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2015.7.16「食べて確認しなさい。」

久しぶりに病室で母の笑い声が響いた。曰く、「全くここの栄養士さんったら、何にもわかってないのよ。」

 夕飯に出たキウィが固くて残したら、「すっぱいものは苦手ですか。」と聞かれたという。それに「うどんはお好きですか?柔らかいご飯もありますよ。」と煩いらしい。母は仕事がないと可哀想だからと、1回だけおじやを頼んだそうだ。同室の患者さんと「私たちに聞く前に自分で食べて味を確認しなさいって、言っているのよ。」と笑う。

 入院から2週間余り。母は、入院初日に美味しいと平らげた食事を半分も食べられない。味だけがその理由ではないだろう。栄養士は、少しでも食べる量を増やし体力を回復させ、治療に繋げたいと、努力されている。その思いと母の自覚とがすれ違っているのだろう。

 それでも、入院後初めて見せた笑顔にほっとした私は、不満を言う母に調子を合わせた。頑張る栄養士に申し訳ないと思いながら。

その日まで56日。