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波羅ノ鬼(ハラノオニ)という存在について②

はじめに

2020年4月28日、YouTubeにてVirtual Artistの波羅ノ鬼さんの2nd MVが公開された。
まずはこのMVを見て欲しい。

『トラウマ』
間違い探しをしていた 何を選べればよかった
そもそも出会わなかったら 今頃は
2人歩いた交差点 こんなに人で溢れてる
どうして君じゃなきゃダメか わかってる
上手く馴染めない性格 置いてけぼりの毎日で
人と関わらなくたって 生きれるよ
足りないものだらけだった 大丈夫なふりをしてた
心の隙間を笑顔で 埋めてくれたね
君を失ってから 信じることできずに
まだ迷ってるよ
私優しい人だってずっと 疑うこともしないで
好きだったの

トラウマフロイド 教えてくれよ 痛みが喉を締め黙らせる
前に進みたいのに
愛したいと胸が叫んでいる 傷つかないでと頭が言う
振り払いたいよ もう何にも
信じられないほどに 裏切られたんだ
理解してる

間違い探しをしていた 言葉を選べなかったよ
うまく話せていたのなら 今頃は
少なくともこんな風に 傷口塞げないままで
虚ろに眺めてるだけの 私じゃなくて
死にたい妄想それならどうぞ
鬼さんこちらで飛んじゃって
何回やっても詰むだけのゲームだし
感情裂傷漏れ出す愛情垂れ流してるんだ
腐った世界に ばいばい
消えたい妄想それでも現状這いつくばっても死ねなくて
行き場なんてなくて辛いや このままじゃ
何もかもがもう怖くて踏み出せないんだ
全部君のせいだと 言ってしまいたいくらいに
嫌な人だ 私
1人でも生きれると 強がって見せてたんだね
嘘吐きだね

トラウマフロイド 爛れた体 きっと誰も見たくなんかない
でも私は逸らせない
傷と戦う心をください 愛するための勇気をください
神様お願い 優しさがね 怖くなるほどに今
刻み込まれてる
どうすればいい?

トラウマフロイド 抱きしめたなら きっと不幸にしてしまうよね
また失うのは 嫌だ
1秒だって無駄にできない 傷つかないでと頭が言う
振り払わなくちゃ 早く

燃え滾るように自分が憎い トラウマなんて振り払えばいい
良い訳なんかいらない
自分よりも守りたい人に 愛していると伝えられたら
世界は変わるよ
下弦の月
埋めてくれるのはそう
君だと信じて ただ進もう

むかしむかしあるところに

おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは やまへしばかりに
おばあさんは かわへせんたくに

ここまで読めば日本人の多くはこの話が『桃太郎』とわかるだろう。
『桃の実から生まれた男子が、吉備団子で犬・猿・雉を従えて、鬼ヶ島で鬼を退治する』
親が子供に読み聞かせるような、日本古来の勧善懲悪の物語である。

スクリーンショット 2020-04-28 20.12.28

波羅ノ鬼さんの『トラウマ』のMVでは、彼女が幼少期に受けたトラウマが桃太郎によってなされたことが、彼女の歌声とともに語られている。

角が片方しかない鬼の女の子がいました

拙著のnote「波羅ノ鬼(ハラノオニ)という存在について」で波羅ノ鬼さんのバックボーンについて、以下のように記した。

・片方の角しかないため、同族に迫害されていた
・母親(育ての親)のような大切な存在がいて、それがすでにいない
・歌うことが彼女の存在証明である

『トラウマ』の冒頭でも、幼少期の波羅ノ鬼さんが同族に虐げられている様子を伺うことができる。
また、母親(らしき鬼)との幸せな生活が描かれていたが、彼女の幸せな時間は桃太郎によって終わりを告げる。

『勧善懲悪』

勧善懲悪(かんぜんちょうあく)は、「善を勧め、悪を懲らしめる」ことを主題とする物語の類型の一つ。勧懲(かんちょう)とも略す。
Wikipediaより

私は『桃太郎』の物語において、鬼は「悪」でそれを懲らしめた桃太郎は「善」であるという認識をしていた。おそらく多くの人もそうだろう。
しかし、なぜ鬼が悪なのか?桃太郎の行為が善とどうして言えるのか?と聞かれると、幼少期に漠然とした物語でしか聞いていない『桃太郎』を論理的に説明できる知識はない。そして『桃太郎』はそういう物であり、疑問に思った事がないからだ。

私が見た、正義と悪
『トラウマ』概要より

自分が思う善悪の価値観がいち方向の立場でしか見ていない事、主観的な価値観が時として簡単に覆ることを、このMVでわからされてしまった。

そして、同時に彼女の境遇に涙した。自分のせいで、最愛の人が目の前で...彼女が抱える心の傷と絶望がいかほどかなんて想像もつかない。

鬼の女の子は大好きなお母さんと幸せに暮らしていました

波羅ノ鬼さんをより理解するために、現状の自分の考えと疑問をまとめようと思う。
・鬼の彼女が現代日本にいる
『余命宣告』で波羅ノ鬼さんが渋谷を歩いているのが不思議であった。
『トラウマ』のラストで稲光のあとに波羅ノ鬼さんが桃太郎の前からいなくなったことから、何かのきっかけで時間・空間を飛び越えて現代日本に来た可能性がある。

・『余命宣告』と『トラウマ』に出てくる女性は別である
両MVで女性が出てくるが、『トラウマ』では角がある鬼族の女性、『余命宣告』では角がない(おそらく)人族である。また、二人の髪色や服装が異なる事から、別人の可能性がある。

女性

・波羅ノ鬼は記憶喪失ではないか?
『トラウマ』のサビにある「トラウマフロイド」のフロイド(Freud)はオーストリアの精神科医「ジークムント・フロイト」を指していると考える。
フロイトの提唱した「抑圧された記憶」を引用する。

オリジナルの「抑圧された記憶」の概念を提唱したのはジークムント・フロイトである。彼によるとこの記憶は性的虐待の記憶の耐えられない苦痛から発生し、その記憶は無意識の領域に封印され、それが意識に影響を与え続けるのだという。
フロイトは1896年に『ヒステリーの病因について』を発表し、ヒステリー患者の女性は幼児期の性的虐待が独: Trauma(トラウマ→心的外傷)となり精神疾患を引き起こすとする「誘惑理論」を公表した。彼は女性12人、男性6人の患者を診察し、一人の例外もなく幼児期に性的虐待を受けていた事実を突き止めていた。ところが、この1年後、前説が変わり、性的虐待の事実は無く幼児性欲による幻想であると唱えた。ただし、同時にそれらの外傷的な記憶は心の真実として意味を持つとしたため、決していい加減に扱っていいと唱えたのではない。
wikipwdia「抑圧された記憶」より

『余命宣告』の女性は現代で出会った女性であると私は考えており、時系列的には、『トラウマ』、『余命宣告』のMVの幼少期、現在に至ると考える。
『余命宣告』の2番Bメロの回想シーンでは笑顔を見せる幼少期の波羅ノ鬼さんが描かれているが、『トラウマ』の出来事の後であのように笑う事が出来るだろうか?普通ならば難しいと考える。
このことから、私は、波羅ノ鬼さんは母親の死によるトラウマから自らを守るために無意識に記憶を封印しており、記憶喪失状態にあるのではないかと考える。
では、『トラウマ』の最後に花束を手向けた相手は誰なのか?という疑問も生まれる。

・波羅ノ鬼の角を壊したのは誰か?
『余命宣告』で波羅ノ鬼さんの角が同じ鬼族によって壊されていたが、もし彼女が現代日本に飛ばされていたら、鬼が角を壊すのは難しくなってしまう。
(以下2020/04/29追記)
仮に記憶喪失な波羅ノ鬼さんが現代日本で育ての親の人間の女性に「人間」として育てられたとする。そこに角がある波羅ノ鬼さんへ人間からの迫害があったとしたら、その恐怖の対象が人間が一般的に思う「鬼」へとすり替わっている可能性は否定できない。コレもフロイトの「抑圧された記憶」による意識への影響の一つと言えるかもしれない。

・波羅ノ鬼に歌を教えたのは『余命宣告』の女性か?
『余命宣告』の2番Bメロの回想シーンの歌詞で、女性が「あの日傍で歌ってくれた歌」とある。波羅ノ鬼さんの存在証明になった「歌」は現代日本で出会った女性から教わったものと考える。
また、『余命宣告』の間奏の語りの部分では、

「変わり者の私を 横目に過ぎ去っていく」
「ある人間は笑う」
「こんなところで歌うなって迫る」
「だけどもうこれくらいしかないんだ」
「これを譲ったら私は私じゃないと思うから」
「私が私である証明を」

とある。
前回のnoteでは読み流していたが、ここではっきりと「人間」という言葉が書かれており、「歌」と出会ったのは現代日本であることが予想できる。

・波羅ノ鬼はなぜ犬が好きなのか?

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波羅ノ鬼さんの嫌いな物は「豆・桃・雉・猿」であり、一方で好きな物は「犬・カエル」である。
仮に波羅ノ鬼さんが記憶喪失だとして、なぜ記憶がないのに「桃太郎」のお供が好き嫌いにあるのか?これは、先ほどの「抑圧された記憶」の文章から考察できる。

記憶は無意識の領域に封印され、それが意識に影響を与え続ける

とあることから、記憶がなくても無意識に好き嫌いとしてあるのではないかと考える。通常なら全て嫌いな物になるだろうが、何故犬が好きなのかは今後語られるかもしれない。

さいごに

今回の『トラウマ』は2月3日にYouTubeに投稿された「波羅ノ鬼 新プロジェクト始動」の一つであろう。
すでにLIVEなどで歌われていた『ねがいごと』や『「」』(くうはくと読む)の既存曲のMVではなく、完全新作の楽曲で驚かされた(実際には2月3日の動画でBGMとして流れていた)。
今後、波羅ノ鬼さんとONI PrOがどのような世界観を見せてくれるのか楽しみで仕方ない。

前回と同様に、オニさんの活動を微力ながら応援する思いを込めて、まとまりのない文章であるがオニさんに対する私の考えを書いた。
ぜひ、皆さんの考えや想いを聞かせていただけると想像が捗るし、何よりオニさんをさらに理解する一助になるのではないかと思っている。

2020.04.28
Kei_Waga(@k_waretuma)


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