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英語業界の歴史が変わる瞬間:関正生先生の最新刊『真・英文法大全』(KADOKAWA)

2022年3月30日発売の関正生先生の新刊、『真・英文法大全』(KADOKAWA)を読了しました。

以下、僕自身の感想をまとめます!

1. 全体の構成と見どころ

この本は関先生の集大成ですから、これまでの本や授業・講演で培われてきた解説力の神髄が随所に盛り込まれています。大学入試、資格試験、さらにはビジネスの現場でも通用する英語が学べる汎用性の高い本です。最初のページを開くと、どんな方向に進んでくのかの「見取り図」が示されています。面白い仕掛けなので、月刊漫画の付録を開くような楽しさがありました。そして、いつもながら章立ての工夫にも目が行きます。

Part 1 英文法の大枠をつかむ
Part 2 品詞の力・文型の力
Part 3 「準動詞」を攻略する
Part 4 「中学英文法」を昇華させる
Part 5「構造」を意識する 

関正生『真・英文法大全』目次より

それぞれのPartが有機的に繋がっていて、この手順で学ぶと英語ができるようになるよと、グイグイ引っ張ってくれるような構成です。計算された構成のつくり方は講師としても著者としても大変勉強になります。

さて、核心をつくスタイルが魅力の関先生の本の中で、これまで以上に目を引くのが「英語のリアル」や「細かい知識」にも多くの紙面を割いて解説してくださっていることです。しかも、その細かい知識にもちゃんと理由があり、「こういう場面で使うんだ」ということを明確にしてくれています。必要のない知識には触れず、「実用性」に徹頭徹尾こだわっている本です。

僕は関先生は「ハイレベルも」(ご経歴から考えても、日本最高峰の慶応の英米文出身で、かつ永田塾や北予備でもトップ層を見てきたのですから当然です)得意な先生と常々思ってきました。僕自身、大学院を修了し、プロの翻訳家や著者としても仕事をしている身から言っても、本書で解説されている内容はプロとして活躍する上で欠かせない知識だと断言できます。

英語を書く時に悩みやすい複数名詞とaの使い方も解説され(ここまで行き届いた本はまずありません)、きっと英語を使いたい人にとっても目からウロコです。

僕が個人的に面白いと思ったのは、必要に応じて解説のレベルが読み分けができる点です。例えば、p. 819の前置詞+関係代名詞+to+動詞の原形の形は入試だと阪大や京大などで重要な知識なのですが、ここまで気配りがされていました。これは「発展」と書かれている点が気遣いで、よりハイレベルを目指す上で欠かせない知識なのです。実際に英語の運用をする観点からまとめられたin order to+動詞の原形やso as to+動詞の原形の比較リストも大いにタメになります。

とまあ、色々書いたのですが、これまで以上に関先生が真価を発揮されていることは間違いありません!

2. 個人著者のメリット!

 この本は通読が可能な本です。900ページ近い大著ですから、当初明日の発売後から1週間くらいはかかるだろうと考えました。実際にはページをめくる手が止まりませんでした。正味1日~2日ほどで読んでしまいました。そのくらい読むことが楽しくなる本なんです!英語業界の歴史が変わる瞬間を肌で感じたので、一気に通読してしまいました。

この本は著者の哲学を貫いた本です。実は我々が名著と考える本には何かしらのエッジが効いているものです。予備校で常に最前線の講師として活躍し続け、今ではその枠を大きく超えて活躍されている関先生がそのスタイルを貫き、総合英文法の本を書き上げたことに敬意を表します。

「英語の核心をつかみ、頭を使って英語を理解すること」が関先生のスタイルであり、この本でもそれは一貫しています。総合英文法の本は多くの場合、監修者を立てて複数人で執筆というスタイルを取ります。これは複数の比較検討や学校採用も考慮に入れてのことですが、「色がない」と感じることも多いです。(選択肢があるのは良いことなので、僕自身ジャンルによってはそういう総合知を好む場合もあります)そんな中、予備校出身の関先生がその枠を超えて大著となる総合英文法書を出版するということは、業界の歴史が変わる瞬間とも言えるかもしれません。

僕自身大学の時にシェイクスピアを原典で読む力をつけるために細江逸記博士の『英文法汎論』を通読しました。「一人の著者」がたどり着いた極致を垣間見ましたし、一冊読み終えた時の感動は今でも覚えています。哲学の貫かれた英文法書の通読は知的感動を生むのですね。

この本はそんな知的感動を得る読者を多く生むのではないでしょうか?そして、業界にとっても予備校講師から進化し、今では英語教育の世界全体にも影響を持つ先生の活躍は我々講師にとっても大いに刺激となります。

3. 体得する価値がある例文が通好みです

 例文は一般的な学校採用の総合英文法書よりも、かなり読みごたえがあります。決して簡単ではないです。しかし、学習効果が高い英文になっています。ちゃんと読む価値があります。関先生とタッグを組んだ執筆協力のKarl先生の例文も一つ一つにも血が通っています。(例文に登場する人物や例の遊び心も好きです)決して「教科書どおりの簡単な英語」ではなく、「リアルな英語」と「学習効果」の絶妙な塩梅を意識した例文ですね。TOEICや日本の学習者の共通するミスまで分析できる関先生とKarl先生だからこそできる仕事です。その「歯ごたえ」が読者を次のステージに進ませてくれるつくりになっています。

★感動ポイントに付箋を貼り付けるのも、通読の醍醐味!

時折登場するKarl先生のコメントも、教養あるネイティブの観点やホンネが学べて楽しいです。ネイティブの意見にも複数あるので、「どういう意見に耳を傾けるべきか」を磨くきっかけにもなります。

通読後に復習で勧められている例文の復元も強く推奨します。Karl先生とは土岐田自身も一緒に仕事をしたことがありますが、学習効果の高い例文をつくる職人技術が天下一品です。スピーキングやライティングを意識した日英の英文の復元は効果絶大なので、英検1級などの上位級やTOEICSWに挑戦する方にもオススメします。

この本は読み通す価値があり、例文も習得すると宝物になるようなものが使われています。Libartsの総合英文法書はどれをルートに入れるかずっと悩みましたが、迷わずこの本を入れることにしました。

関先生、素晴らしい名著の誕生、おめでとうございます。その労力に想いを馳せると同じ著者として敬意を持たずにはいられません。

僕を共著で出版の面白さに目覚めさせてくださったことにも心からお礼申し上げます。




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