2015.7.28 「娘さん、大丈夫ですか。」

 訪問看護ステーションからの来訪初日。看護師は母が病気をどう理解しているか、どう過ごしていきたいかを丁寧に聞き取り、訪問計画をまとめた。母は、病気と病状の知識を持ったひとと話せることを、心強く感じたようだった。

 最後に、看護師が「娘さん、何かご質問はありますか」と声を掛けてくださった。耳学問で、訪問看護師はいつでも電話一本で駆けつけてくれることを知っていた。でも、どんなときに電話したらよいのか、想像もつかなかった。

 「家族にもわかる危険信号ってあるのですか」と聞いた。彼女は「娘さん、大丈夫ですか」と言った。一呼吸おいてから「ご家族も突然いろいろなことがあって大変ですよね」と言い、ゆっくりと「これからの日々」と書かれたパンフレットを取り出した。そして、その日までの病態の変化を説明してくれた。

 (あぁ、大変って思っていいんだ。)

彼女の穏やかな説明を聞きながら、私は告知の日から初めて心が緩み、涙が溢れてきた。

その日まで44日。