"World Journey”00
とにかく疲れていた。日常のなんの変わりもないサイクルに。
そして仕事に。
数字しか見ない幹部陣。減っていく人員。増える仕事量。要求される数字を達成しても更に売上目標を高くされ、今以上に仕事量を増やされる日常。
マラソンに例えると、ゴールが見えてきたらと思ったら、ゴールがどんどん遠くに移動されて延々と走る続けさせられる感じだ。
気がつけば始発帰りは当たり前。休日出勤は当たり前になっていた。
それでも売上が全然足らないのだそうな。
休日出勤は幹部陣にとっては気に入らないらしく、休日出勤しないように仕事をやり繰りしろと言ってくる。
無茶いうな。営業の連中が休日働かなければ納期に間に合わない案件を無責任に丸投げしてくるから現場がこうなっているんだ!
そんなことを営業や幹部に訴えても「現場のやり繰りで何とかしろ」「プロだろ?何とかしろ」と精神論・根性論でゴリ押ししてくるだけの連中を相手にするのもいい加減疲れてきた。
結局は面倒事は末端の社員に押し付けて、利益と功績だけが欲しい連中なのだろう。
自分が所属している印刷の環境というのは、正直いって体に悪い。
まずインク。それと機械の運用に必要な油、有機溶剤各種。印刷の品質保護に使うパウダー(片栗粉みたいな感じ)。
ざっとこれだけでも室内には様々な薬品の匂いや目に見えない細かいパウダーが充満しており、そんな部屋に缶詰になって印刷機械を動かし続けるのである。そりゃもう朝までずっと、ということも普通だ。
そんな休日出勤も含めた長時間労働とこの印刷環境に関わってきて『こりゃいつかどこかで体を壊すな』とも感じていた。
バブルの栄華を生きてきた親は最早相談相手としては不適格。
我慢して会社にしがみついてれば、いつか会社からいい待遇と保護を貰える。と未だに信じ込んでいる。転職、退職なんてのは狂気の沙汰なのだそうだ。
親よ、今の企業にそんな余力はありません。社員を定額制使い放題の労働力としか認識してないんですから。
そんな逃げ場を塞ぐ思考が、鬱病や自殺が横行する社会の一因なんじゃないのかね?そこまでストイックに働き詰めにならないと成り立たない経済社会を「正常だ!」とは言い切れるのかね?
他国の人も言ってたよ。「日本のような豊かな国はなりたいが、日本のような自殺の多い国にはなりたくない」ってね。
とにかく、今の会社は企業規模を維持するので手一杯。企業規模を維持する為なら社員をどれだけ使い潰しても構わないというのが実情だ。
そんな社会に飛び込んでもう十数年、あーもうすぐ二十年に入るか。よくぞまぁ転職もせずに働いたものだと我ながら思う。
この先、何をしようか?と考えると「もうサラリーマンはいいかな」という感情が大きく存在している。
今まで企業に自分というものを消耗されすぎた。というのが感覚としてある。
この先、老い朽ちるまでこれ続けるの?と思うと正直ゲンナリだ。
お金が乏しくて老後に不安を持つのはわかる。だが、自分の場合は「このままこの仕事を老いるまで続けていく」ということに不安を持った。
「好きな事ややりたい事は老後に楽しみなさい」
よくこう言われた事があったが、こんなことを言ってくる人は老後になったらこう言い出すだろう。
「もう歳なんだからやめなさい」とね。
そんな自分も今まで仕事の合間を縫って日本を旅してきた。
いろんな人に会ったし助けられてもきた。
そこで学んだことは「好きな事、やりたい事があったら、体の自由がきく時にやっておけ」ということだ。
年齢的にも人生のひとつの区切りとするには丁度いい。
2015年12月初頭。会社に辞表を出した。
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