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Invert Hourglass新曲「Sunset become the Lenz」についての解説 - 初めて人に向けて曲を作った。

新潟を中心に活動しているInvert Hourglassというバンドで、ベースとプロデュース全般を行なっております、Komaと申します。

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2024/03/14(木)にInvert Hourglassの新曲
「Sunset become the Lenz」をリリースしました。
ご視聴は是非下記リンクよりお願いします!

今回リリースした「Sunset become the Lenz」
Invert Hourglass史上、最もストーリー性が強い楽曲です。

今回はシングルとしてのリリースのため1曲だけしか触れません。
が、1st EP “Leaving. And Beginning”のリリース時に公開した解説記事くらいにはボリューム満点の内容になるかもです。

この曲はホントに自分の思いを残しておかないと気が済みません。
長くなってしまうと思いますが、ぜひ最後までご覧いただければと思います。

1.人生で初めて人に向けて曲を書いた
2.楽曲の世界観
3.楽曲の聴きどころ
4.この楽曲を制作する時、助けになったもの
5.最後に

1.人生で初めて人に向けて曲を書いた

リリース日のちょうど1年前、親友が亡くなってしまった。

急すぎる別れに何も考えられなくなってしまった。
後悔ばかりが自分を襲った。

この頃、1stEPに収録されている「Curse of my hands」という楽曲のMV撮影の間近でした。

1stEPの記事見てもらえればわかると思うんですが、
「過去への執着から脱却する」というテーマで制作した作品です。

「バンドとして」はこのEPから大きく飛躍ができたし、確かに脱却できた。

しかし、この出来事は自分を「後悔」という形で
「過去の執着」から脱却させてくれなかった。
むしろますます執着することになってしまった。

その執着することになった「後悔」から脱却するために作ろうと決めた。

……….テーマどうしよう?
せっかく作るなら、彼に少しでも関連するストーリーが欲しかった。
彼のことについて考えてみた。

彼はカメラマンだった。
Invert Hourglassとなってからの初ライブでカメラマンをしてくれた。

彼に撮ってもらったお気に入りの写真

2022年に新潟バンドの登竜門的な「CHECK MATE」というイベントがあって
そこに初めて出るって言ったら、彼は大喜びしてくれた。
「やっとか!!」って。
この日、彼は泣きながら俺たちの事を撮ってくれた。今でも覚えている。
自分たちの繁栄を誰よりも願っていたと思う。

考えること数時間。
自宅に帰って写真を見返していたら一枚の写真が目についた。

海に遊びに行った日に、夕日をバックにした写真

………….これだ。

カメラが夕日をしっかり捉えていた。
もし夕日がカメラのレンズだったら……。

ふと思いついた考えだったが自分自身でとても納得がいった。
「Sunset become the Lenz」というタイトルはすぐに決まった。

「どうか俺のことを、夕日というレンズ越しに見守ってほしい」
今回の主なテーマです。

今まで自分自身を奮い立たせたりする為に曲を作っていた。
けど今回は違う。絶対に届けたい人がいる。
こんなにめちゃくちゃ悩んで作ったの本当に久しぶり。
多分仮バージョンだけで30ファイル以上は作ってました。

そんな今作の世界観を、次から解説していきます。


2.楽曲の世界観

2-1.タイトルについて

まず、今作のタイトルですが
「Sunset become the Lenz」- 夕日はレンズになる

まずツッコミどころが2つありますね。

▼1.becomeじゃなくて、becomesでは?▼
普通に考えればSunsetなので三人称単数。
本来はbecomeではなくbecomesになるはず

「やーい!間違えてやんの!!!」って
リリース前に言ってきた人も数人いました(笑)

ですが、以下の理由であえてbecomeに。

①曲名を読むとき
becomesだと
「サンセット ビカムス ザ レンズ」
「ス」と「ザ」でサ行が続いちゃって、滑舌悪い自分にとっては少し言いにくい…っていうこと(しょうもないかもだけど、曲名言う時とかに支障がなくなるのは結構大事な気がする!)

指摘してくる人を釣る。
……………..
(怒らないでください…………….)

▼2.カメラのレンズって英語のスペル「lens」じゃね….?
と思う方いると思います。

これはあえて変えています。
そもそも現実世界では夕日がカメラのレンズになるわけないし、今回は架空の世界を今回は描くので、変えました。

それに「Z」はアルファベットの終わりの文字です。「終着した人、モノが作る何か」という伏線にしたかったので、Z使うのありだなと。


2-2.楽曲の舞台

この楽曲には一つの世界があります。
その世界はもちろん現実世界ではありません。
ぶっちゃけ言えば、自分の中の仮想世界でしかすぎないと思います。

この「世界」にはいくつかの特徴があります。
弊バンドのVo.Yukiに特徴をいくつか伝えたうえで、
今回は歌詞を作成してもらいました。(歌詞は以下リンクから)

以下の内容はあくまで自分の視点で捉えているものなので、
もしかしたら作詞をしたYukiの内容とズレる可能性はあるかもです。

※以下、この項番で世界観と歌詞と関連する箇所は、
こんな感じ引用欄で歌詞を記載します。

▼この「世界」の時間を支配する「砂時計」が存在する

・・・ここにきて砂時計が出てきましたね。
バンド名のInvert Hourglassは「砂時計をひっくり返す」
という意味ですね。

※歌詞の関連部分
If I can invert for the hourglass
So What will do with the time to left

この「世界」のどこかに「砂時計」が存在します。
ですが、それはどこにあるかも分からないし
自分の意志でひっくり返すことはできません。
理由は次の項目で説明します。

▼夕方と夜のみを繰り返す

この「世界」は朝が来ることがありません。
「明日」という日を迎えることができない人が訪れる世界だからです。

夕方から始まり、夜が明ける前に時間が逆転し始めます。
そしてまた夜から夕方になり…夕方から夜になり….

夕方⇒夜⇒夕方⇒夜…..という無限ループがこの世界では起きています。

歌詞の中の「Morning without you coming again」という箇所は、
現実世界の視点で書かれています。恐らく。

先程は「砂時計」が自分の意志で動かすことができないと説明しました。
この時間が逆転すると同時に、「砂時計」の中の砂はひっくり返さずとも逆上がりを始めます。

砂の流れと、時間はこの世界で連動しています。

砂が落ちる=時間が進むこと。
砂が逆上がりする=時間が戻っていること。

時間が進んで戻ってって感じなので、
当然時間の流れで起きるありとあらゆる現象は発生しません。
例:花が枯れる、老化する

※歌詞にもこの時間の概念の描写があります。
Bouquet of flower handed over Never withers But never grow

「砂時計」の中にある砂の一粒一粒は「記憶」とも繋がります。
砂の数だけ、その人が持っている記憶が存在する。

この「砂時計」はこの「世界」にいる一人につき一つ、固有で存在します。
どこにあるのか…あえてここは答えだしません。考えてみてください。

▼他の世界からこの「世界」に対しては直接干渉できない

….んまあですよねって感じ。
俺たち、誰もいなくなった人と再会したことがある人って誰もいないはず。
だから干渉することは一切できないに決まっています。
しかし、逆は制限されてはいますが可能です。次の項目へ。

▼夕日がこの「世界」を照らす瞬間、他の世界を見ることができる

夕方と夜を繰り返すこの「世界」で唯一太陽が昇っている瞬間です。
この瞬間だけ、夕日をレンズ代わりにして他世界を見ることができます。
それが今回の曲名である「Sunset become the Lenz」のメインシーンです。

今までで説明した、この「世界」の特徴と照らし合わせると、「夕日が昇っているとき」の重要さがだいぶ強調されているのではないでしょうか。

When this sun sets on the horizon,
What do you reflect over lenz?

現実世界で考えてみるのですが、「夕日が出ている時間」って結構太陽が昇っている状態の中でも割合的に少ないですよね。
しかもこの「世界」では、その「夕日」しか昇らないとなると…
めちゃくちゃ短い時間ですよね。

限られた干渉しかできないんです。

この世界観を描くのに避けた表現

歌詞の中で、「死」「生」という単語を
あまり使用していないことにお気づきでしょうか。
「これらの言葉は絶対に使わないでほしい、避けてほしい」と
歌詞作成の時には伝えました。


2-3.「この世界」にいる彼にどうしてほしいのか?

▼自分のことを見守り続けてほしい

この曲を、自分達はこれから色んな場所で披露していくと思います。
アイツの想いを背負うつもりで。

夕日というレンズ越しに見た、自分の姿が彼にどう映っているだろうか。
もし見ていてくれているのであるならば….もっと彼に良い姿を見せてやりたいし、良い景色を見せてやりたいです。

▼自分には見せなくていいから、俺を撮り続けてほしい

とにかくずっと自分のことを撮っていてほしいんです。
でも世界が違う以上、自分たちに見せる手段ってないと思うんです。

カメラで撮影すると容量を使用すると思います。
あえてストレージという表現をYukiに提示しています。

Until meet you again sometime soon
Close in your storage

自信が持つストレージにさえしまっててくれれば、それだけでいい。
俺には見せなくていいから。

▼自分を認識してほしい。

時間が進まず夕方と夜を繰り返す「世界」にいる彼と、
これからも時間を進んでいく自分達は、少しずつ姿が変わると思います。

いつか再会することになったとき、
彼は自分のことを認識してくれないかもしれない。

でも、夕日を利用して自分らを写真を撮り続けてくれれば、
姿形が変わっても、その時は自分のことを認識してくれるんじゃないか。


陽が沈む情景に君は何を映し出す?
いつかこの夜が明けたら、相変わらずな君を迎えに
夕日を纏ったレンズの奥に、朝焼けの炎を見るまで
砂時計に掛けた運命が終わりを迎えるその時まで

ラストパートの歌詞です。
Invert Hourglassの楽曲の中でも日本語が目立って入っているパートです。
初めて聴いた時ビックリした方多いのではないでしょうか。

これマジで初めて形になった時は本当に感激しました。
2-3.の内容ほぼここに関連している感じです。

3.楽曲の聴きどころ

ここからは楽曲の内容に入ります。

3-1.全体を通してアンビエンス感を強調していること

今回は過去作で言うEnd of the SpiralやCurse of my handsに近い、
アンビエンスとヘヴィネスを折り合わせた方向性になってます。

今まであまり話していませんでしたが、
Invert Hourglassのこの系統の楽曲は
「4単語で構成されている」という共通点があります。

End of the Spiral
Curse of my hands
Sunset become the Lenz

4単語だと、曲名だけで主題がすぐ分かるので……….
今後4単語の曲が出てきたら「エモい系だ!」と思ってください()

ここ最近出したPeacebreakやBlindとはだいぶ方向性は大きく異なりますが、内容が内容だけにこの方向で今回は作ることにしました。

楽曲全体を通してアンビエントサウンドがどこかに入っています。
ただ、それらが全く同じ音ではなくてちょびちょび違う音に切り替えてたりしています。

最近よく使用するのが、ピアノの単音のノートをリバーブのMixパラメータを100%にしてパッドサウンドの代わりにするとかいう強引なやり方をしているのですが、案外バレません。

よく「このパッドの音は何のプラグイン?」って話貰う時もあるんですが、
「実はそれギターから作ってるよ」みたいな話をたまにします。

とにかく色々こねくり回して作り上げているサウンドです。

3-2.サビの転調

この曲を作るのに恐らく最初に悩んだ箇所です。
ラスサビを考える=最初のサビ考えるだったので。
予め前半後半で転調するってのだけ決めてました。

以下サビのところ(1:52~くらいから始まります)

あんまり音楽理論的な話するのめんどくさいなと思うんですが、
この項番だけお付き合いお願いします……………。
つか、自分もめちゃくちゃ詳しいわけじゃないです。
(コンポーザーやってる癖にね…..)
でもだからといって曲作るなとか誰も言わないと思うし。
作りたいの作りましょ精神です。

サビ部分は前半、後半でキーが異なります。
前半:A#ナチュラルマイナー 後半:Fナチュラルマイナー

この前半と後半を切り替えるタイミングの音どれにしよう…?
ってことで1秒もないパートに2日も考えるとは思いませんでした(笑)
最終的にCmコードに落ち着きました。

構成音的にC・G・D#だと思うのですが、
A#マイナー基準:CとD#はスケール内だがGは外れている
Fマイナー基準   :全てスケール内
となります。A#ナチュラルマイナーから1音のみ外れていますが、他はFナチュラルマイナーの範囲内に収まるのでこの音が違和感なくスッと転調できるなっていうだけの理由です。

転調した後、ドラムの手数だいぶ少なくして壮大さとヘヴィネスさを強調させています。

ラストはテンポが落ちた状態でもう一度サビに入って、
転調後の状態でさらにもう一回落として、さらにもう一回!(語彙力)

エモい状態のまま落として終わるという構想、実はCurse of my hands時代にもあったのですが全然形にできないまま空想だけで終わってしまっていたので、今回実現できて本当に良かった…。

3-3.日本語パート

もう説明不要!だと思いますが、もう一回ラストパートの歌詞。

陽が沈む情景に君は何を映し出す?
いつかこの夜が明けたら、相変わらずな君を迎えに
夕日を纏ったレンズの奥に、朝焼けの炎を見るまで
砂時計に掛けた運命が終わりを迎えるその時まで

レコーディングの時、結構こだわった部分が
「明けたら」「奥に」という箇所。
聴いてるとわかると思うんですが、他の歌詞が8分音符で基本歌っているのに対してこの部分だけあえてずらしています。
日本語の独特の臭さってこういうところで出しやすいなぁ….と。
せっかく日本語詞入れるなら遊んでみたかったっていうだけなんですけど、
やって大正解だった!!!!気がします。

4.この楽曲を制作する時、助けになったもの

もはや俺の趣味全開の内容になっていますが、コンセプトや世界観を作っていく上でめちゃくちゃ手助けになったものを、ジャンル問わず紹介します。

ゲームが多いです。
楽曲の解説でゲーム紹介している人あんまりいないんじゃないかな….
内容を細かく触れてしまうと書ききれないので簡潔に書きます。

4-1.DEATH STRANDING

「メタルギアソリッド」シリーズの小島監督が「KOJIMA PRODUCTIONS」を立ち上げてから初の作品である「DEATH STRANDING」です。

この世界では生命を終えたときに「魂」だけが「ビーチ」といういわゆる三途の川みたいな場所に飛んでいく感じになります。
話の内容がだいぶ難しくて解説しきれないので興味ある方は是非。

参考になった部分どこ?って感じですが、
「死生観の独特さ」に着目しました。
特殊な死生観を描くためののヒントはここからです。

4-2.MGSV:TPP Ep.43 「死してなおも輝く」

「また小島監督作品かい!」って感じですが….
めっちゃ好きなんですよ小島作品。

ステルスクションとして名高いMGS:V TPP
このミッションの場面からだいぶインスピレーションを受けました。

自分の拠点となる基地の中に奇病が流行ってしまい、感染した部下のスタッフを自分の手で殺害しないといけないという….重い内容になっています。

その後、主人公スネークは仲間の灰を海に流そうとするスタッフを止めて、
「仲間の灰でダイヤモンド作って、それを戦場に持っていこう」と言い出すのですが….

自分と照らし合わせて、「この曲を色々なところでやっていく」という点でこの曲の制作目的がしっかり出来上がったと思います。

セリフを言う場面も、夕方じゃないかもしれないですけど結構雰囲気的にマッチしている感じしますよね。空想上のイメージをだいぶ明確化してくれました。

余談ですが、彼はロシア語が得意だったんですよね。
このゲームではロシア語を話す兵士が敵として出現するのですが、
ある日彼がそのロシア語兵のセリフを完コピモノマネしてきて、
まじで面白すぎました(笑)


4-3.幻想水滸伝2 回想

楽曲全体の雰囲気としてのインスピレーション・リファレンスとして。

ストーリー序盤で少年兵として出兵する前の、幼馴染たちの昔の日々が描写されるシーンで流れるBGMです。
(PS1のゲームのサントラ、サブスクにあるの神過ぎる!)

この楽曲のキーもSunset become the Lenzと同じA#マイナーだったので、めちゃくちゃ都合良かったんで聴きまくりました。

現在リマスターが開発中とのこと!
去年に発売延期になってしまったのですが、なんとか完成させてほしい….

4-4.Chalk Hands - Don't Think About Death

やっとバンドの紹介です。ちょっとマイナーかも…?
前に自分の先輩から教えてもらったんですが、
UKの「Loud Sad songs」と自称するChalk Handsというバンドの雰囲気はだいぶ感性を揺すぶられました。

全体的に乾いていて質素な感触のサウンドに、そこに入る叫びが良い感じにマッチしてとても哀愁感がたまらないです。まさに「Loud Sad songs」。
悲壮感の雰囲気とか、とても参考になりました。

4-5.ゼルダ無双「Eclipse of the Moon」

最初のサビの前のアンビエントパートはもはやこれです。(公言)

ちょっとゲームの内容は難しかったですけど。
このゲームマジで神曲ばっかりなんですよ……………….
この曲と対になっている「Eclipse of the Sun」もおすすめです。

5.最後に

ここまで見てくださって、ありがとうございました。
1曲の解説でまさかここまで書くとは自分も思っていませんでした。

先日、彼が眠るお墓、そして両親に挨拶しに家を訪ねることができました。

遅くなったけれど自分の想いや、今回曲を作った経緯、
やっと色々伝えられて本当に良かったです。

どういうわけなのか、その日は雲一つない快晴。
夕日がめちゃくちゃ綺麗に空に映っていました。

そんな漫画みたいなことあるかよ…..と思うくらいに。

やっと自分自身としても、この1年くらい落ち着かなかった気持ちを整理することが出来た気がします。だいぶ心が楽になりました。

前の項目でも書いたかもしれませんが、改めて。
この曲を色々な場所でやれたらと思っています。

どこでライブしていても、アイツが見守っていてくれるように。

今回はこれで以上になります。
また、更新する機会がありましたら、ぜひよろしくお願いします。


P.S 次の新曲はパワー満点系です!!!!!!!!!!


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