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ヴィオラ母さんを読んで 女性達のたくましさに感謝した

先日、ある本を読んで女性の強さを改めて感じた。

読んだ本はヤマザキマリさんの「ヴィオラ母さん」。
ヤマザキマリさんが母リョウコさんとのエピソードを通して、戦後の時代をたくましく生きた一人の女性の姿を書いた本である。

ざっくりとあらすじを書くと、母リョウコさんは良家の娘さんとして育てられたが、音楽に目覚め、単身、北海道に行きオーケストラに入団する。結婚しマリさんを生むがまもなく夫と死別。再婚し、次女を授かるものの、離婚。
シングルマザーとして二人の娘を育てながら音楽家として精力的に活動していく。そんな彼女の生き方がマリさんならではの視点で書かれ、漫画のページもあり非常にテンポよく読める。笑ったり泣けてきたりする素敵な本であった。

この本を読んだ後、戦中、戦後を含め、過去にたくましく生きた女性たちへ感謝の気持ちがあふれた。

この本には母リョウコさんのほかにも素敵な女性たちが登場する。
例えばリョウコさんの義理の母、ハルさん。
戦前から女手一つで子供を育て、生き抜いてきた人だ。そうやって生きてきた人は強がりになる。でもそんな彼女がリョウコさん宛てのハガキに書いた“本音”のエピソードを読んだときは泣いてしまった。

また、リョウコさんの味方の一人、女性教師のI先生の話も印象的であった。
当時、働く女性というのはまだ少数派で、かつ、シングルマザーという境遇は珍しかったと思う。そんなリョウコさんとI先生は連絡帳でやり取りをしていた。そのノートには

「この社会で活き活きと生きること。たとえいつも一緒にいられなくても、一生懸命に働き、満足していること。それを知ってもらうことも素晴らしい母親のあり方です。」

と綴られていたという。この言葉はリョウコさんの大きな支えになっていただろう。

この本には、幼少期に母との時間をあまり持てなかったマリさんの寂しさも書かれている。
でも、置手紙に「いつもあなたたち(マリさんと妹さん)を思っています」といった内容のことが書かれているなどの、家族のつながりは時間ではないと気づかされるエピソードも多い。

彼女たちの境遇は今の自分は体験できず、想像するしかできない。
だが、こういったたくましく前向きに生きた彼女たちがいたから、今の私たちの生活があるのは事実だ。

ここで、少し私の話を。

私の祖母は戦争で夫を亡くした。そして、その夫の弟と再婚した。
祖母は4人の子供を授かったが、上二人は戦争で亡くした夫との子、下二人は再婚した弟との子である。そして、私の父はその4人兄弟の末っ子であった。
祖母の胸中はどうだったのか。私が物心ついた時にはすでに高齢で、そういった話をすることはなかったけれど、複雑な気持ちだったのは容易に想像できる。

父の実家で、戦争で亡くしたという祖母の夫の写真を見たことがある。この写真を見るとなんだか苦しくなる。そして、私がこうして生活していることはあたりまえではないと思わされた。

今の時代も何十年後かには激動の時代に見えるかもしれない。そんな中でも私たちにできることはただ、今、できることをやる。これにつきるのだろうと、過去の彼女達に思いを馳せることで前向きな気持ちになれる。

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