2015.8.20 「押してみましょう」

 7月のサービス提供者との会議のときだったか、夜間対応型随時訪問のサービス責任者の方が緊急ボタンの使い方を説明してくださった。

 私が「遠慮なく押していいんだよ」と言っても渋い顔をする母に、「では、やってみますね。」と、見本を見せてくださった。一通りのやり取りをした後、母に「押してみましょう。」と促す。オペレーターが名乗らずとも「はいA子さん、どうされましたか。」と返答してくださったり、自分の細い声でも十分会話できると実感できたりして、随分安心したようだ。「中には、寂しくて世間話をするためにボタンを押す方もいるのですから、遠慮なさらなくていいのですよ。」と声をかけてくださった。

 その後1ヶ月近く使用することはなかったのだが、ポータブルトイレに自力で移ることができなくなったこの日、初めて緊急ボタンを押した。亡くなる日まで、自分の思うときに清潔な排泄を続けることができたのは、ボタンを押せば駆けつけてくれるサービスのお陰だった。

その日まで21日。