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事実だけで真実は語れるのか?   『スペンサー ダイアナの決意』感想

今日は映画の感想をつづろうと思います。
内容の核に触れる箇所があるかもしれませんので気になさる方はブラウザバックをお願いいたします。


鑑賞したのは『スペンサー ダイアナの決意』という作品。
予告映像が解禁されたころからその映像の美しさに心惹かれたのを覚えています。

夫の裏切りと王室のしきたり、無数のパパラッチの間でむしばまれるダイアナ妃の心。どのシーンを切り取っても豪華な画であるのにどこか冷え切った空気を感じ取ることが出来ます。
ストーリーはダイアナ妃の目線で切り取られています。
ストーリーがすすむにつれ、現実との境、彼女の望み、苦しみ、つかの間の喜び、すべてがぐちゃぐちゃになり混乱していきます。
まさに、観客は彼女と共鳴するのです。

自分では泣いているつもりはないのに、ダイアナ妃の心とまるで共鳴したかのように静かに涙が流れる、そんな作品に出会うのは初めての体験でした。

この作品は「真実の悲劇に基づく寓話」であり、ダイアナ妃の人生すべてを史実に基づき語った映画ではありません。
脚本で描かれたクリスマスのたった数日の出来事にも彼女の心が痛いほどに伝わってきます。たとえそれが事実でなくても。
寓話はあくまで誰かの想像した"ダイアナ妃の心"です。
寓話では事実は語れないけれど、寓話でしか語れない真実の心もあるということが痛いほどわかる作品でした。

抗えない感情を抱えながら、自分と息子たちにとって最良の決断を下そうとする彼女の姿には誰もが心を打たれると思います。

気高くももろい、そんな心に触れられる非常に意味のある寓話であると私は考えます。


#映画感想文

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