成田悠輔さんから気仙沼の高校生へ #3「人に理解されないことをやらないと意味がない」かもね
気仙沼の探究学習塾ナミカゼに、フリーアナウンサー徳永有美さんが来てくれました。そして今回、高校生のために成田悠輔さんを呼んでくれました。そのスペシャル対談をお送りします。(前回記事はこちら)
ニュースより普遍性があるバラエティ
高校生きら:突然なんですけど、この前、クセがすごい某お笑い番組に出演されてましたよね。私あの番組がすごく好きなんですけど、研究のことを言ったりするコメンテーターの番組じゃないのに、なぜ突然出演することになったのか気になっていて。今日聞きたいと思っていました。
成田悠輔さん(以下 成田):理由はハッキリあるんですよ。一つは、単純にニュースとか報道番組よりバラエティの方が出てて楽しいっていうのはありますよね。
ニュースとか報道番組って「今日何が起きました」の集積になっちゃうじゃないですか。だからニュース番組を一年後に見たいと思う人はいないんですよ。そういう意味で、すごく刹那的でこの場限りのものだと思うんですよね。
だけど、バラエティで笑えるとか、バラエティ寄りの情報番組の小ネタ情報っていうのは、もう少し息が長くて普遍性のある情報だと思ってるんですよね。そういう意味でおもしろさがある。
成田:もう一つは、ちょっと社会派な理由なんですが、学者とか研究者とかが報道とか討論番組に出て話すというのは簡単なんですよね。
簡単だから何の新しさもないし、ほとんど付加価値も生んでないんじゃないかという気もしているんですよね。
専門家や学問の世界と普通にテレビを見ているマスの人たちが、水と油でコミュニケーションのしようがないっていうのが問題だと思うんですよ。その問題に取り組むためには、専門家枠でコメンテーターをやっていてもあまり問題解決になっていないと思っていて。
「小難しいことをやっているよく分からない、気持ちの悪い人たち」じゃなく、もう少し親しみみたいなものをつくれるかどうかはチャレンジしがいがあると思って、実験しているって感じですかね。
徳永有美さん(以下 徳永):成田さんの新しい著書もすごい若い子たちが手にとってるという話ですが、きっと成田さんがいろんな番組に出て活躍されてるからなんでしょうね。
成田:そうだとありがたいんですが、どうなんでしょう。意外にあの手の小難しい系の本としては、読者の世代も男女比もまばらだと聞きましたね。
高校生きら:こんな深い答えが聞けると思っていなかったので、おもしろかったです。ありがとうございました。
流行りに乗らず地味で目立たないことをやる
高校生しゅんすけ:成田さんのお話の中で、いろんな人からいろんな話を聞いてそれが地層のように積もって自分の新しい考えが生まれるという話があって、その通りだと思ったんですけど、「地層をつくる」ために手っ取り早い方法ってありますか?人より早く地層をつくる方法があれば聞きたいです。
それと、メガネがなぜその形になっているのか、どこで購入したのかを聞きたいです。
徳永:まずは地層を手っ取り早くつくる方法ですかね(笑)
成田:うーん、それが分かれば誰も苦労しないですよね。
それぞれの時代や時期ごとに流行りがあると思うんですよ。それに乗っかってそれを目指さないというのがすごい大事なのかなと思います。
まだつくられていないような情報をつくり出さないといけないので、今人が注目しているものとか、目立っているものとか、ちやほやされているものの方向に目がいっちゃうと、その時点で自分がつくり出すことができる付加価値を水で薄めちゃってるようなことになると思うんですよね。
成田:なので、できるだけ人が目を向けてないもの、日陰で地味なもの、目立たないものをやることが得策なんじゃないかな。
それで、誰の目線も光も一生浴びずに終了する確率が99%なんですけど、それはそれでいいんじゃないですかね。あまり人が見たことのない光景を見れたと言うことで。
だから一言で言うと、地味なことをやる、目立たないことをやるっていうことが秘訣かなと思います。
人に理解されないことをやらないと意味がない
徳永:ある意味「成田さんの言葉」も新しい時流やブームみたいなところがあって、今若い人たちがそれを聞いて刺激を受けるっていうのも彼らの地層になると思うんですけど、それ以外のところに大事さがあるってことですか?
成田:まぁ、ちょろっと目を向ける程度ならいいと思うんですけど、今流行ってるものをマネしようというのは絶対にやめた方がいいってことですかね。ひろゆきさんの二番煎じみたいなものをやろうとしても悲惨なものしか出てこなさそうじゃないですか。
人から見たときに理解されないことをやらないとあまり意味がないと思うんですよ。
「こういうことをやってます」と説明したときに「あぁそれね」って簡単に納得されたり、簡単にカテゴリー化されるようなことをやっている場合は、もう人が理解しちゃっているものに乗っかってるってことなんですよね。
下手をするとただの意味不明な逆張りの人になっちゃうんですけど、人に説明したときに「えっ?」って言われて人がフリーズしちゃうようなことをやってたら結構いいってことなんじゃないですかね。
徳永:このナミカゼという塾では探究学習をどんどん深めていくために、自分が探究しているテーマをどうにかみんなに説明したり、うまく発信することも大事になると思うんですよね。
それが「理解されないことが非常に重要」となると、どう考えたらいいですか?すごく引きちぎられる思いなんですけど。
成田:説明する努力は続けた方がいいと思うんですよ。ただ、説明して理解してもらえるまでに、時間を要しないものっていうのは価値がないと思うんですよね。
すでに存在しているカテゴリーの枠から逃れているものっていうのは、少なくとも最初はごく一部の人にしか共感されないし、説明したときに相手が消化するのに時間がかかったり何ステップかかかるのが普通だと思うんですよね。
とてつもなく上手くいった企業の初期とかも、人から理解されていないことって多くって。Googleっていう企業がありますけど、最初の資金調達のステージで投資家候補100人くらいにことごとく断られてたらしくて。
Googleみたいに後から見るとすごく分かりやすいように見えるものでも、初期では何をやろうとしてるのか、何をやりたいのかよく分からないって言われることが普通なんだと思うんですよね。
「よく分からないことを突き詰めているだけでいい」って開き直っちゃうとまずいんですけど、説明しようとする努力をする中で、結果として人に理解されないステージが最初のうちにあるということは、むしろいいことだと思った方がいいんじゃないかな。
そういう意味でいうと、引きちぎられないとあまり意味がないんじゃないですかね。
徳永:素晴らしいお話だと思いました。ありがとうございます。あと、メガネ!
このメガネは私物です
成田:このメガネ、特に深い理由はなくてですね。一年半くらい前に、かけていたメガネが折れたんですよ。やばいと思って、たまたま見つけたメガネ屋さんに駆け込んでメガネを物色してたんですよ。
そこで店員さんが話しかけてきたので、「クリエイティブになれるメガネが欲しい」ってお願いしてみたらその人がこれを出してきたんですよ。ちょっと引くに引けなくなってそのままこれをかけていると。
これだけは強調しておきたいのは、これが衣装、メディア向けの道具だと思っている人がいるらしいんですけど、それは全くの誤解だというのは説明しておきたいと思います。完全に私物です。
徳永:ありがとうございました。成田さん、フランスの朝、もうお部屋が明るくなってきましたね。
今日は貴重なお話をありがとうございました。「勉強ってなんの意味があるんだ」という彼の質問を聞きながら、涙が出そうになったんですが、本当に子どもたちにとって切実で尊い疑問なんだと思いました。それに答えてくださってありがとうございました。
成田:いやこちらこそ、ありがとうございます。
徳永:また高校生の皆さんに成田さんが直接お会いできるときが来るかもしれないし、来ないかもしれないですけれども。成田さん、本当に今日はありがとうございました!
成田:ありがとうございました。
編集・文:気仙沼学びの産官学コンソーシアム 加藤 拓馬
成田悠輔さん、そして徳永有美さん本当にありがとうございました。
ふるさと納税をよろしくお願いします
宮城県気仙沼市の高校生や子どもたちの学びを支えていくため、2022年「気仙沼学びの産官学コンソーシアム」が発足しました。この取組がまちに定着し、モデルとして全国に広がっていくため、クラウドファンディング型のふるさと納税を通してご寄付を募集しています。地場の魅力的な返礼品も選んでいただけます。ご支援を通して、一緒にまちづくりに参加しませんか?よろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?