大腸がん検診のお知らせ方法を変えたら、受診率が40%増えた

行政関係者のみなさまへ。そのお知らせ、市民に届いていますか?

行政から市民へ送られる通知には、様々なものがあります。健康診断のお知らせ、予防接種のお知らせ、マイナンバーカード取得のお知らせ、納税のお知らせ・・。それらはすべて、お知らせすることが目的ではなく、それを受け取った市民の、受診する、予防接種する、カードを取得する、納税する、といった行動に繋げることが目的だといえます。

たとえば、特定健診。お知らせをすることで、受診者が増え、特定保健指導数が増え、生活習慣病が改善し、医療費が適正化される。つまり通知は、それが市民に届き、市民の行動に繋がってはじめて意味を持つものといえます。

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市民に届ける、市民の行動に繋げるために

では、どうしたらもっと市民に届く、もっと市民の行動につながる通知に変えていくことができるのでしょうか。

私たちは、2つの鍵があると考えました。

1つめ:行動科学。通知文面を、人間の行動特性に基づく、より効果的なものに変えること。
2つめ:デジタル化。従来のハガキによるお知らせを、携帯電話のショートメッセージ(SMS)に切り替えること。

BetterMe(ベターミー)は、この2つの鍵によって、「もっと届く、もっと行動につながる」公的通知の実現をめざして開発されたプロダクトです。

1つめの鍵:行動科学

頭では検診を受けたほうが良いと分かっていても、行動できない。人は、往々にしてそんな状況に陥ります。人は決して、合理的な選択をするとは限りません。行動科学は、そうした人間の心理や行動の特性を解明していく分野です。

たとえば、次の2つはどちらが行動に繋がりやすいでしょうか?
 ●「年に1回はがん検診・特定検診を受けましょう」
 ●「〇月〇日、XXでがん検診・特定健診が行われます。〇日まで予約できます」

人間は、案内の目的や内容が瞬時にわからないと、時間をかけて理解することを放棄したり後回しにしたりする特性があります。裏返すと、明確な指示には素直に従いやすい、という特性があります。 BetterMeでは、こうした様々な人間の心理や行動の特性に基づいて、人がより自然に行動に移りやすい通知文面へと切り替えていきます。

2つめの鍵:デジタル化

BetterMeでは、こうした行動科学に基づくメッセージを、従来のハガキや広報誌ではなく、SMS(携帯電話のショートメッセージ)で届けます。このお知らせの「デジタル化」によって、3つのことが可能になります。

1)費用対効果の向上

まずは、コストが大幅に軽減されます。ハガキの場合、作製・印刷費や郵送費(約80円/通)がかかるのに対し、SMS送信費用は10~20円/通と、1/4以下になります。時間的コストについても、ハガキの作製・印刷・郵送にかかる時間が、SMSの一斉送信により大きく削減されます。

コスト削減の一方で、SMSは、ハガキよりも直接的に手元に届くため、開かれる・読まれる可能性が高まります。そのため、コストを下げ、効果を上げるという両面の改善で費用対効果の向上が期待できます。

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2)一人一人に寄り添う通知

行動科学に基づく「より効果的なメッセージ」は、1つではありません。明確な指示が効果的な人もいれば、「みんなが受けている」という情報が効果的な人もいます。人それぞれに、届く言葉は異なります。また、適切なタイミングも、人それぞれです。

BetterMeでは、一人一人の情報に基づき、最適なメッセージ、最適なタイミングを自動で選択し送信します。こうした「一人一人に寄り添う通知」は、ハガキでは限界があり、デジタルだからこそ実現可能といえます。

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3)現状を把握し、自動で改善

ハガキの場合、実際にどれだけ届いたのか、読まれたのか、行動に繋がったのかを把握することは困難です。現状が分からなければ、改善の術も見つけられません。

しかし、デジタル化することで、開かれたか・読まれたか・行動に繋がったかを、即時に把握することが可能になります。BetterMeでは、その情報を基に、効果が見られなかったものは、より効果的な文面やタイミングへと自動で改善していきます。さらに、そのデータが蓄積されればされるほど、機械学習が行われ、メッセージやタイミングの精度が高まることが期待できます。

 <SMSと携帯電話番号について>
SMSは、携帯の電話番号を宛先にして、短い文章を送受信できるサービスです。そのため、導入段階では、携帯電話番号を登録されている市民を対象に実施することとなります。なお、必要に応じて、弊社が携帯電話番号の取得からサポートすることも可能です。
また、SMS送信に対するクレームは、既存事業においてほとんどありません。ホームページに発信元の電話番号を掲載するなどの対策も有効です。

事例:沖縄県浦添市で大腸がん検診の受診率が向上

実際にBetterMeを活用して、2019年8月~2020年1月、沖縄県浦添市(人口約114,000人)で大腸がん検診の受診勧奨を行ったところ、このような結果になりました。 

結果① 受診者数、前年比+40%に

今回の事業対象者(40歳以上75歳未満の国民健康保険加入者、17,177人)の大腸がん検診受診者数は、2018年度の2,632人から 2019年度は3,661人(40%増加)となりました。

結果② 受診率、2倍に

大腸がん検診受診率は、事業介入対象者(SM送信や検査キットを直接送付した市民)が30.2%となり、非事業介入対象者(携帯番号未登録等のため介入対象外となった市民)の14.7%と比較して約2倍となりました。

※この実証では、SMSに加え、継続的に大腸がん検診を受診していない市民には大腸がん検診キットを自宅へ直接送付。これにより検診予約をせずに、検査キットの提出だけで受診可能になりました。

結果③ 6年以上受けていなかった層の受診率、6.5倍に

中でも、「過去6年間受診歴なし」の方だけに限ると、その受診率は(非事業介入対象者と比べて)約6.5倍にのぼりました。これまでのお知らせでは届かなかった方、行動に至らなかった方に、市のメッセージを届けられたことになります。

自治体職員の声

それまでにも、浦添市では、がん検診の受診率を上げるため、はがきの送付やポスターの掲示、電話での案内など様々な方法がとられていました。しかし受診率が伸びず、「何か新しいことを始めなければ改善されないのは数字からも明白でした。ただ、マンパワーも予算も不足していた」と言います。そこでBetterMeを活用することで、受診率向上を実現。その結果を受けて、市の担当者は次のように語っています。

● SMSでの案内を開始後、「受診方法を具体的に教えてほしい」「受診券をなくしたので再交付を」など、すぐに市民からの反応があった。 
● BetterMeのシンプルで強いメッセージが市民に響いた
● 大腸がんだけでなく、他の検診の受診率向上にも好影響を与えてくれた
● 初めての取り組みだったが、課内でわくわくしながら挑戦できた。
● 職員のモチベーション向上につながる、とても貴重な体験だった
● 自治体では、新しいことを始める際に組織内部での調整が多く、その段階でギブアップしてしまうこともあるが、今回は民間の力を借りることでクリアできた。
● 内部調整に必要な資料を用意し、エビデンスをもとに説明してくれたため、庁内の合意形成がスムーズになった
(出所:ジチタイワークスWEB 2020年6月29日 https://jichitai.works/article/details/324)

BetterMeの活用場面

現在、BetterMeは、大腸がん検診や特定健診、乳幼児健診などの保健分野での活用が先行しています。しかし、もっと市民に届く、もっと市民の行動につながる、新しい公的通知のあり方が求められるすべての場面で、BetterMeは活用可能だと考えています。具体的には次のような分野です。

● がん検診・特定健診 受診勧奨
● 納税催促 
● マイナンバーカード交付申請勧奨
● 図書館延滞資料催促
● 予防接種受診勧奨
● 新型コロナワクチン接種情報発信
● 緊急防災情報連絡

これに留まらず、BetterMeの活用を通じた市民との建設的なコミュニケーションの構築を、全国の行政関係者の皆様と開拓していきたいと考えています。

開発・提供者について

BetterMeを開発・提供する弊社ケイスリーは、創業以来、ソーシャル・インパクト・ボンドを始め、行政サービスの「成果」に着目し、それを高めるための新たな手法の開発・導入に取り組んできました。BetterMeは、その最先端の取組みとして、人間の行動特性に関する知見と、高度なデータ分析に関する知見を新たに加え、開発したものです。

BetterMeを通じて、あらゆる行政主体が、規模や人材、資金の状況に関わらず、等しく「成果」を追及できるようになること、そして、その先の市民のより良い生活が実現されることを願っています。

なお、BetterMeは、日本における法人向けSMS事業のパイオニアである株式会社アクリートとの協働で運用を行います。メッセージの送信は、高度なセキュリティを維持した行政専用のネットワークLGWAN(Local Government Wide Area Network)に対応しています。


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