見出し画像

銀シャリ亭で天唐定食を食べながら鬼滅の刃を読むアラサー男子

最近、夕飯を食べる場所に困る。私は仕事が非常にマイペースなので、気付けば21時とか22時とかになっていて、「あ、夕飯」となるのだ。

21時までに気付けば大学時代から愛して止まないママデリカのお弁当が配達してもらえる。しかし、配達は2個からなので必然的にただでさえボリュームが凄い弁当を2人前食べることになる。

最近は営業時間を短縮しているお店も多い。会社のすぐ近くには24時間開いているすき家もあるし、ガストもあるのだけど、すき家よりは吉野家派だし、ガストはデリバリーのセットがコスパ良すぎてお店で食べる気がしないのに、それも1人前の量ではない。

ということで、先日、23時ラストオーダーの銀シャリ亭に行った。昔は世安店が行きつけだったが、今回は清水店。初めての来店だった。

昔よく食べてたサービス定食がなかったので、唐揚げが10個乗った「天唐定食」を注文した。ご飯は特大盛、600gである。通常、ご飯を特大盛にするには+70円かかるのだが、天唐定食だけは無料で特大盛にできる。しかも小鉢も選べる。私は毎回、半熟卵にしている。

注文を待っている間、本棚から漫画を拝借することにした。手にとったのは今、大人気の鬼滅の刃である。AmazonPrimeでアニメは見たが、続きが気になっていた。1巻から読もうと思ったのだが、誰かに先を越され4巻までごそっとなくなっていた。邪道であると思いながら、アニメの続きから読めばいいかと7巻から手にとった。

意外なことに、ハマってしまった。アニメ版を先に見た立場からすれば、制作をufotableが手掛けたこそのクオリティかと思っていたが、当然ながら原作も面白いのだ。「天唐定食」がとどいたが、鬼滅の刃が気になって仕方ない。普段はこんなことは決してしないのだが、ついつい読みながら食べるという行儀の悪い食べ方(読み方?)をしてしまう。独身男子を咎める者は誰もいない。

気付けば、「天唐定食」はなくなっていたが、その後も漫画喫茶気分で読み続け、8巻までの2冊を読み上げた。ちょっと泣いた。ちなみにいくら美味しくとも唐揚げ10個は飽きる。銀シャリ亭の唐揚げは衣がちょっと固めに揚げてあって食べごたえが十分なのだが、飽きる。だから、半熟卵を溶いて唐揚げを浸して食べたりするが、卵は卵で食べたほうが美味しい。鬼滅の刃に集中していたせいで、気づいたら完食していたのだが。

数日後、気付けば私はまた銀シャリ亭にいた。「天唐定食」をご飯特大盛で頼んだ。小鉢はもちろん半熟卵だ。今回は別料金でマヨネーズもつけてもらった。そして、本棚に向かう。なんと、1巻から7巻までごっそり消えていた。さすが人気漫画、恐るべき競争率だ。しかし私が読むべき9巻はあった。気付けばラストオーダー後までいて、12巻まで読んでいた。付け加えると、マヨネーズの効果は偉大である。これで995円である。1000円出すと5円お釣りが来る。

次に銀シャリ亭を訪れたとき、私は絶望した。「9月から唐揚げ定食もご飯増量は+70円」との張り紙があったからだ。300g増えて+70円なのだから安いものなのだが、それでは「天唐定食」が1000円を超えてしまうのだ。1食に1000円かけるのは貴族だ。私のような庶民にとっては、たまにの贅沢なのだ。8月中に鬼滅の刃を読み終わろうと決め、「天唐定食、特大盛、小鉢は半熟卵で、単品のマヨネーズもお願いします」と呪文を唱えるかのように告げ、本棚に向かう。この日は14巻まで読んだ。15巻は誰か他の人が読んでいた。銀シャリ亭には最新刊の21巻まで置いてある。なんとか間に合うだろう。

初めて2日連続で銀シャリ亭に来てしまった。また呪文を唱えて本棚に向かう。これを続けていたら店員の中であだ名をつけられそうだ。15巻はなんとか手にとれたが、その後の16巻がない。これはまずい。1冊だけしか読めないとなると月内に間に合わなくなる可能性がある。店内を見渡す。鬼滅の刃を読んでいる客は3人。いや、私を含めたら4人だ。…多くね?しかし、巻数は読み取れない。みんな食事中であるからにして、私が15巻を読んでいる間に誰かが16巻を読み終え、本棚に戻してくれることを希い、席につく。そして気づいた。カウンター席の向こう側(銀シャリ亭のカウンターはテーブルの真ん中に壁があるタイプで、壁の下が空いていて調味料が置いてある)にいるおっさんが16巻を読んでいる。しかも手元に3冊持ってやがる。おそらく17巻と18巻を手中に収めているに違いない。なんてやつだ。「天唐定食」を食べてながら、15巻を読み終えた。前を見るとおっさんは17巻を読んでいた。カウンターの壁穴からおっさんに声をかけた。「すみません、16巻読み終わってたらもらえませんか?」おっさん、なぜか吹き出して16巻を貸してくれた。16巻を読んでいたら、おじさんが17巻と18巻も渡してくれ、私の読み終わった15巻を回収し本棚に戻しれた。いい人だ。でも、こんな読まねぇよ。とりあえず17巻まで読んだ。結構泣きそうだった。

ということで、今日もまた銀シャリ亭に向かおうと思う。これで3日連続だ。もはや日課となっている。もちろん、頼むのは「天唐定食、ご飯特大盛、小鉢は半熟卵で、単品マヨネーズも」だ。本棚で18巻と19巻を手に取る。もういっそのこと21巻まで4冊持ち去ろうと思ったが、先に持っていくのは2冊までというマイルールがある。他に読みたい人がいるかもしれないからだ。これが大人の礼儀というやつだ。そして涙を堪えながら「天唐定食」を食べ、19巻を読み終えた。決めた。21巻まで読んで帰ろう。今日、すべてを終わらせよう。本棚に向かうと、20巻は誰かに持ち出されていた。やはり4冊持っていくべきだった。大人の礼儀なんてクソ食らえだ。20巻は次ということにして、この日は帰ることにした。いつも通り995円を1000円札で払う。新人の名札をつけた店員の女の子は間違えて50円玉を渡してきた。間違えてますよ、と伝えると顔を真っ赤にしていて可愛かった。うん、やっぱりまたこようと思った。次回こそ、最終巻まで読んでやるのだと誓った。

そして、とうとう最後の日がやってきた。

いつものように「天唐定食、ご飯特大盛、小鉢は半熟卵、単品マヨネーズ付き」を頼む。そして、20巻、21巻を手に取る。冷静に考えたら、1回のお会計の金額で鬼滅の刃の新品を2冊買えるのだが、もうそんなこと今更の話しである。天唐定食の唐揚げは、いつもより熱々で美味しかった。今まで食べていたのは揚げたてではなかったようだ。本当、今更だよ。10個の唐揚げを食べ尽くし、2冊のコミックを読み終わったとき、なぜか寂しい気持ちに襲われた。

鬼滅の刃は、完結していない。今後、22巻以降が出たとき、私は再び銀シャリ亭に足を運ぶだろう。それまで「天唐定食」もお預けだ。お会計のとき、先日と同じ店員だったが、今度はしっかり5円のお返しだった。ありがとう、22巻が出たら、またよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?