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海水浴に行かない理由

 高校2年の夏、私を含め仲の良い友達5人で地元から少し離れた海に行った時の話。

 お盆前の物凄く暑い日でした、昼過ぎ位に海に着いたと思います。お盆の頃になると地元の海はクラゲが出るせいなのか人はほとんどいませんでした。
 私はあまり泳ぎが得意では無いので、あまり沖には出ないように足がつく辺りで泳いでいました。
 そこの海岸は浜辺から30メートル位沖に行った辺りに高さが水面から2〜3メートル位ある大きな岩礁があるのですが、そこに登ってそこから飛び込みをしようと友達が言い始めたので、最初はそこまで泳いで行くのが怖かったのもあり渋っていましたが、他4人はみんな行くと言うので渋々着いていく事になりました。

 5人で交代しながら何度も飛び込みをしていましたが、登って飛び込んでを繰り返しているとかなり疲れます。
 それでも1時間位はそこで騒いでいました、友達の1人が疲れたから一旦浜辺に帰って休もうという事になり、みんなで浜辺を目指して泳いでいた時でした。
 泳ぎが得意では無い私は1番最後を泳いでいました、疲労もありどんどんみんなと離れ自分以外のみんなが浜に着いたころ、急に泳いでいた私の足を誰かが思いっきり掴みました。右足か左足かまでは覚えていませんが足首のあたりを物凄い力で掴まれ、そのまま海底に向かって引っ張られました。
 あまりに急な出来事に思いっきり海水を飲んでしまいパニックになり溺れたような状態になりました。
 浜辺にいる友達に必死に助けを呼ぼうとしても、がっちり足首を掴まれひっぱられているので声が上手く出せなかったし、友達も自分がふざけていると思ったらしく、ふざけてないで早く上がってこいと私を呼んでいました。

 とにかく冷静になって振り払おうと思い、掴まれた足を思いっきり蹴った時でした、スッと掴んでいた手が離れました。
 今だ!と思いその場から離れようと思いっきり手を掻いて泳よぎ出すと、手に何かが絡みついてきました。海藻だとは思いますが感触はもっとこう人の髪の毛の様な感じでした。
 ただ、とにかくその場から早く離れたかったので無心で泳いで浜につきました。

 すぐに友達に話すと、そんな訳ないと言いながらも気持ち悪いのですぐ帰ろうと言う事になり、海を後にしました。
 
 結局、あの足を掴まれた感触は何だったのか手に絡まった髪の毛みたいな感触は何だったのか分からず、その日から2日たった朝の事でした、母親が新聞を持って部屋に入ってきて私に聞きました。
母親:『この間海行ったって言ってたけど、どこの海行ったの』

私:『○○○だよ』

母親:『その辺りで死体が上がったらしいよ』
と言って、その記事を見せてくれました。

 そこには2日前に私達が行った浜の小さな写真と、女性の水死体が上がった事が書いてありました。上がった日は私達が海に行った次の日だという事でした。
 私達が泳いでいた時近くにそれが漂っていたと思うと、物凄くゾッとしました。

 結局、私の足を掴んだのはその女性だったのか、見つけて欲しいという思いで必死に掴んでいたのか、それとも私の事を連れて行こうとしたのか、今となっては分かりませんが、私の足をがっちり掴んでいたのはその女性だったと今でも思っています。
 それ以来、海に行く事はありますが泳いだりする事はなくなりました。

 

 

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