自宅でお店のラーメンの味が楽しめる・・だと・・』 気付けば私は財布を取り出していた。 この高揚感は少年に戻ったようだった。 新しいゲームソフトを買ってもらい、 帰りの車で意味のない説明書を読んでいる時の、あのワクワク感があった。 『1000円か、、』 しかしながらなかなかの金額だった。 そう。お小遣いが60